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灰空戦記【勇者の旗の下】  作者: アオン
ダ・ギヴ編
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21/22

【別の視点、新しい戦術】

ダ・ギヴでの兵站攻撃は成功しているが

ヴァルクラントも

ただやられているだけではなかった。


定時連絡を密にし

大規模な補給部隊には過剰な護衛部隊。


また、小規模に分散浸透させる補給部隊で

各個撃破される隊も有るが全てではない。


これらにより

前線への兵站を維持させる。


だがそれ故に

戦力が護衛部隊に裂かれ

じりじりとしか進めない前線。


前線では各部族

それぞれ得意なブービートラップに

小規模部隊にはそれ以上の戦力で

彼方此方の地下回廊の出入り口を使った

一撃離脱を繰り返し嫌がらせの様に

大戦果を求めず安全に確実戦力を削っていく。


安全と書いてるが

勿論、逆襲に遭ったり、

逆に囮を使った待ち伏せに遭う事さえ有る。


地下回廊の出入り口を発見され

突入され回廊内での戦闘。

前線魔導士による

火炎魔法で焼死を始め酸欠による

死傷者も多数あがっている。


トールス達は族長会議で

ダ・ギヴ総司令部を聖樹図書館周辺部とする

合意の元に移動していた。


総司令部の壕【会議室】


ヴォルフは顎の毛を触りながら

「兵站攻撃は継続しているが

最近の連中は

護衛部隊が過剰になってきている。


前線戦力自体には

負担になっているだろうが……


ソレによって襲撃の失敗。

若しくは手を出せないという

報告が散見される様になってきた……」


チラリと

軍帽の割れた鍔からトールスを見る。


「もっと奥を叩けないか?

トールスの飛空艦を使ってとか?」


「……やってもいいんじゃが〜

たった1隻じゃ〜の〜

戦域に対しては少なめじゃが

飛空艦隊戦力を考えると精々数回が限度じゃ

しかもイッグテールも確実に沈む」


シルフィが意気揚々に

「じゃあ!

私も乗り込んで船に欺瞞魔法かける!

そうすれば見つからない!」


トールスは目を丸くしてシルフィを見る

「出来るのか!?」


「私1人じゃ無理だけど

何人かでやれば多分できる!

でも……急に曲がったりとかすると

効果が切れると思う」


トールスは何やら思案しつつ

「……いや!

それでも1隻じゃキツいわい!」


航空偵察伝令を行う大鷲使いの代表者

鷹の獣人

カトーが手を上げる。


「試したい事がある。

大鷲から爆弾を落とせないか?」


トールスはまたも目を丸くする。

対外戦争の経験が魔王戦争だけで

戦略、戦術認識は未熟だが

逆に既存のモノに縛られない柔軟さが有る。


トールスは本当に面白そうな顔で

「……面白いの!じゃが魔導弾は重いじゃろ?

大鷲はどれぐらい持てるんじゃ?」


「無理をすれば200キロだが

移動を考えると100キロぐらいだな」


「……出来ん事はないの

……だがワシ等の分を合わせても

手持ちが少ないど」


ドワーフの代表者が机に乗り出し。

「だったら岩盤発破用を使えばいい。

坑道を掘る時の火薬だ。

たんまりあるぞ?それに魔導弾より軽いぞ。」


トールスはホウと唸ると

「試す価値はあるのよっしゃ1回やってみい」


タントは子供の様な目で

「手持ちのカードで新しい役を作るみたいで

なんか面白いっすね!」


トールスは珍しく豪快にじゃなく

クスリと笑い

「タント、おどれもなんか思い付いたら

言うてみぃ!言うのも聞くのもタダじゃ!」


ーーーー


ドワーフが岩盤発破用火薬を樽へ詰める。

重さは起爆装置も含め50キロ。

ソレを2個大鷲が掴み

補給用の馬車を模した標的に

通り過ぎざまに落とす。


結果は

地面に落ちた衝撃で樽が砕け

空中に舞った火薬によってある程度の範囲を

瞬間的に燃やす程度

しかも空気抵抗で命中率が悪い

標的から30メートル近く離れてた……


「大軍相手に威嚇には使えそうじゃの」


「地面で割れたのがいかんかったな

樽を頑丈にするか空中で爆発させるか……

導火線を調節すれば出来るな」


2回目は導火線調節で空中で爆発!

「威力は充分だが相変わらず命中率が……」


興味深く様子を見てたセルシオが

「高速飛空艦って前が尖ってるよな?」


全員が振り向く。

「だったら爆弾も同じ形にすれば、

真っ直ぐ飛ぶんじゃないか?風圧とかも……」


ドワーフ

「……確かに。」


木工職人が樽を改造して試作品製作。

ラグビーボールのような形になる。

「ついで前から落ちる様に

先端に重心を寄せといたこれで安定する筈だ」


節約の為火薬を砂に変えて試験。


先端を前に放物線を描き

前より真っ直ぐ進むものの

不規則にブレながら……着弾。


「おお!!いいど!

