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ギゼラ・シュトルム VS ガロ・ルージャン!

 その瞬間。


 頭上の空が、不自然に明るく輝いた。


「───ッ!?」


 空を引き裂くような轟音と共に、雨あられと降り注ぐ無数の青白い光弾。

 広範囲を制圧する、拡散モードのE粒子キャノンだ!


『ハッハー! 随分と派手な真似をしてくれるじゃか!』


 通信回線に、荒々しくも陽気な女の声が響き渡る。

 上空の雲を突き破り、巨大な戦闘機が猛烈なスピードで急降下してきた。


 ギゼラ・シュトルムの愛機、『ウェイバー・ザ・スカイホエール』だ。

 コックピットの中で、ギゼラは凶暴な肉食獣のように牙を剥いて笑っていた。


『アタシの可愛い味方を、これ以上減らされてたまるかよ!』


 シームルグは即座に両手のマシンガンを天へと向け、火を噴かせた。

 激しい粒子弾の嵐を放ちながら、鳥のような脚部の推進器を全開にして急上昇する。


 だが、ウェイバーも負けてはいない。


「甘いねぇ!」


 機体表面に展開された分厚いE粒子コートが、シームルグのマシンガンの銃弾をことごとく弾き飛ばす。

 ギゼラは操縦桿を限界まで倒し、機体を鋭く旋回させた。


『逃がさねえっての!』


 ギゼラが叫ぶのと同時に、シームルグが恐るべき機動を見せた。

 空中で鋭く身を翻す。

 そのまま、白い炎を噴き出している脚部粒子開放機を、ウェイバーの機首へ向けて振り下ろしてきたのだ。


 まるで猛禽が獲物を追い詰めるような、鋭い動き!

 致命的な破壊力を秘めた蹴り。


「当たるもんかい!!」


 ウェイバーはスラスターを強引に吹かし、その一撃をギリギリのところで躱した。

 シームルグの蹴りが空を切り、大気が悲鳴を上げる。


((チッ……! ちょこまかと動く戦闘機だぜ!))


 ガロが舌打ちをした直後。

 すれ違った巨大な戦闘機が、空中で複雑な金属音を響かせた。

 装甲がスライドし、フレームが折りたたまれていく。

 戦闘機形態から、人型形態への変形だ!


 ギゼラは次世代型アニムスキャナーを一気に接続し、機体との同調を深める。

 人型となったウェイバーは、腰部にマウントされたE粒子ブレードを素早く引き抜いた。


「叩き斬ってやるよ!」


 ギゼラの雄叫びと共に、青白い光の刃が振り下ろされる。

 対するガロも、シームルグの脚部粒子開放機を再び構え、正面から迎え撃つ。


 ガァァァァァンッ!!


 E粒子ブレードの刃と、粒子開放機の爆発的なエネルギーが、空中で真正面から激突!


 プラズマリアクター搭載機同士の、圧倒的な出力のぶつかり合い。

 青白い光と白い炎が、天空で激しい火花を散らしながら、互いの装甲を焦がしていく。


「ぐぅ……!」

「この……!」


 空中で激突した二機のプラズマリアクター搭載機。

 青白いE粒子ブレードと、脚部から噴き出す白い炎が、凄まじい反発力を生み出す。


 爆発的な衝撃波が広がり、二機は互いに大きく距離を取った。


『コイツもプラズマリアクター搭載機かい!?』

『ハハハハハッ! いい一撃だ! だが、ノロいぜ!』


 ガロの狂気じみた笑い声が、通信回線に響く。

 シームルグが、背中の翼を大きく広げた。

 人鳥型のフレーム。その両翼の縁には、鋭利なブレードが備わっている。


 ガロは脚部粒子開放機をスラスターとして全開にした。

 白い炎を噴き出し、シームルグは物理法則を無視したような変則的な軌道で、空中をジグザグに駆け上がる。

 そのまま、翼のブレードを突き立ててウェイバーへと突進してきた!


((迅いっ! なんてデタラメな機動だ!))


 ギゼラは金色の瞳を見開き、咄嗟に左腕の分厚いシールドを構えた。


 ガキィィィィンッ!


