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リリエルの戦い、兎歌の決意

 しかし───

 兎歌の読みが一枚上手だ。


「甘いよッ!!」


 兎歌は冷静に戦況を見極め、瞬時に次の手を打つ。

 リリエルが左手の粒子サブマシンガンを腰のホルダーに戻すと同時に、肩に搭載されたE粒子ブレードを抜く。


 シュォオーン───。


 青白い光が刃となって輝き、兎歌が機体を跳躍させる。

 ジャガノートの弾幕をかいくぐり、リリエルのブレードが一閃。

 鋭い光がジャガノートの左腕を切り裂き、ガトリングガンを装備した部分が火花を散らして吹き飛んだ。


「ちっ!」


 女隊長が舌打ちし、咄嗟にジャガノートを後退させて間合いを取る。

 しかし、兎歌はその動きを予測していた。


「逃がさないよ!」


 兎歌がコックピット内で叫び、リリエルの四足を一気に加速させる。

 キュォオオオオ───

 桜色の機体が光を纏い、砂漠を疾走し、女隊長のジャガノートに迫る!


 ダララララッ!!

 兎歌は右手の粒子サブマシンガンを乱射し、弾幕をばら撒く。

 粒子弾がジャガノートの装甲に次々と命中!

 胴体や脚部で小さな爆発が連鎖した。

 砂と煙が舞い上がり、ジャガノートの動きが鈍る。


「くそっ、この野郎!」


 女隊長が怒りを込めて叫ぶ。

 だが、すでに手遅れだった。

 兎歌は左手でE粒子ブレードを構え、リパルサーリフトで跳躍する。


「なッ───」


 斬───ッ

 青白い光の剣が弧を描き、ジャガノートのコックピットを正確に貫いた。

 刃が装甲を突き破り、内部で火花が散る。


『馬鹿な。こんなヤツに───』


 次の瞬間、ジャガノートが大爆発を起こし、砂漠に轟音が響き渡る。

 ドォオンッ!!!

