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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット


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六話『操り人形の愉快な踊り』


 食事を済ませた本田は、もう一つ、学生証アプリが入っていない端末を手に取る。そこには非通知で着信が入っていた。


 本田は、「はい」と電話に出る。


『この島の施設の跡地にはもう行ったか』


 中年程の男性の声だ。本田の知人だろう。


 本田は「いえ」と答える。


「そもそも、残ってるんですか」と訊ねる本田。


 本田と話している相手は、『嗚呼。現存しているはずだ。』と返した。


「…」地図を眺める本田。


『島の奥地だがな』電話相手は少し溜息を吐いた。


『ある人物が遠州煉獄島に既に到着している。確かお前と同じクラスだったはずだ』


 電話相手の言葉に、「同じクラス?」本田は首を傾げる。


『お前はなるべくそいつと情報共有してくれ』と話す電話相手に、「でも椛島さん。罠だったり」


 本田は躊躇するが、『罠じゃない、確認は取れている。お前はそいつを味方にして』と椛島と呼ばれた男が言うが、本田は「…」と黙った。


『不服か』と問いかける椛島。


 本田は、「お気遣いはありがたいんですが…もう既に此方で味方は確保しました」と答える。


 椛島は、『早いな流石は…』と言いかけるが、椛島が言った事が不都合だったのか、本田は電話をブチ切りした。


「はぁ…大人は空気が読めない」と本田は呟き、立ち上がる。


 風呂が湧いたみたいだ。本田は服を用意して風呂へと向かった。



 風呂に浸かる本田。本田はシャワーを浴びた後、浴槽の中でボーっと考え事に浸る。


 本田の脳内では、次々と入学から現在に至るまでの映像が再生されていた。


 そしてその走馬灯のような映像に、新聞で見た情報や、昔テレビで見た光道教教祖の処刑時の映像が混ざる。


 本田は考える。「…夜叉鏡の亡者は、なにがしたかったんだ」


 夜叉鏡の亡者。彼が多数の殺人に関与していた事は後に明かされている。


だが彼は死亡時に二十三歳の若さだ。


 殺人と宗教、そしてパンデミック。


 全てがとっちらかって、夜叉鏡の亡者なる彼が一体なにを目指していたのかが、本田には全く理解できなかった。


「殺人犯して、警察まで殺して、宗教を設立して全員を従えた気になって、自分に酔っていたのならただのバカだろ」


 と呟く本田。


いっそ何かの超常現象が絡んでると考えたほうが寧ろ綺麗に繋がる案件だった。


 本田は風呂から上がり、バスタオル一枚の姿で牛乳を飲む。


 綺麗に割れた腹筋。本田は服を着る。その後は特にやる事も無く、眠ろうかと考えていた。


 だが、ピンポーン。と高く鳴り響いた自室のチャイムに、妨害される。


「はい」扉を開けると、そこには盛田がいた。「盛…」と本田は彼女の名前を呼ぶ。


「食事のトレーとお皿、下げに来ました」と頭を下げる盛田。


「職員の手伝いか」と本田が質問すると、盛田は、「はい」と答える。


「偉いな」


 と本田が言うと、盛田は、「す、少しでも、み、みんなのためになることをと思いまして」とあたふたする。そんな盛田を、本田の鋭い目が捉える。


「…なぁ。盛田」と口を開く本田。


 盛田は、「なんでしょう…」とトレーを抱えながら視線を合わせる。


「今の日本政府についてどう思う」


 本田の質問に、「えッ」と言葉を詰まらせる盛田。


「すみません…あまり…政治とか…詳しくないものですから」


 と言う盛田を見て、本田は口角を上げた。


「悪いな。変な事聞いて。たまたまニュースでやっていたから」


 本田はそう言うと、トレーを片付けて行く盛田を見送った。


 本田は盛田に対する確信を得て、眠りにつく。



 朝。朝食を終えては、制服に着替え洗面台に向かう。


 紺色の歯ブラシを使い歯を磨く本田。


 本田は朝の支度を全て終わらせ、監視役と合流する。


 生徒寮から校舎まで向かい、下駄箱で監視役らと分かれると、そこには盛田がいた。


「あ、あの昨日の…少しモヤモヤしてて…」


 と盛田が本田に話しかける。


 本田は、盛田の上履きを取ってやった後、


「ああ、気にしないでくれ、本当に何もないから」


 と答え教室へ向かって行った。




 出海奈は少し機嫌が悪そうな様子で、教室の中へと入ってくる。


「ホームルームをはじめる前に、だ」と深刻そうな表情で呟く出海奈。「なに…」息を飲む志田。


「どうやらこの学園が既に警察に目を付けられているらしい。」


 出海奈から発された言葉に、『えええええ⁉』とクラス中が声をあげる。


「あんなにうまくいったのに⁉」「強力なネットワークが張られているんじゃなかったのかよ!」


 驚きの声をあげる生徒たちに、出海奈は、「いや、もともと薄っすらとこの学園の事はバレてはいたんだ。だが政府が【陰謀論】と片付け事なきを得ていた。だがどういうわけか、お前ら新一年生が入学したタイミングで捜査を再びはじめたようだ。と、言うわけでお前らに報告がある。警察などを名乗る人物から事情聴取を受けても答えるな。知りません。わかりません。ここはただの進学校です。この一点張りで行け」と言った。


 増田は、「わかってるよ」と答える。


 鈴木も、「そりゃあ捕まりたくねぇし「腕を組みながら頷く。


 志田は、「はっや…」と警察の対応の速さに呆然とした。



「そして今日の授業についてだが、今日は昨日集めた名簿をもとに…」


 と出海奈が説明しかけている時、ガラガラガラッ、勢いよく扉が開く。


「一年一組!さッ、笹井のぞみ! 生徒会と交渉のもと、名簿五冊分入手しました!」


 と息を荒らしながら笹井が教室に入ってくる。


「五冊⁉」鈴木は急な追加分に驚愕する。


 星野も、「なんでいきなり⁉」と目を見開いた。


志田は「そもそもこの学校に生徒会とかいたの!?」と驚く。


 出海奈は、「すごいな…だが授業には間に合え」と笹井を評価する。


「はーッ…はーッ」白い息を吐く笹井。


 本田はスクールバックに入っているスマホが映す引き落とされた預金額が表示された銀行アプリを眺めた。


 出海奈は、「誰の指示だ」と笹井に訊ねるが、笹井は、「私がクラスのために自発的に行った事です」と答え着席する。


 出海奈は、「…そうか。今日から本格的に金銭を取り扱う騙し合いをはじめる。今日の座学では対話スキルなどを中心に学んでいく。詐欺に必要なのは技術ではない、対話と信頼だ」出海奈の言葉の後、生徒たちはマニュアルを手に取った。


 笹井はテレビとパソコンを用意し、スライドを立ち上げる。


 本田は笹井に流し目を向けた。


 笹井は小声で、「これでいいのよね」と本田に訊ねる。


 本田は、「嗚呼」とだけ静かに答えた。

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