 凄まじい金属音が、空の彼方まで響き渡る。

 シームルグの翼がシールドを削り、激しい火花が散った。

 軽量級の機体とは思えない、恐るべき突進力だ。


「ナメんじゃねえよッ!」


 ギゼラは歯を食いしばり、重量級であるウェイバーの質量で強引に押し返す。

 同時に、シールドに内蔵されたバルカン砲が火を噴いた!


 至近距離からの徹甲弾の嵐!

 だが、ガロはすでに次の手を打っていた。

 シールドを蹴り飛ばすようにして、後方へ宙返りするシームルグ。

 空中で逆さまになったまま、両手のE粒子マシンガンを乱射してきたのだ。


『だーはは! これでも食らいな!!』


 青白い光弾が、雨のようにウェイバーへと降り注ぐ。


『チィッ! ちょこまかと!』


 ギゼラは舌打ちをしつつ、機体を覆うE粒子コートに出力を回した。

 マシンガンの光弾が装甲に直撃する前に、見えない力場がそれらを弾き飛ばしていく。


 圧倒的な防御力。

 これこそが、大型プラズマリアクターを積んだウェイバーの真骨頂なのだ。


「アタシの装甲は、そんな豆鉄砲じゃ抜けないね!」


 ニヤリと笑うギゼラ。

 右手に構えた巨大なE粒子キャノンの銃口を、シームルグへ向けた。

 高圧縮の粒子弾が、まばゆい光を収束させていく。


『吹き飛べぇぇッ!』


 ズドォォォォォォッ!!


 空を真っ二つに割るような、極太の閃光。

 ウェイバーから放たれた大火力のキャノン砲が、一直線にシームルグを呑み込もうとする。


((……当たったか!?))