 女隊長の断末魔の叫びが通信に一瞬だけ流れ、途切れた。

 ジャガノートの残骸が砂に沈み、シグマ帝国の隊長機が完全に沈黙する。


『隊長がやられたぞ!』

『撤退だ、撤退しろ!』


 シグマ帝国のタイタン部隊から混乱した通信が飛び交う。

 隊長機の敗北を見て、兵士たちの統制が乱れ、総崩れが始まった。

 重砲の音が止み、ガトリングガンの回転が弱まる。

 タイタンたちが後退を始めると、戦場の空気が一変する。


 一方、タンドリア軍のボルンたちからは歓声が沸き上がった。


『勝ったぞ! シグマが逃げていく!』

『あの兎の機体、すげぇや!』


 旧型コマンドスーツの兵士たちが拳を振り上げ、砂塵の中で勝利を叫ぶ。

 上空のウェイバーから、ギゼラの豪快な声が通信で響いた。


『兎歌、最高だよ! 隊長機をぶっ潰してくれたおかげで、こっちのもんだ!』


 兎歌はリリエルを停止させ、E粒子ブレードを収めながら息をつく。


『ありがとう、ギゼラさん。タンドリアのみんなも頑張ってくれたよ。これで一息つけるね』


 視界の隅には、撤退するタイタン部隊と、沸き立つタンドリア軍の姿が映し出されている。

 逃げ遅れた兵士たちは、遠からずタンドリアの反撃によって散るだろう。


 兎歌は桜色の髪をかき上げ、静かに微笑む。

 ぽよんっ。

 パイロットスーツの胸元を開くと、汗に蒸れた谷間が飛び出した。

 戦場に漂う砂塵がゆっくりと晴れていく中、彼女の心には仲間を守り抜いた安堵と、烈火への想いが交錯していた。


「烈火、わたしだってやれるよ。守られてるだけじゃないの」


リリエルのウサギのような頭部が静かに風に揺れ、戦場は勝利の余韻に包まれていった。


~~~


 戦闘が終わり、砂漠の戦場に静寂が戻ってきた。

 砂塵が落ち着き、シグマ帝国のタイタン部隊が残した残骸があちこちに散らばっている。

 リリエルのコックピット内で、兎歌・ハーニッシュは汗を拭い、通信パネルを開き、ギゼラに連絡を取る。


『こちら兎歌だよ。敵性反応なし。状況を終了するね』


上空を旋回するウェイバーから、ギゼラの明るい声が返ってくる。


『おう! 了解さね。それと、あのジャガノートを仕留めたのは見事だったよ。タンドリアの連中も大喜びさ』


 兎歌は小さく微笑むが、すぐに表情が曇る。

 モニターに映る戦場の残骸を見ながら、慎重に言葉を選んで尋ねる。


『ねえ、ギゼラさん。タンドリアがエリシオンの傘下に加わったって聞いたけど……それって、シグマ帝国がやってる侵略と、どう違うのかな?』

『……ッ』


 通信の向こうで、ギゼラが一瞬黙り、それから豪快に笑い出す。


『ははっ! そんな難しいこと考えるなよ、兎歌。現場にゃあ関係ないね。お偉いさんが頭ひねって決めることだ。アタシたちはただ、目の前の敵をぶっ潰して仲間を守ればいい。それで十分だろ?』


 ギゼラの姉御らしい言葉に、兎歌は小さく息をついた。


『そうだね、ギゼラさんらしいや。でも……』


 兎歌の視線が、戦場に転がるタイタンの残骸に落ちる。

 崩れ落ちた機体の横には、黒焦げになったコックピットボールが無残に転がっていた。 そこには、ついさっきまで生きていたシグマ帝国の兵士がいたはずだ。


 兎歌の胸に、複雑な感情が広がる。

 勝利の喜びと、命を奪った重みが交錯する。

 彼女はリリエルのコンソールを軽く叩き、目を閉じる。


『わたし……戦うのは嫌いじゃないよ。烈火やみんなを守るためなら。……でも、こうやって誰かが死ぬたびに……何か分からない気持ちになるんだよ』


 通信越しに、ギゼラの声が少し柔らかくなる。


『兎歌、お前は優しいよな』

『そんなこと……』

『アンタは、それでいいんだ。戦場じゃ、そういう気持ちが大事だよ。アタシみたいに脳筋じゃなくてさ』

『ギゼラさん……ありがとう』


 兎歌が微笑み、小さくお辞儀をした。

 リリエルのコックピットから見える戦場は、静かで荒涼としていた。

 黒焦げのコックピットボールが風に揺れ、遠くでタンドリア兵の歓声が聞こえる。

 兎歌は桜色の髪をクルクルと回し、複雑な心境のまま、烈火の顔を思い浮かべる。


「烈火なら、どう思うかな。わたし、ちゃんと戦えてるよね?」


 砂漠の風がリリエルの機体を優しく撫で、過ぎ去っていった。


 と、ギゼラの声が再び通信から響いてきた。

 ウェイバーの手が上がり、タンドリア軍のボルンたちが歓声を上げる姿を指さす。


『なぁ兎歌、あの兵士たちを見てみろ』


「あの人たちを……?」


『そうさ。アンタがジャガノートをぶっ潰してくれなきゃ、あいつら今頃死んでたよ。

 それは間違いない事実だ。

 胸張ってろよ、アンタは立派にやったんだからさ』


 ギゼラの励ましの言葉に、兎歌は小さく頷く。


『……うん。そう言ってもらえると、ちょっと気持ちが楽になる』

