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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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八話『AI』


 資料室。パソコンを開いては、本田は偽サイトの設計をはじめる。


「作れるなら昨日でも作れるって言えばよかったのに」と言う佐田に、本田は「言ってはいけなかったんだ」と手を動かしながら答えた。


 茅野は、「へぇ」と怪しく微笑む。


「作ってる間、私は何をしようか」と本田に問いかける茅野。


 本田は、「そうだな、じゃあ資料でも読み漁っていろ」と答える。


「はーい」と茅野は棚に乱雑に積まれている資料を手に取った。


 そんな茅野を見つめる本田。


 佐田は「郷土資料…最近誰かが読んだみたいだな」と呟く。


 茅野は、ボーっと本田に視線を向ける。


「茅野?」佐田が茅野の顔を覗きこむ。


 茅野は、「ううん、ちょっと本田くんってすごいなぁって思っただけ」と資料を手に取り答える。


 最新鋭のシステムを開き、AIとの対話を済ませ五分ほどで偽サイトを作る本田。


「今はいいよなー。なんでもAIの時代だ」と資料を読みながら呟く佐田。


「そのAIも、触る技術が無ければ使えないけどな」と答える本田に、佐田は資料をスマホで撮影しながら、「でもさ、五十年年近く前からパソコンもスマホもあったんだろ?なんで新しいデバイスが登場しなかったんだ」と佐田は本田に問いかける。


「嗚呼…それは」と本田が答えようとするが、茅野は、「それはZ2によるパンデミックが影響しているんだよ」と佐田に資料を渡した。


「Z2?」と首を傾げる佐田。


「狂犬病ウイルスを加工して研究所で人為的に作られたウイルスだな」と本田は補足した。


「だが、なんで茅野がその事を知っている」と本田は茅野を注視する。


 茅野は、「ふふッ」と意味深に笑ったあと、「なんでかな」と本田を見つめた。


「私としては、本田くんがこのことを知ってるほうが気になるな。だって、本田くんが産まれるよりも、ずっと、ずうっと前の事だからね」と言う茅野。


 向かい合わせになる茅野と本田の間に割って入る佐田。


「すとーっぷ!頼む、俺を置いて会話しないでくれ」と言う佐田に茅野は「ごめんね?」と可愛らしい笑顔を向けた。



 偽サイトを作り終えた本田は、「俺たちはこれを使ってこの三時間で百万稼ぐ」と茅野、佐田の二人に言った。


『百万⁉』と驚く佐田と茅野。


「要はこの偽サイトを検索結果の一番上に表示させればいい。」と本田は説明する。


「検索結果の上に出るサイトと言うのは信頼されているんじゃない。金を払うか、検索エンジンに価値があると誤認させればいい。人間はURLなんてまず見ない。上に表示させて正しいと思い込ませる作戦だ」


 本田の説明に、「えっと、つまり、その」と混乱する佐田と「…」と本田を見つめる茅野。


「検索順位と言うのは正しい情報だから上に来るわけじゃない。大勢が正しいと思い込めばそれが上に来る」


 本田の補足説明に、放心した佐田を、茅野が「佐田くーん、大丈夫ー?」と揺さぶる。


「検索エンジンを騙す必要は無い。騙すのは人間だ」


 本田の言葉を聞いた茅野は、「じゃあ、偽サイトでも本物みたいに上に表示できるってことね」と顎に手を当てながら考え込む。


「『みたい』じゃない。人間が本物だと認識すればそれは本物として扱われる。さらに、このやり方であれば若い人間からも金を集める事が出来る。大手通販サイトと同じ商品が表示されるように設計した。これなら名簿を教室に置いたままでも、情報を同時に集めて儲けることが出来る」


 語る本田に、佐田は「こぇぇぇぇぇ…」と怯える。


 茅野は、「なんで本田くんはそこまでして…」と本田の表情を見ながら訊ねる。


「俺たちは入学したばかりだ。このクラスが収益を出せなかった場合、どんなペナルティがあるかまだわからないだろ。なら収益を出せるだけ出したほうがいいんじゃないかって。単純な考えだ」と本田は答えた。


「さっそくアクセスされはじめてるよ」と画面を覗き込みながら言う茅野。


 佐田は、「ログインされたときのメールアドレス宛に、俺が購入をを促す偽のマガジンメールを送ればいいんだな」と本田に視線を送った。


 本田は、「そういうこと」と佐田に答える。



 茅野は、「ねぇ本田くん」と本田に耳打ちする。


「盛田さんの事、聞いた?」


 茅野の問いに、本田は察したのか真顔で「興味ないな」と答える。


 茅野は、「そっか、本田くんなら盛田さんの情報、興味あるかなって思ったのに」と少し残念そうにする。


 本田は、「なんで俺が盛田に興味持ってると思ったのか言ってみろ」と本田が言うが、茅野は、「八十の確率でそうだと感じたんだけど、私の見当違いだったみたい」と落ち込んだような表情を見せる。


「うっひょおおおおお!」と突如大声をあげる佐田。


「どうしたの?」茅野が佐田に寄る。


「すっげえぞ!まだ三十分も経ってないのに、五十万、六十万、あッ、もう目標額なんてすぐだ!」と次々と増える数字に夢中になる佐田。


 茅野は、「ふーん?」と口角を上げた。



 一方、一組の教室では、志田が「あぁぁぁぁ!もうッ、お金持ちのおじいちゃんおばあちゃんに全然当たらない!」と大声をあげる。


「貧困社会にもほどがある!」と机を両手で叩きながら、「笹井‼勝算があってやってるんじゃなかったわけぇ⁉」と笹井に全ての責任転換をしようと立ち上がる。


 笹井は「もう少し効率的に稼げると思ったんだけど…」と困惑した。


「ああああああああもおおおおおおお本田くんはいないの⁉」と絶叫する志田に、笹井は、「本田くんを森羅万象の神みたいな扱いしないで!」とツッコむ。


 増田も、「本日収益十三万…一クラスで割ると」と絶望する。


 布田は、「一人四千円ちょっとや」とやる気なさげだ。


 星野が「ええぇ⁉そんなもん⁉」と想定を下回る収益に驚く。


「どうせ前科モンになるんならもっと派手な詐欺とかしたいわ…」と布田が言うと、教室がやる気なさげな空気に包まれる。


 そんな中、対応を終えた盛田が教室に入ってきた。


「ご、五十万確保できました」と言う盛田に、「よっしゃ‼」と鈴木がガッツポーズをする。


「ど…どうやったの?」


 これには笹井も驚きを隠せない様子。


「し…しかも学園の銀行に振り込まれる、つまり…納税なし」と驚く増田。


「合計六十三万、一人当たり二万弱」と計算する星野。


「入学翌日からここまで稼いでるのも俺たちのクラスだけだろ」と調子に乗る鈴木。


 笹井は、「…」恥ずかしそうに俯く盛田を見つめた。

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