 ギゼラが目を凝らした、次の瞬間。


『甘ぇよ!』


 閃光のすぐ横から、シームルグが飛び出してきた。

 ガロは直撃の寸前、両脚の粒子開放機を横方向へ爆発させ、強引に機体の軌道を捻じ曲げていたのだ。


「マジかよ……! あの火力を見て、一歩も引かねえのか!」


 ギゼラは思わず唸り声を上げた。

 相手は軽量級。 一発でも掠れば、ひとたまりもないはずだ。

 だが、ガロという男には、恐怖という感情が欠落しているらしい。


 シームルグは空中で翼を翻し、再び猛禽類のように降下してくる。

 両手のマシンガンが、ウェイバーの死角を狙って火を噴いた。


『ハッハー! 最高だぜ、コイツは! もっと楽しませてくれよ!』

『上等だ! 丸焼きのローストチキンにしてやるよッ!』


 ギゼラもまた、好戦的な笑みを浮かべてスラスターを吹かす。

 ウェイバーは重量級の巨体をしなやかに躍動させ、E粒子ブレードを構えて正面から迎え撃つ。


 青白い光の刃と、雨のような光弾。

 そして、空を薙ぎ払う極太のキャノン砲。


 空の大怪獣と、狂気に満ちた猛禽。

 二つのプラズマリアクターが限界まで唸りを上げ、大空を舞台にした超絶的な空中戦は、完全に互角のまま激しさを増していった。


 ~~~


 ――空の大怪獣と猛禽が激突している頃。

 戦場の反対側では、レジスタンスの部隊が壊滅の危機に瀕していた。


「報告! 左舷装甲破損!」

「リアクター出力20%低下しています!」


 荒野を揺るがす轟音と共に、巨大なリクガメのような機動要塞『ザラタン』の分厚い甲羅が、大きく崩れ落ちた。

 装甲のひび割れから、黒煙と業火が噴き出す。


「ぐぅぅッ……! なんという火力だ!」


 ザラタンの指令室では、司令官が血を吐くような うめき声を上げる。

 ザラタンを蹂躙したのは、ノヴァ・ドミニオンが誇る拠点防衛用の機動要塞。

 蜘蛛のような八本の太い脚を持つ巨体、『アラクネ』だ!


 アラクネの八本の脚に備わった荷電粒子砲とレールガンが、容赦なく火を噴く。

 青白い閃光と、高初速の徹甲弾の嵐。


 直撃を受けたレジスタンスのタイタンが、次々と火柱を上げて消し飛んでいく。

 タイタンは重装甲を誇る機体。

 だが、要塞級の主砲に耐えられるほどの耐久力など、持ち合わせているはずもない。

 戦線を維持することすら不可能だった。


『退くな! 撃ち返せぇぇッ!』


 ドラッツェの号令。

 生き残ったタイタン部隊が、死に物狂いでガトリングガンと重砲を乱射する。

 実弾と砲弾の雨がアラクネへと殺到した。


 だが───

 アラクネの巨体の周囲に、ハニカム状の六角形の光が浮かび上がる。

 局地的に展開される絶対防御の盾、『粒子防壁』だ。

 全身を覆うわけではないが、その防護範囲内の防御力は、E粒子シールドすら遥かに凌駕する。


『なんだ!? 六角形の盾!?』

『無傷だと!?』

『バ、バカな……!!』


 タイタンの決死の反撃は、六角形の光の壁に呆気なく弾き返され、無力な火花を散らすだけだった。


「ククク……。愚かな。這いつくばるだけの虫けらが、巨象に挑むようなものだ」


 重装甲に守られた、安全な指令室。

 ふんぞり返るように椅子に深く腰掛け、ウリエン・ノヴァは優雅にワイングラスを傾けていた。

 モニターに映る一方的な虐殺劇を見下ろし、淡い青髪の青年は薄く笑う。


「さあ、残飯処理を急げ。目障りな残党どもを、一匹残らず踏み潰すのだ」


 ウリエンの命令を受け、アラクネの八本の脚が再び不気味な光を帯びた。

 絶体絶命。

 ドラッツェが死を覚悟し、目を閉じた、その瞬間だった。


 ドゴォォォォォンッ!!


 天から降り注いだ極太の青白い閃光が、アラクネの強固な粒子防壁に直撃した。

 凄まじい衝撃波が荒野を薙ぎ払い、蜘蛛の巨体が大きく横へと揺らぐ。


「なっ……なんだと!?」


 指令室のウリエンが、目を見開いてワイングラスを取り落とした。


 上空から迫るのは、独立した戦闘機のような兵装ユニット。

 E粒子ランチャーとレールガンを乱射しながら、アラクネの防壁の死角を縫うように飛び回っている。

 それは、遠隔操作されているダフネの『複合型バックパック』だ!


『――見つけたぞ。下劣な策士の匂いがする』


 通信回線に響く、氷のように冷徹な声。


 バックパックの砲撃に気を取られたアラクネの側面。

 土煙を切り裂き、紅白の装甲を持つ機体が猛然と突っ込んできた。


 元シグマ帝国の最強パイロット、ゲイル・タイガー!

 そしてその愛機、『ダフネ・ザ・フェニックス』!


 ゲイルは新開発のシンクロコアを通じ、コックピットから離れることなくバックパックを完璧に遠隔操作していた。

 二つの視点、二つの機動。

 完全に別方向からの同時攻撃に、アラクネの粒子防壁は対応しきれない。


「もらった」


 ダフネ本体が、アラクネの無防備な脚の一つへと肉薄する。

 両手のE粒子ハンドガンを連射して装甲の継ぎ目を破壊し、そのまま腕のE粒子ブレードを叩き込んだ。


 ───斬ッ!


 爆発的な白い炎が噴き出し、アラクネの太い脚が一本、粉砕!


「何ぃー!?」


 巨体がバランスを崩し、大地に深く沈み込む。

 ゲイルはダフネを滑らせて距離を取る。

 そして、燃え上がる蜘蛛の要塞を冷酷な瞳で睨みつけた。


((この狡猾な防壁の張り方……そして、一方的に蹂躙するだけの陣形。間違いない))


 直感が、ゲイルの脳裏に確信を叩きつける。

 あの要塞の奥深くに、ノヴァの王族がいる。


 かつてシグマ帝国の上層部を裏で操り、三本槍の頭上に容赦なく核ミサイルを放たせた張本人。

 ドレッドを殺し、ルシアを奪った、忌まわしき悪魔が。


「……万死に値するぞ、ノヴァの王族」


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