もう少し

精度上がれば実戦で試す価値あるど!」


飛んでいく爆弾を見ながら、

エルフが首をかしげる。


あーでもなこーでもないと言う一行に近付き。


「矢は羽根があるから

真っ直ぐ飛ぶんですよ。

アレも同じじゃないですか?」


全員沈黙。


ドワーフ「…………。」


セルシオ「…………。」


トールス

「なんでもっと早よ言わんかった。」


一同笑いながら矢を一本取り出し見せながら

「こんな感じで羽根を付けてみるんじゃ!」


「ちと手間掛かるがやってみるぞ!」


次の試験。


前回と同じ感じの放物線だが羽根の追加により

縦回転が加わり変なブレかたはせず

スーーーッと一直線……



馬車型標的5メートルに着弾。


皆が歓声を上げる。

「ええど!

このレベルなら実戦で試す価値有るど!」


喜ぶ一同だが

大鷲を御するのに自信の有るカトーは

直撃出来ないのが悔しくて

命中率の向上に頭を捻り続ける。


ーーーー

翌日

崖に掘られた大鷲の巣の中に運ばれる

先行量産された爆弾。


カトーを含め10名、大鷲10羽が爆装して

巣から飛び立つ。


カトーは3羽1組を3組を率いて

獣人が発見、追尾している補給隊を目指す。


カトーは振り向き

「おい!フラついてるぞ!隊形を乱すな!」


「わかっている!だがコイツも

こんな荷物を持って嫌がってるんだ!」


「それをどうにかするのが騎手の腕だろ!」

「わかったよ!」


「前方11時方向!いいか!

練習通りだ!それぞれ掛かれ!」


「了解!カトーは?」

「俺は試したい事がある!当てろよ!」

と言ってカトー騎は上昇していく。


ーーーー

補給隊


「こちら、

202補給隊定時報告、異常無し……っと

だいぶ落ち着いたよな?」


「まだ怖いけどな?いきなり首刈られるんだぜ?未だに目線感じるしよ〜」


「まあ、これだけの護衛部隊なら安心だ」


「ん、あれ獣人の偵察鳥じゃないか?」

「うわ!本当だ俺達の位置バレたな」


「まあ、しょうがない、

でも妙だな?何で編隊組んでるんだ?」


「てか、こっち来てません!?」


ーーーー

爆装大鷲編隊


「よーし、

爆撃コースに入るぞ!編隊崩すな」


「よーそろ、よーそろー」


「……てっ!」

両足で大鷲の胴体に合図する。

同時に大鷲は掴んでいた爆弾を離す。


実験通り、練習通りに爆弾はスゥーと進み

総計18発の爆弾が直撃は無いものの

補給隊を爆発で包んだ!!


歓声を上げながら

左右に分かれて旋回帰投コースにむかう。


ーーーー

爆発の黒煙の中1台の馬車が抜ける。


「ゲホゲホッ!

何だ彼奴等!?何をしたんだ!?」


「いかん!幌燃えてる!消せ消せ!」

「もういい幌剥いじまえ!!」


幌を留めている紐をナイフで切って

燃える幌を落とすと。


「助かった〜!」と横になる。


すると……

馬車のほぼ真上の高空から

大鷲が急降下して来る!?


ーーーー

少し前の高空

カトーは友軍の爆撃の成果を確認する。

補給隊全体を爆煙が包む。

「おおー!

成功だな!……さてと」


カトーは爆撃地点に目を凝らす……


爆煙の中から1台の馬車が抜ける!


カトーは手綱を操作して

「行くぞ!」と馬車目掛け急降下を開始する!


ほぼ直角に真っ直ぐに直進。

今まで出したことのない速度。

猛烈な風圧で頬の肉が波打つ。


どんどん大きく見える馬車。

恐怖で震えそうになるが目標を見据え続け……


両足で投下の合図!

その後手綱を引き上げ上昇に転換ずる!!

大鷲の身体が軋む。


身体を潰されるような重力の中、

カトーは「どうだ!?」と振り向く。


爆弾は勢いよく綺麗に先程までの進路を

真っ直ぐ進み……馬車に直撃!爆発する!


カトーは

「ブラァァーーボゥ!!」とつい叫ぶ!!


この日、大鷲による初の爆撃任務は大成功と

言って良いものだった。

更にカトーの行った急降下爆撃も

後の爆撃精度向上に大きく貢献する事となる。


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