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灰空戦記【勇者の旗の下】  作者: アオン
ダ・ギヴ編
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20/22

【戦い方】


重傷を負ったウニモグは

包帯だらけの身体を引きずりながら

作戦会議へ姿を見せる。


集まったのは

ヴォルフ、エルフ代表、ドワーフ代表、

其々の副官

そしてトールス、傍らに立つタント。


室内には重苦しい空気が漂っていた。


最初に口を開いたのはトールスだった

「まず言っとくど!

今日までの戦い方は一旦全部忘れろ!


ドワーフの築城は優秀じゃが

城壁、砦はもう捨てるど。」


ざわめく一同。


「敵は飛空艦で空から撃って来る。

飛空艦戦力を持っちょらんワシ等には

対抗策が無い。

じゃったら地下に潜ればええ。」


地図を広げると縦横を指でなぞりながら


「地下回廊を掘る。

兵站、工房、武器庫、病院、指揮所

……全部地下じゃ!」


ドワーフ代表は

「穴掘りはワシらの十八番だ!」

「ドワーフの能力だから出来る事じゃ」


「地上を捨てるのか!」

「森を明け渡す気か!」


と言う声があがるがトールスは首を振る。

「住む場所と戦う場所を一緒に考えるな。」


続いてエルフの方に向く

「エルフは極力前線に出るな

弓の精度、魔法の優秀さは知っとる。

じゃがの最も得意な

遮蔽結界、幻惑魔法、偽装陣地を主体とする。

攻撃より撹乱、擬装に集中して貰う。

……出来るじゃろ?」


「……ええ、

協力して色々な魔法を組み合わせれば

擬装陣地の構築、敵から見れば、どれが本物か分からなくさせるのは可能でしょう。」


「魔法使い、弓使いが

攻撃しなくてどうする!」


エルフ代表は静かに答える。

「撃てば居場所が割れます。」


トールスは満足気に答える。

「ええ答えじゃ!

今は見つからない事こそ最大の防御じゃ!」


続いてヴォルフに目を向ける。

「正面戦闘は終わりじゃ。」


部屋が静まり返る。


「ええか?

これからは兵站じゃ。

補給部隊、伝令、橋、倉庫……狙う。」


ヴォルフが机を叩く。

「コソコソ補給線を叩く!?

そんなの戦士のやる事じゃない!」


トールスが静かに口を開く。

「……ほんならまた真正面から戦えばええ。

戦士ならそれで死んでも本望じゃ。」


そしてトールスは

ヴォルフに睨む様に目を向け。

「じゃがの。

おどれは何じゃ?ただの一兵士か?


違うじゃろ?

ダ・ギヴ防衛親衛隊長様じゃ。」


ヴォルフは黙る。


「目的は何じゃ?立派に死ぬ事か?

違うじゃろ?言うてみい。」


ヴォルフは俯く。

「……森を、ダ・ギヴを守る事だ。」


「おう。」

トールスはニヤッと

「ほんなら戦士の意地なんぞ捨てちまえ。」


ヴォルフは衝撃を受けるが持ち直し

「だが、敵戦力を削るより重要なのか?」


トールスはフムと顎を触りながら続ける。

「おんどれ戦の前に腹減っとったらどうじゃ?」


ヴォルフはムッとした様に

「……嫌だ。」


「飯も無い。武器も無い……どうじゃ?」


「……戦えない。」


「そう!それじゃ!」

とトールスがヴォルフの頭を撫でるとつい尻尾が反応して少し振ってしまう。


「やめろ!」とトールスの手を払うヴォルフ。


トールスは構わず続ける

「兵隊は飯を食って戦う!武器で戦う!」


空中の虫を掴む様な仕草をしながら

「その飯を奪え!」

「その武器を奪え!無理なら燃やせ!」


そして掴んだ物を落とす様に手を広げ。

ニヤリと

「敵は勝手に戦えんなる。

エルフに意地の悪いのがおったじゃろ

作戦立てる時に相談してみい」


ヴォルフ「……アイツか」


「殴りあいはオドレの方が強い!

じゃが嫌がらせはアイツの方が得意じゃ!」



部屋の空気が変わり始める。


一人が手を挙げる。

「全体の目的は理解した。

地下へ移すのも分かった。

兵士はいい、

だが非武装の村や農村はどうする?」


トールスは少し考え、頷いた。

「……そうじゃの。

全部と言うたワシが悪かった。

地下へ移すのは戦に関するもんだけじゃ。


非武装の村はそのままじゃ。」


会議室がザワつく

「見殺しにするって事か!?」


「違ゃう!

