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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編 六月

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91/111

FILE91『ギャンブルの本質と強気な盛田』

四枚同士の交換。条件。両者同じ。



盛田が負ければ、支払いを押し付け。



波子が負ければ、自分で言われた金額だけ…支払い。現実味が無いあまりの大金の利益。


重なる志田の負債は女子高生とは思えない額まで上昇。


牧野波子。盛田舞。両者、真剣なまなざしでアイコンタクト。





【ワンペア】【ハイカード】




結果。波子。残りのタイマー・約二分。




二勝一敗の盛田。「ふんッ、ようやく一勝ね」波子はディーラーに、「ねえディーラー。引き分けだったらどうなるの」と問いかける。




ディーラーは、「その場合はもう一度同一相手で戦う事になります」と説明する。




「勝敗が決まるまで…期間中ずっと同じ相手になるって事?」盛田は思った。波子は理解が早い。




それに疑問を素直に聞く。



だがディーラー視点ではベラベラ喋るのはあまりよろしく無いのか固まっているが。



「アンタ次何枚交換するの?正々堂々戦うってなら私も揃えてあげるわ」


波子が盛田を見ながら言う。




盛田は配られたカードに視線を向けて悩みながら口を開いた。「しません」「配られたまま勝負するって言うの」と波子は強気な盛田の姿勢に圧倒される。



「同条件で、戦っていただけますか」「チャレンジャー…ね、交換すれば勝てるかもしれないのよ?」




波子の良心にも、盛田は首を横に振る。



「確かにカジノは…心理戦かもしれません。イカサマをしたり、そもそもトイレに籠って逃げを選んでいる生徒もいるかもしれない…。でも不正は禁止行為。不参加は言及されていない穴を突いた逃げでしかありません。ギャンブルの本質は運の賭け。私のギャンブルは、こんな競技じゃない。最後に、ひとつ。ひとつだけお伺いしたいんですけど」




盛田は波子と場にカードを出すタイミングを計りながら、ディーラーが後ろを向きながら既にトランプのケースを用意している状態で、「…暴徒ってご存じですか」と問いかける。




波子は、「…ぼ…う…と?」と アホ毛を逆立たせながら目をパチパチ瞬きさせる。




「…ごめんわかんない」 純粋に知らなそうな反応。





一方で、本田の席のタイマーがピピピピピピ‼と鳴り響く。




「なぁーんだ、序盤まぁまぁな強さ見せてたのにこんなもんか」




本田は項垂れるように下を向いた。




負けたのだ。はっきりと。




しかも相手は身長が百四十も無さそうな、まるで少女のようなガキ。本田の瞳が揺れる。




「でも、一年にしては、十三日も生き残るなんてたいしたものじゃん」



頬杖を突きながら本田にタブレットを渡す先輩。



「だ・れ・に・す・る・の?」



少女には瞳を揺らしているように見えた本田が、項垂れ、前髪で顔がよく見えない状態のまま、ふふッ…と零すように笑い、《Ⅹ》として全員に志田に入れろと指示を出したくせに、本人は【星野】に請求を入れる。




タブレットに入力される、星野の請求額、【三千五百万】の文字。



(計画通り)本田は先輩に顔も見せずに背を向け闘技場の出口へ向かう。



本田が負けた姿を見ては、盛田がびくっと振り向く。




まさか本田が…。と言わんばかりに。




(星野が負け情報収集も済み目的を果たした以上。俺がもうこの競技祭のプレイヤーとして戦う意味はない。早めの退散も計画のうちだ。そして志田の負債を少しでも軽くするためにあの席での賭けにシフトチェンジすべき)



ここまで見事に全てをこなしてしまう自分に、少々快感を覚えてしまう本田湊十五歳。だが、同時に自己嫌悪もあった。




(…最初はもうちょっと躊躇いもあったんだけど)




本田が監視役に送られながら闘技場を出て教室に戻れば、志田と星野にチラッと見られた後に目を逸らされた。



茅野や鈴木、増田はまだ会場。




志田が、「アンタ星野ちゃんに入れた?」と問いかけるが、「俺はⅩが言う通りにした」とだけ答え自分の椅子に座る。




負けた生徒が続々と一組の教室に戻ってくる。




試合中の券購入は不可である故だ。



「あーでも確かに私のも増えてるねごめん疑って」志田は自分のスマホの学生証アプリを見ながら言う。



「二年の卒業前に九千万以上の支払いをそれぞれにってもう無理に決まってるってかおかしいでしょ…私まだ高校生だよ」と絶望的な額に笑いすら漏れ出てきてしまう。



両手で頭を抱える志田に、慰める言葉も無い星野。



ただ、隣にいるだけ。本田はその光景を、ボーっと眺める。



(俺は…何か…絶大な間違いを犯してる気がする…人として)



二人が依存関係になってしまっていないだろうか。と自分が企てた事の重さを、自分でも。ようやく。




でも、競技祭はもう、月末まで終われない。




(星野は反省したのだろうか?でも、歪んでる。前の普通に支え合う関係じゃない。志田は自分の立場が弱くなり支えられる事に快感を覚えているし星野は志田に自分の存在意義を見出している。まるで…)




本田は何かを考えるが、後頭部がズキっと痛んだのか、これ以上は辞めにした。




会場では、ピピピピピピ‼と盛田の傍にあったタイマーが鳴る。



波子が、「うううううう」と目から涙を滝のように流した。盛田は「先輩、ごめんなさい‼」と謝る。


波子は涙を拭って「ううん、勝負だから、‼波子、煽ったり喜んだり逆に恨んだりもしないもん‼」とウィンクをし、片手を差し出した。





盛田も握手を返す。



波子は、「私だって卒業…できるかわかんないけどさ、盛田さんも頑張ってね、長く、長く生きるんだよ」とその両肩に手を置いた。




「はいッ…‼」盛田は微笑んだ後、ディーラーから渡されたタブレットを置く。




「…友達が今、九千万以上の負債を抱えてて、少しでも、少しでも軽くしてあげたいんですけど…」盛田が悩みながら言っては、「ブランドバッグ大量買いしたかったんだけど」と続けた後で、星野に言い渡した額をそのままタブレットに入力するのだった。




そして波子は広げた平成の雑誌をバッグに入れながら、「またねー‼」と敗者で一番元気よくパタパタと走り去っていく。




すっきりする波子だったが、監視役と校舎に向かう前に「…のど…か?」と親友の幻影らしきものが見え立ち止まる。



だが、「な訳ないか‼」と考え直した後、「待ってぇー‼」と監視役に叫びながら追いかけて行くのだった。



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