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灰空戦記【勇者の旗の下】  作者: アオン
旅立ちの時
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14/21

【誰も戦争を始めていない】


イッグテールは傭兵ギルドから、

ヴァルクラント北方国境線の

情勢調査という

緊急依頼を受け、国境へ向かっていた。


ヴァルクラント領を避け

北方諸国連合領内を航行する。


最初は北方諸国軍の濃緑色に塗装された

主力飛空艦

【ブリーズ級巡洋艦】や同じく

濃緑色の輸送艦ばかりだった。


「前線へ向かっているんだな。」


「本格的に戦争が始まったって本当ですかね?」


「それを確認しに行くのが今回の依頼じゃ

『分からんから確認して来て』

1番分かりやすくて楽な仕事じゃ」


数時間後には逆方向から

ブルーグレー色に塗装された

一般ヴァルクラント軍艦ばかりになる。


「元々の前線はまだ先の筈ですよ?」

「……もう前線が動いたのか。」


するとランス級2隻が近付くと

停船命令が届く。


タントはピクリとするが

トールスはサッと手を横に出し

タントの動きを制する。


「停船じゃ」


イッグテールが停船すると

ランス級から

『こちらは

ヴァルクラント王国軍所属

軍艦サリッサ

所属、艦名、目的を述べよ。』


「こちら

バンバルシア傭兵ギルド所属

【イグノレイマス号】

本艦は当ギルド発注の依頼により

現地の情勢調査中なり

当方には

貴国及び他勢力に対し交戦の意思なし」


『……照合確認した。

貴艦の航行の無事と

両艦が筒先を向け合わない事を祈る。』


「ダンケシェン

当方も切に祈る。終わり。」


ランス級2隻が遠去かり

イッグテールも動き出す。


タントはブハァー!と

安堵の息を吐き出し

「何ですか、その艦名?」


副団長がニヤリと

「上手く立ち回る為にゃ

艦名も2つ3つ持つのは常だ。

【イグノレイマス】は

【何も知らねぇ奴】って意味だ。」


「つまり?」


「【何聞かれても知らねぇし】

【お前も知らねぇ〜だろ?】って意味だ」


「真面目に応対しながら

相手を煽らないで下さい!!」


前線が移動している以上

飛空艦からでは限界がある……


イッグテールは適当な所に着陸して

中立旗を掲げて陸上偵察に出る。


トールスは艦長席にドカっと座ると

手を挙げて

「ワシは顔が割れちょるから

イッグテールで待っとる。頼むど」


最低限の装備と

タバコや酒、甘味菓子などの

嗜好品を詰め込んだリュックを背負い

徒歩で両陣営に向かった。

(嗜好品は情報と交換用に)


ヴァルクラント兵は

「北方諸国連合が

突然国境を越えてきたんだ!」


北方諸国兵

「我々は巡礼者を攻撃する

ヴァルクラントから

巡礼者を助けようとしただけだ!

そうしたら撃たれたんだ!!」


巡礼者

「【黒衣の巫女】様は助けてくれた。」


商人

「俺は砲撃しか見てない。」


避難民

「誰が最初かなんて知らない。」


全部事実の一部だけど、全部違う。


陸上偵察が終わり

イッグテールに全員が帰還した。


現時点で判明したこと


ヴァルクラント王国は

「北方諸国軍が侵攻した」と認識。


北方諸国連合は

「巡礼者保護のための救援」と認識。


黒衣の巫女率いる巡礼団は

他国からの

巡礼を停止しているのに関わらず

国境を突破し現在も聖都方面へ移動中。


どうやって突破したかは

ハッキリしない。


ヴァルクラントと北方諸国連合の

戦闘中の戦場を

【交戦せず】擦り抜けたと

言うのが最も多い証言だった。


両軍とも「自分たちは防衛側」だと主張。

国境周辺では散発的な戦闘が継続。

前線は北方諸国側へ押し込まれつつある。


そしてタントが、

「つまり……

どっちも【相手が先に攻めた】って

言ってるんですね。」


トールスが頭を掻きながえら

地図に目を落としながら




「だから戦争ってのは厄介なんじゃ」






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