守る順番を決めるんじゃ。

全部守れるなら今みとーな苦労はせんわい

戦う力を失えば、最後は村も森も全部失う。

裏で舌出しとっても

従順にしときゃー殺しゃーせん!」


そして真剣な表情になる。


「じゃがの!これは最重要じゃ!

間違っても

勝手にパルチザンの真似事はさせるな!

族長命令で徹底させろ!


もし従わんのならワシが説得に行く。


最悪、疑心暗鬼になった敵が

無抵抗の村まで焼き始めるど」


誰かが疑問を漏らす。

「……いくら敵でもそこまでするか?」


するとトールスの表情が曇る。

「……追い詰められた軍ちゅーもんは

何をするか分からん。」


会議室を見渡しながら

「魔王戦争の魔女狩り……知っとるか?」


ヴォルフが答える

「……魔族の間者狩りか。」


トールスは真剣な目で続ける。

「そうじゃ。

疑われただけで吊られた者、焼かれた村。


ワシは何度も見た。

流石にそれだけは避けたい。」


沈黙の後、ウニモグが頷く。

「……分かった。族長会議で必ず伝える。

もし反対が出たら説得を頼む。」


トールスは笑う。

「おう。こればかりは力づくでも

『YES』言わせちゃる。」


部屋の空気が少し和らぐ。


「……それは、なるべくやめてください。」


小さな笑いが起こる。


最後にトールスは全員を見回した。

「皆んなまだ思う所は有るじゃろうが

今日から戦い方を変える!


負けんためじゃ!

森を守るためじゃ!


誇りは戦が終わってから取り戻せ。」


誰も反対しなかった。


こうしてダ・ギヴ軍は、正面決戦を捨て、

地下陣地・欺瞞魔法・兵站攻撃を柱とする

新たな戦いへ踏み出すのだった。


ーーーー

ドワーフ総動員で森のあちこちで地下を掘削し

急ピッチで地下回廊を作って行く。

トンネルの入り口にはエルフが擬装結界を施し

幻影魔法で複数箇所砦を出現させた。


そして獣人は……


ーーーー

ヴァルクラント

森を切り拓いた補給路を前線への武器、弾薬食料を運ぶ為進む輜重団列。


「カララス会戦終わってから静かだよな〜」

「そうだな、流石に獰猛な蛮族共も

ビビったんじゃないか?」


「そうかな?アイツ等の目を見た事有るか?」

「……」

「諦めのいい奴の目じゃないぞ?

今に研いだ爪を携えて木の上から〜」

「……」

「なんだよ〜お前がビビっちまったか〜?」

と横の同僚に振り向く。


「……」


虚ろな目で力なくこちらを見る同僚……

首からは大量の出血。


「ひぃ!」

声が出たのが早いかのタイミングで

獣人が首をククリ刀で描き切る。


他の馬車にも

同様に獣人が音も無く飛び付いていく。


車列の停滞に様子を見に行くとかまいたちの様に首を斬られ倒れる。

それを目撃し慌てて馬車を転回させるが

後ろの馬車は気付いてない

「おい!何やってるんだ!」

「馬鹿!襲撃だ!早く馬車を廻せ!」


列中央部に混乱が発生する。

なんとか馬車を転回させるが

最後尾付近が動かない……


最後尾の馬車には獣人が……

その獣人がピュイ!と口笛を吹く。


周囲の木々に無数の目が光る!?


ーーーー

ヴァルクラント鎮定司令部


「前線宿営地から補給部隊の未着の連絡です」

「またか!これで3件目だぞ!」

「あ!……すみません……4件目です」


「どうなっている?

蛮族共の部隊や基地は見つからないのか!?」


「は、はい!魔導反応の有る場所複数箇所への

飛空艦による砲撃。

後の歩兵導入するも全て不発です」


「蛮族共は何処に潜んでるんだ?」

「森に分散潜伏してるものかと……」


「……いっその事、森を焼き払うか?」

「それでは鎮定後の木材確保に支障が……」


「ふう、分かっている。警戒を強化しろ」

「了解です」


森を見つめる司令。

「蛮族共と言っていたが戦い方を変えてきたな

こんなにすんなりと戦略転換出来るとは……

……誰かの入れ知恵か?」




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