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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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七話『手品師の計画』

▽ 


出海奈はホワイトボードに、【高齢者を騙す方法】とマーカーで記す。


 増田は、「いよいよそれらしくなってきたな」と恐れるように呟いた。


 布田も、「せやな…」と息を飲む。


 出海奈は、「高齢者を騙す上で必要なのは頭の出来じゃない」と、出海奈は、教卓の前に立ち、生徒たちを見回した。


「人間は長生きするにつれ経験で物を判断するようになる。これは利点でも欠点でもある」


 出海奈の説明を真剣にメモする笹井と、大きなあくびをしながら窓の景色を眺め、(ここはA棟だったっけ…)と考える本田。


 笹井が本田に目を向ける。机の下から本田にメモを渡す笹井。本田はそのメモを読む。


【生徒会長の名前は楚々辺さくら。理事長の娘】


 殴り書きのような字で書かれたメモを読んだ後、本田はそのメモを丸めた。


 モニターいっぱいに高齢者の行動傾向を示したグラフが表示される。


「たとえば、役所、病院、銀行、警察。こういった単語に安心感を覚える者は多い。若年層ほど疑うが、高齢者ほど人生の中で身につけた常識を信じる傾向にある」


 出海奈が言うと、鈴木は「じゃあじいさんばあさんは権威に弱いってわけか」と出海奈の言葉を聞いて頷く。


 出海奈は、「半分正解だ」と答えた。


 出海奈はマーカーで【不安】【孤独】【焦り】と書き込む。


「…」俯く盛田。


 志田は、「高齢者の弱さにつけ込むってこと?」と言いながら立ち上がる。


 出海奈は「そうだ」と志田に視線を向けて答えた。


「最低…」


 とドン引きする志田に、出海奈は「そう言えるのも最初だけだ」と嘲笑した。


「この世は嘘と金で成り立っている。仮にお前らが求める『正義』とやらがこの世にあったとしても、それは理不尽で淘汰されるだろうな。」


 出海奈の一言に、教室中が静まり返る。


「なんだ。不服か」


 腕を組みながら言う出海奈に、増田が「出海奈先生はなんでそんなに正義を否定するんだ」と立ち上がって問いかける。


「お前たちは知らないだろうが、かつてこの国には『正義』を掲げて散って行った組織がいた」


 切なげな表情を浮かべる出海奈に、「組織…?」と志田が首を傾げる。


「大昔になんかそういう組織と戦う探偵漫画があったとは聞いたけど」と考える鈴木。


「そんな組織が実在するなら記録ぐらい」と疑心暗鬼なのか笑う志田。


 出海奈は、「話を戻すが、高齢者の多くは孤独だ。家族との接触が少ない者もいる。そこへ突然、【問題が起きています】なんて言われたら、高齢者たちは冷静さを失う。」と生徒たちに教えた後、「昨日の名簿回収、それに笹井の名簿収集は見事だった。そこから高齢者を絞り徹底的に金を稼げ。稼ぎはクラス全員で山分けだ」と説明した。


「座学はここまで。次は実践だ」と出海奈は教室から去った。




 笹井が交代で教卓の前に立つ。


 笹井はなぜかずっとスマホを教卓の上に置いていた。


「今日の四時間も昨日みたいにみんなで役割を分担して作業するわ。昨日はみんなにやりたい事を選んできて貰ったけど、今日は私から決めさせてもらう。布田くん星野さん盛田さんはショートメールと対応。志田さん増田くん鈴木くんは名簿から高齢者を割り出す作業。本田くん佐田くん茅野さんはちょっと話があるから別室で待ってて」


 笹井の指示に、本田は流し目を送る。


 A棟。


 家庭科室と色褪せた文字で薄っすら見える学級表札が掲げられた教室で待機する三人。


「一体何がはじまるの⁉」


 と不自然なまでにワクワクする茅野を、「…」と本田の鋭い視線が捉える。


 佐田は「俺たちひょっとして今からお説教されるのか⁉」と騒ぎ出す。


 本田は「なわけ…」と静かに佐田にツッコミを入れた。暫くすると、笹井が入ってくる。


「三人共。付き合わせてしまってごめんなさい。これから三人に頼みたいことがあるんだけど、いいかしら」


 笹井は三人の生徒を前に問いかけた。


「お説教じゃなくてよかった」と安堵する佐田。


「ここの三人だけで違う詐欺やってくれないかしら」


 笹井の頼みに、「え」と驚く佐田。


 茅野は「なんで私たち」と目を丸くする。


「佐田くんはお調子者だから、何かを察されて指摘されても笑いで誤魔化せるしそれがおかしいとも思われない。茅野さんはあまり目立たないから、何をしててもあまり記憶に残らない」


 笹井の言葉に茅野は、「むー、私だってみんなの記憶に残りたいのに」と頬を膨らませる。


「本田くんも茅野さんと同じ理由」と笹井は続けた。



「それと」と言う笹井。


「本田くん、偽サイト作れるらしいから、ここでクラスのみんなにバレないように作って貰って二人にはそれの対応をしてもらって、初日からクラスの収益をあげようかと思ったの」


 笹井の説明に、佐田は「え⁉」と本田を見る。


 茅野は「ふーん」と興味なさげだ。


「パ、パソコンはどうするんだよ」


 とあたふたする佐田に、本田は「誰もここでやるとは言ってないだろ」と呟いた。


 笹井は、「そう。だから今からみんな資料室に行って」と三人に指示した。


 佐田は「すげぇ…」と本田を見て感心する。


 茅野は「ところで、入学初日からなんだか本田くんと笹井さん、仲が良いけど、フェリーで何かあったの」と二人を少し冷ややかな目で見つめる。


 本田はその視線に違和感を覚えつつ、「なにも」と答えた。


「笹井と俺に何かがあったならもっと仲良くしてるだろ」


 と言う本田に、笹井も「そうね」と返事した。


 茅野は「ふぅーん、て・れ・か・く・し?」とにやにやした表情を浮かべる。


 笹井は、「やめなさい!」と少し恥ずかしそうに答えた。


 佐田は「まんざらでもなさそうだな」とケラケラ笑う。


「まぁいい。資料室、向かうぞ」


 本田が先を行くと、佐田が「待って!旦那様―♡」と解像度の低い笹井のモノマネをしながら後をついていく。


 茅野は少し立ち止まった。


 佐田が、「茅野、茅野行くぞ!」と茅野を誘う。


 本田は、口元だけで笑みを浮かべた。


 なぜなら…ここまでの段取りは、全て本田の『計画通り』だからだ。

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