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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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九話『乙女は負けない春の華』


「そこまでだ」出海奈が教室に戻ってくる。


 出海奈は、「今日の授業は終わりだ。収益分はこちらで計算し、明日教室前に収益合計と一人当たりの額が記載された紙を張り出す。まぁどのクラスも苦戦している中、よくやった。と言いたいところだが、現実はそう甘くない。プロの詐欺師は四時間もあれば一千万は稼ぐ。例えば生徒会なら…。言わないほうがいいか。序盤からお前らのやる気を削ぐのは良くないからな」と生徒たちに向けて言った。


「解散だ。明日も元気に登校するように。」と一組の生徒たちに言った後、教室から立ち去って行く出海奈。


 星野は、「はぁー♡疲れたぁ」と伸びをする。


「この後なんだけどさ静岡駅行く?」星野の誘いに、佐田が、「清水で良くねー?」と溜息を吐く。


「そろそろ何か買いに行かなきゃいけないからお買い物付き合ってよ」


 星野が佐田に顔を近づける。佐田は焦りながら、「はッ、ひゃい‼」と星野に答え、佐田は「じゃ、そういうわけだからじゃあなお前ら」とその場を後にした。


「あれ。茅野は」本田が鈴木に問うと、「あ、茅野の奴ならさっきどっか行ったぞ」と鈴木は教室の扉を指差して答えた。


 鈴木は、「なんだ。本田。お前は笹井が好きなんじゃなかったのか」と本田に顔を近づけにやにやする。が、本田は黙って席から離れ、スクールバッグを片手に持ちながら教室を出ていく。


 鈴木は、「なんだあいつ」とつまらなさそうな表情を浮かべた。


 教室には昼下がりの日差しが窓から差し込む。春の風に桜が舞い、教室内の棚に、半開きの窓から桜の花びらが迷い鳥のように入っていた。



 生徒会室では、楚々辺さくらのスマホにメールが届く。


 差出人は、匿名だ。本田がホームページを作っている様子の画像、夜に資料室で調べものをしている様子の映像。


 届いたそれらを見たさくらは、微笑む。


「本田湊くん、ですか。わたくしは彼が気になりますわ♡」


 さくらの足元では、男二人が札束で作られた扇子で風を仰ぐ。


「会長♡さすがお目が高い♡彼は今一番注目されている新入生と言っても過言じゃない男です!ですがさくら様、我々は一体何をさせられているのですか?」


 長谷部の問いに、さくらはハイヒールで長谷部の顔面を蹴りとばす。


「あら?生徒会に入れてこんな好待遇を受けられるのは誰のおかげかしら」


 とさくらが言うと、長谷部は、「さくら様ぁ…♡」と幸せそうな表情を浮かべる。


 一方で小太りのケンは、札束で作られた扇子でさくらの足元を仰ぎながら、「さくら様、今月の収益は十億を突破です、このお金でどんなお召し物を調達いたしましょうか、各ブランドのカタログも持ってきました。全てはさくら様のために」とさくらに言った。


「そうね…」と黒子が跪きながら差し出したカタログを読むさくら。


「そうね…どれもこれも一級品…ですが」さくらはすぐにカタログを閉じ、「何よりも欲しいのは、本田くんの心…ですわ♡」とスマホの画面を眺めながら、まるで心酔しきったような表情で言った。


 長谷部は、「さくら様、ま、まさか」とさくらの表情に動揺し、呂律が回らなくなる。


 ケンも、「なりませんさくら様!本田などのもとにお嫁に行かれては困ります、ここは間をとってわたくしと」

と言うが、今度はケンのもとにハイヒールの蹴りが飛ばされる。


「ふごぉ♡」幸せそうな反応を見せるケン。


「決めました。私は本田くんのもとへお嫁に行きます♡」


 さくらの急な宣言に、長谷部とケンは、


『えぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉』と声を合わせた。


その声は、生徒会室の外にも大きく響く。



 生徒会室を通りがかった緑のロングヘアの女子生徒が、


(なんだ…?)


 と心の中で呟きながら、ボーっと生徒会室を眺める。


 そこに本田もすれ違った。


 緑のロングヘアの女子生徒は、「お前」と本田に呼びかける。


 本田は背を向けたまま、「なんだ」と答えた。


 緑のロングヘアの女子生徒は、「知りたい事があるんだろう」と口角を上げながら本田に訊ねるが、本田は、「…」と女子生徒のほうを振り返る事も無く去って行った。


 歩き出す緑のロングヘアの女子生徒。


 女子生徒は校庭に出た後、桜の花びらを手に取って風の中に放つ。


「ふッ…お前が守ろうとし…壊そうとしたこの世界も、まだ綺麗じゃないか」


 靡く緑の髪を見た監視役の女性が、


「…探した。寮に帰るぞ。翠川」と緑のロングヘアの女子生徒を手招きする。


 翠川と呼ばれた女子生徒は、「はい」と頷きその場を校庭から生徒寮のほうへ歩いて行った。



 夕方。理事長室には、さくらの姿があった。


「お父様。」さくらは父親に一礼する。


「ぜひ、本田湊くんにお会いしたいのですが」


 娘の頼みに、楚々辺は、「お前もその男に目をつけていたか」とさくらを見て微笑む。


 さくらは、微笑む父を見て、「私はこの島で由緒正しき楚々辺家を継ぐ人材を見つけたい。入学した当初から、そう秘かに思っておりました。新入生の本田くんこそ、私の将来を約束する方に違いない。そうとは思いませんか?お父様」


 さくらの言葉を聞きながら、、本田の入学願書に目をやる楚々辺。


 楚々辺は、「ダメだ」と首を横に振った。


「どうして」と父に訴えるさくらに、楚々辺は、


「ヤツは戸籍も無ければ、家族がいるような情報も無い。唯一、彼の保護者を名乗る人物は苗字が違う。他の生徒とはわけが違う。味方にすれば強力だろうが、敵に回せば一番の脅威にもなりかねない。本田はいずれ我々学園を支配する者の敵になるかもしれない男だ。お前にはまだ時間が充分にある。考えなさい。わざわざリスクを冒す必要はない」


 父からの言葉に、さくらは、「あ…」と硬直した。


「わかり…ました」と一礼し理事長室から出ていくさくら。


 さくらは、「諦めきれませんわ…」と自分の掌を見つめた。

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