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ぽんこつ可愛いアイドルは、妹として愛されたい  作者: 日々一陽
第二章 絶対結婚しような!

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23/25

23話 とある開演前の風景

「今日は早いですね、けいたさん」


 ライブハウスに入った拓海は背広姿のけいたを見つけた。いつもは開演直前に現れるのだが、今日は開場と同時に入ったらしい。


「まあ僕は後ろの方で沸くだけだから並んでも意味ないけどね」


 いつもヲタク仲間と楽しそうに沸いているけいたさん。見た目はおとなしそうな印象だけど喋るととっても面白いし、ヲタ歴も長いから色んなことを知っている。


「今日の重大発表って何だと思いますか?」

「たっくんは何だと思う?」

「えっと……」


 質問に質問で返された拓海は少し考える。


「ワンマンライブの開催か、誰かの卒業か、あるいは新メンバーの発表、ですかね」

「定期公演でメンバーが身内の卒業を発表するってあり得ないんじゃないかな? 僕はワンマンライブの発表に一票を投じるよ。新メンバーの発表もあり得なくはないと思うけど、僕が運営サイドだったら「新メンバーお披露目」ってはっきり言うな。その方が人が来るじゃない?」


 けいたの推理を「なるほどなそうかもな」と思いつつ、でもほかの選択肢はないのかな? と思案する拓海。そんな拓海の思考を見透かしたかのようにけいたはちょっと大きな声で言った。


「まあ1時間後には答えが出てる訳だし楽しみに待とうよ。ライブの最中に発表するんだ。悪い話じゃないさ」

「そうですね」

「ところでこの前連れてきていたおふたりさん、今日は来ないの?」

「ああ、女性の方は来るって言ってました。用事を済ませて来るとか。男の人の方はバベルに行くそうです」

「心斎橋バベル? 今日は何やってるの?」

「ぱっとらぶが目当てだそうです。この前の対バンで気に入ったみたいで。本人は「俺がぱるるちゃんに気に入られたんだ」とか言ってましたけど、見事に釣られてますね」


 拓海の話を聞くやけいたは笑い始める。


「ぱるるちゃんか! ぱっとらのちょっと大人びた感じのメンカラー紫の子だよね」

「そうですそうです。でもあそこの最年少です」

「彼はこの前、冬華(とうか)様に挨拶してたのになあ」

「そうですよね」


 手に持ったシュガーフリーのエナジードリンクをひと口飲むと、けいたは何かを思い出したように。


「この前見たけど、ぱるるちゃんってファンサが凄いよね。冬華様はあのキャラだからファンサがファンサに見えなかったりするしなあ」

「女王様キャラですからね」

「まあ、だから刺さる人には刺さるし、その界隈では大人気だけどね…… おっとお友達が来たみたいだぞ」


 拓海はけいたの視線を追う。夏らしい白いワンピに紺のキュロット、どことなく場違いなほどお洒落ないで立ちの柳川美妃が周囲を見回していた。彼女は拓海に気が付くと二、三歩近づいて立ち止まった。


「ほら行ってあげなよ。僕に気を使ってるみたいだ」


 小さく会釈をしてその場を離れた拓海は、しかし美妃と二言三言言葉を交わすと、またけいたの元へ戻ってきた。


「同じ大学のみきさんです。こちらがさくらさん推しのけいたさん」


 突然あいさつに連れてこられて驚いた様子のけいたに美妃は丁寧に頭を下げる。


「はじめまして。みきと呼んでください。けいたさんのお話は小倉くんから色々と伺ってます」

「え? あ、はじめまして。けいたです。ってか、たっくんひどいなあ。僕のいないところで悪口なんて」

「悪口なんて言ってませんよ。僕を無理矢理アイドル沼に引きずり込んだ張本人って言っただけです」


 けいたは小さく嘆息すると美妃の方を見た。


「ともかく、こんなおっさんだけど宜しくね。定期公演はカモミのファンばかりが来てるから盛り上がるよ。一緒に楽しもうね」


 けいたはそう言うと軽く手を挙げて離れて行く。


「この前も思ったけど、ヲタクの人って案外普通の人が多いわね」


 けいたの後姿を追いながら美妃が(つぶや)いた。


「ヲタクにどんなイメージ持ってたのさ? でも普通じゃない人もいるよ。まあカモミの現場は平和だし、常識人ばかりだけどね」

「平和じゃないところってあるの?」

「あるらしいよ、知らんけど。あ、始まる!」


 照明が落ちるとBGMが大きくなってくる。

 拓海はカバンからペンライトを取り出した。


「はい」

「いいの?」

「今日は2本持ってきてるから」


 白色を点灯させた一本を美妃に手渡すと、拓海はもう一本を自分で持った。


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