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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編 六月

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94/111

FILE94『値踏みのクローサー』

六月。競技祭最終日。一組は笹井以外観戦席での賭けとなった。


身体検査も笹井が一人でグラウンドを駆け回ってたので、星野や志田、茅野、盛田といった笹井と関係が深い組が率先して応援。



意外にも二組の布施や三組の明照院、四組のふたつちゃんこと仁がまだ生き残っている。




アギに至っては遠隔で競技祭の賭け券こと競技券をオンラインで買う権利しかない。



それも、限られた人にだけ許される特別な中継だ。




ある場所の個室では、男性二人がその模様をパソコンから見て、中継を覗いていた。



英字・英字・英字・さらには化け文字で解読しながらでないとロクに購入もできないサイトだ。




本田は大量の券を買っている。



【笹井】【さくら】最終日に対戦相手同士になるだろう二人にひたすら賭ける。



勝てば勝つだけ額は上乗せ。負ければ無効。



朝刊新聞を見ながら速報と交互に見る増田と鈴木は、コソコソ話をした後、「買い足そう」「よし」と客席の階段を駆け降りて券売機に向かう。




星野と志田は、【笹井】一択賭けらしい。




あまりにも競馬場にいそうな本田の座り姿に圧倒されながら、佐田と飛鳥が隣に座る。



「お前ガチすぎて殺気放ってるぞ」「え」




佐田に言われてはようやく、私服のフードを外す。


「ギャンブル似合いすぎ」飛鳥もそう言っては真似をするように足を組んで片手に新聞を持ちながらドヤ顔した。



「もうお前のドリンクが酒に見える」佐田のツッコミに、「飲めるなら飲んでみたいよなー美味そうだし」と苦笑しては、「エナドリだよ」と中身を見せてやった。


紙コップに入った強炭酸。 レモンの酸味が香る。



「なんか普通にエンジョイしてるんだな」「え」




ザワザワする会場で聞き取れなかったのか、「なに」と首を傾げては「いーや楽しんでるんだなって」と飛鳥に言われ、「え…お前が一番じゃね」と首から双眼鏡をぶら下げポップコーンまで購入し新聞紙に赤ペンまでぎっしり付けている飛鳥に言い返す。



「生き残りの全生徒の賭け券を購入しとけば今日は絶対儲かる‼」



あまりにもバカすぎる考えで大量の賭け券を買った飛鳥に、「…」と二人で黙る。



「え、おれ…ずっとこうやってたけど」飛鳥のその間抜けな発言に「バカッ‼」「大損失じゃねーか‼」と二人してツッコんだ。



「いくら負けた⁉」



飛鳥は両肩を揺さぶってくる佐田に、「え、稼げる思ってたから額なんて」と瞬きをしながら返事する。



本田は「はぁー」と頭を抱え、「最終日に言う事じゃないが、基本誰かは必ず負ける、だからそれをすると買わない判断をした場合よりも損をするんだよ」とわかりやすく説明する。




「いいか?賭け券は一枚百円だ。百円で笹井に十枚賭けるとする。その場合、階級によって大体千円から一万の払い出し。つまり十枚買えば、笹井の場合、最高額の一万だったから十枚買ったら十万だな。一方で賭けた相手が負けた場合は千円の損だ。だから大量買いは馬鹿がやる事。最初に階級が低い生徒を複数枚買うのと階級が高い生徒の一枚を買うのじゃ変わらないって動画で言ってたが…しかもこの競技祭の速報に表示される【裏階級】と実際の【裏階級】はまた別物だと地味に負けた生徒が増え始めた時期から注釈が入った。だからあくまでこれは現時点での暫定でまだ確定はしてないんだろうな。実際。二年の場合、裏階級ってももう速報流れようがみんな「…」みたいな反応だったろ?つまりは勘付かれるか。公開されてたものがある日を境に微調整して確定するんだろうな。」





ベラベラ喋る本田に飛鳥が、「うーーーーん」「損か得かナンモワカンネ」と口をあんぐりと開ける。



「…」と黙り込む佐田。




小学生並みの計算だ。本田は「いいか、みっちり行くぞ」と飛鳥に付き合い、速報が流れる中、なぜか突如算数会がはじまってしまう。



指を見せたり、数えさせたりして必死に教えていく本田と、飛鳥が、「三万!」と何の計算を間違ったのか突拍子も無い会話をする度に「ちがうって‼」とペシぺシ優しくツッコミを入れる佐田。



普通に仲が良い光景だが、高校生というより中学生の会話っぽいのは気のせいだろうか。



多分飛鳥がいるせいだ。手前でわちゃわちゃする男子三人を他所に、買い足した件を抱え屈みながらもどってくる鈴木と増田。




「良し、笹井追加。」「こっちは会長追加だ」本田と同じ分け方。多分見てから買い足した。



かなり二年も減った。一年も。



チラッと後ろの席を見ては火野が巫女服姿で腕を組み、険しい顔で笹井の賭け券を持っているのがわかる。



BGMが鳴り出したので、本田はストローでチューッとエナドリを飲み干しながら、(笹井。勝たなくてもいいから、すこしでも情報取って来い)と期待の眼差しを向けていた。



まあ …自分に流れてくるかまでは知らないが。




ぼーっと笹井のアメジストの指輪を眺める。




また会場にルール映像が流れる。



その間も下を向く笹井。


最終日のコンディション。



体調は悪めだ。



盛田が客席で祈るようなポーズをする。



しかもうちわまで。



うちわには【笹井さん頑張って‼】の文字となぜか【笹井さんバーンして】の文字が。



まるでオタクだ…。




しかもどういうわけかこの盛田舞という女、ハチマキまで付けてガチである。



あまりに普段よりはしゃいでいるため少し浮いているせいか、チラチラ見られては盛田はあわわわわわ、と動揺しながら「ごめんなさいごめんなさい」と小声でペコペコ謝りうちわを低い位置に直す。




(なるほど、そういうことか…)


どうやらうちわの高さで怪訝な目を向けられていたらしい。




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