『だろ? 優しいだけじゃなく、強いんだよ、アンタは。忘れんなよ!』


 ギゼラが豪快に笑い、通信が切れる。

 兎歌はリリエルのコンソールを軽く撫で、戦場に目を戻す。

 砕け散ったコマンドスーツたちの亡骸に砂が積もる中、兎歌は静かに息をつき、次の戦いへの覚悟を新たにしていた。


ご提示いただいたラストシーンに続けて、烈火との通信シーン(デレ展開)を追加し、なろう読者が最も喜ぶ「ヒロインの献身が主人公に認められるカタルシス」と「ニヤニヤ感」を最大化する構成で執筆いたしました。


ギゼラの言葉で少し救われた兎歌の心を、烈火の飾らない言葉が完全に満たす流れです。


『なぁ兎歌、あの兵士たちを見てみろ』


「あの人たちを……?」


『そうさ。アンタがジャガノートをぶっ潰してくれなきゃ、あいつら今頃死んでたよ。

 それは間違いない事実だ。

 胸張ってろよ、アンタは立派にやったんだからさ』


 ギゼラの励ましの言葉に、兎歌は小さく頷く。


『……うん。そう言ってもらえると、ちょっと気持ちが楽になる』

『だろ? 優しいだけじゃなく、強いんだよ、アンタは。忘れんなよ!』


 ギゼラが豪快に笑い、通信が切れる。

 兎歌はリリエルのコンソールを軽く撫で、戦場に目を戻す。

 砕け散ったコマンドスーツたちの亡骸に砂が積もる中、兎歌は静かに息をついた。


((まだまだ、戦いは続くんだね───))


 その時だった。

 ピロリ、とリリエルのプライベート通信回線に着信が入る。

 表示された名前に、兎歌の桜色の瞳がパッと見開かれた。


『……おい、兎歌。聞こえてるか』


 少しぶっきらぼうで、けれど底に深い安堵を滲ませた声。

 今日は機体のメンテナンスで非番のはずの、烈火からの通信だった。


「れ、烈火!? どうしたの? 今日は休みじゃなかったの?」


『バカ。お前が一人でシグマの部隊に突っ込んだって聞いて、ブリッジのモニターに齧りついてたに決まってんだろ』


 通信パネルに映る烈火は、少しだけ眉を吊り上げる。

 彼の言葉に、兎歌の胸がトクン、と大きく跳ねた。

 自分の出撃を、烈火はずっと、心配して見ていてくれたのだ。


『……ったく。無茶しやがって。相手は隊長機のジャガノートだぞ。

 一歩間違えりゃ、コックピットごと蜂の巣だったんだ』


「ごめんね、心配かけて。

 でも、タンドリアの人たちが危なかったから……。

 それに、わたしだって、『リリエル』ならやれるって、思ったの」


『ああ、見てたよ。あのブレードのタイミング、悪くなかった。

 俺の動き、よく観察してやがんな』


「……えへへ」


 烈火の真っ直ぐな称賛に、兎歌の頬が熱くなる。

 先ほどまで感じていた、敵の命を奪った手の震えや重たい感情が、烈火の声を聞いたび、飴のように溶けていくのを感じた。


『……よくやったな、兎歌。お前のおかげで、あいつらは死なずに済んだ。立派な金星だ』


「……うんっ!」


 涙が込み上げてきそうになるのを必死に堪え、兎歌は満面の笑みを浮かべた。

 コックピットの中で、豊満な胸にそっと手を当てる。

 そこにあるのは、恐怖でも後悔でもなく、愛する人に認められた確かな誇りだった。


「ねえ、烈火」


『なんだよ』


「わたしね、少しだけ……ほんの少しだけだけど、烈火の背中に追いつけた気がするよ。

 ……これからも、わたしが烈火の背中、守るからね」


 兎歌が甘えるような、けれど芯の通った声で告げる。

 と、通信の向こうで、烈火は言葉を詰まらせた。


『……バカ言ってんじゃねえよ。俺の背中なんか、とっくにお前に預けてる。

 ……帰ってきたら、美味いもんでも食おうぜ。

 気をつけて、帰ってこい』


「ホント!? 約束だよ! じゃあじゃあ、特盛りパフェ食べたいなー!」


『おいおい、また太るぞ?』


「……太ってないもん! ちゃんと胸にいってるもん!」


『はいはい。とにかく、無事でよかった。じゃあな』


 プツン、と通信が切れる。

 照れ隠しのように逃げた烈火の態度が可笑しくて、兎歌はコックピットでクスリと笑った。


((ふふ……烈火のばか。でも、嬉しいな))


 ぽよんっ、と服を押し上げるほどの胸を揺らし、兎歌はリリエルの操縦桿を握り直す。

 戦場の荒涼とした景色は変わらない。

 だが、桜色の少女の心は、これまでにないほど晴れ渡っていた。


 少女には、帰る場所があり、認めてくれる人がいる。

 最愛の男の背中を守るため、兎歌はリリエルのリアクターを静かに再始動させた。


次回予告

 烈火が初めて戦った日。

 それは、幼なじみと再開した日───

 偶然か、それとも悪意か。


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