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灰空戦記【勇者の旗の下】  作者: アオン
ダ・ギヴ編
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18/21

【ダチ】


聖樹図書館で司書のコノハとミミは、

水晶を操作する石板に手をかざし、

アイシスの聖樹の記憶を

色んな角度から検索しているが、

眉間に皺を寄せて、時々

お互いに耳打ちで会話している……

進捗は遅々として進んでいない様だ。


アイシスは、

コノハとミミに選んでもらった

回復魔法の本を読んでは、

植物相手に治癒魔法の実践を繰り返す。


石造りの長机に興味のある本を

山積みにして、

夢中で読み漁るセルシオに

タントが感心しているのか?

おちょくっているのか?


「……やっぱり先生って感じだよな」


と言うと、

セルシオは顔を上げ、楽しそうに


「読書は良いぞ。

先人の知識、経験を知れるからな。

ここのはレベルが違うぞ。

タント、お前もどうだ?」


「……いや、いいっす」


と、エリクシルで仕入れた

腰のメッサーをポンポンと叩き、


「こいつに早く慣れたいですから」


と言って、外に出て行く。


「……それにあんまり字、読めないし」


と、ボソッと呟く。


セルシオは本を持ったまま中空を見て、


「……そうか、イッグテールには

そういう奴多そうだな……

……今度集めて勉強会でもするか」


と、漠然と呟く。


トールスは図書館の外で、

倒木を枕にのんびりと昼寝している。


タントはエリクシルで

仕入れたメッサーで素振りをする。


しばらくすると、

シルフィが結界の淀みから

不機嫌そうな顔を出して、


「ねぇ! あの箱うるさい!」


「箱?」


と、素振りを止めて振り向くタント。


シルフィはブスッとして、


「あんたが背負ってきた

結界の外に置いてあるやつ!」


タントはトールスを起こし、

全員に声を掛けて結界の外に向かう。


シルフィが箱と言っていたのは、

背負い式携行型魔導無線機だった。


無線機からノイズ混じりの通信が流れる。


トールスが送話器を引ったくる。


「おう、ワシや」


『……トールス! やっと繋がった!

こちらイッグテール……

デカい動きがあったぞ!

傍受した通信を転送する!』


ーーーー


カララス平原から内陸の森林地帯。


ウニモグが「ふんっ!」と

戦斧を一振り!

追撃兵が吹き飛ばされる。


その直後、矢が背中に刺さる。


ウニモグは「ヌっ!」と言うだけで

後ろを睨む。

大したダメージではないようだ。


弓士に振り向くと、


「ヒッ!」


と怯むが、再び弓を構える……。


すると、


「ヌゥ!?」


またウニモグの背中に矢が刺さる。


圧倒的な力で、

近付けば返り討ちになるため、

討伐隊は距離を取ることにしたらしい。


「ちょんわ!」


と、チュウ老師が弓士に

跳び蹴りを繰り出すが、

盾兵に防がれ、押し返される。


ロウ教官も

両手の鉄の爪で斬り掛かるが、

増援で来た重装兵が立ち塞がり、

刃が通らない。


討伐隊はウニモグ達を

重装兵と盾兵で囲み始めていた。


その隙間から、

重装兵と盾兵の後ろに控える

槍兵達が続々と長槍を突き出す。


さらにその後方からは、

弓士が矢をつがえて射ち込む。


ウニモグも

無理矢理近付き、戦斧で薙ぎ払ったが、

長槍の届く範囲全てから

集中攻撃され、後退する。


その隙に、

薙ぎ払いで空いた場所は埋められ、

距離を取ると矢の雨が降る。


巨大な戦斧を盾にするが、

全ては防げない。


「ぎゃ!」


短い悲鳴と共に、

先ほどの矢の雨でまた一人倒れた……


ウニモグは、隣で魔導無線機を背負う

ウサギの獣人通信兵に聞く。


「主力の撤退は?」


ウサギの獣人は即座に返す。


「現在、ウランカ橋に差し掛かった所です」


ウニモグは顔を歪める。


「……まだ、掛かるな」


ウニモグはハァと溜め息を吐き、

ポツリと、


「あいつに借り作りたくないな〜」


と言うと、真剣な目で、


「魔導周波の変更を……優先度は【特】だ」


ウサギが無線機の水晶を操作する。


また矢の雨が迫ると、

ウニモグが飛んできた矢を薙ぎ払う。


「ぞ、族長……変更……しました」


ウサギの通信兵に矢が命中し、倒れる。


ウニモグは、

聞いた者の背筋がゾワリとするような

歯軋りの音を響かせる。


そして、送話器を掴む。


ーーーー


聖樹図書館の結界外。


イッグテールが傍受した無線を

聞いている一同。


タントは唖然として、


「こ、これって……」


トールスは静かに答える。


「……ああ、戦が始まっちょる。

しかも、ダ・ギヴ負けとる」


セルシオが焦りながら

キョロキョロとトールス達を見回し、


「ど、どうするんだ!?

まだこっちは

調査も終わっていないんだぞ!?」


トールスは腕を組みながら、

口をへの字に曲げる。


その時、


転送されている

カララス会戦の戦場通信に

ノイズが走る……


「ズッ、ズズ……

……すま…が頼む! ダチを助けてくれ!」


タントが真剣な表情で、


「救援要請ですね……戦況が悪そうです。

……それに、この声?」


タントは確信が持てなかったが、

トールスはすぐに

ウニモグの声だと気付く。


すると、大剣を肩に担いで、


「……んじゃ、ちょい行ってくるわい」


と、近所の酒場へ行く様に

手を軽く挙げる。


セルシオが声を荒らげる。


「数が違い過ぎるぞ!?」


トールスは振り向きもせず、


「ダチが助け求めとるんじゃ」


「じゃあ俺も行きます」


と、手を上げるタント。


トールスは首だけ振り向き、


「……死ぬど?」


タントは少し興奮気味に、


「友軍を助ける為の決死の殿軍!

しかもそれの救援!

最高にかっこいいじゃないっすか!」


トールスはタントに身体ごと振り向き、


「……おんどれ、

ちょっと変わったの?」


タントはニッと笑い、


「貴方のせいです」


移動を始めようとする二人に、

シルフィは慌てて声を掛ける。


「ちょっと!

歩いて行く気? ちょっと待ってて」


シルフィは紐の付いた木の筒を取り出すと、

ヒュンヒュンと回し始める。


ジーーー! ともビューーー! とも

いえる音が響き渡る。


森の奥から、

ガサガサと何かが近付いて来る。


「ひ、ひいいぃぃ!!」


茂みの中から、

体長約2mのクツワムシが出て来る。


シルフィは自慢気に、


「この子達の

ジャンプなら歩きよりずっと速い。

飛空艦? にだって負けない!」


トールスは

クツワムシをジーっと見て……


「……美味そうじゃの!?」


キッとトールスを睨むシルフィ。


「食べたら叩くよ!」


トールスは何でもない様に、


「冗談じゃ!

この大きさじゃ

糞出しに時間がかかるわい!」


シルフィはジトリと、


「……貸すの今回だけだからね!」


トールスとタントは

クツワムシに跨がると、


「シルフィ! サンキューじゃ!」

「ありがとうございます!」


ガチャガチャガチャ! という

爆音の羽音を響かせて、

ウニモグのもとへ向かって跳び立つ!


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