FILE85『不正を働く悪魔』
「フォーカード」「スリーカード」配布。交換後。
二人は同時にカードを出す。
カグヤは本田の顔をゆっくりと観察した。
「これで一勝…ふふふッ、あなたもまた、敗退した彼と同じように…私に負けて…仲間割れ‼」
後半を強い口調で、本田の精神を折るように言うカグヤ。
「お友達が好きですか?クラスを守りたいですか、あなたはこの学園で何を見出し何を成し遂げ何を学びますか?八千万の神々は全て私の味方ッ!あなたに味方する神様などいない…!」
こけし顔の女は、舐め腐るように目を見開き、本田を煽り散らかす。
(好奇心から対戦相手を選んでしまったが…悪手だったか)
目線が泳ぎ、カードばかりに触れて手を震わせる本田を、カグヤは眺める。
「先程までの探偵のようなまなざしはどうされました?呼吸の温度も乱れ気味‼手も震えてますよ?どうされましたかあああ⁉」
全ての状況を言葉に変換されては、本田は余裕を失ったように、唇を噛む。
(まだ一勝を奪われただけだ)
目をカードばかりに向けつつ、二枚それを捨てて交換する。
「聞きたい事があるんですけど……」それでも本田は、情報収集を最優先としカグヤに目を合わせながら問いかける。
カグヤは、「何でしょう」と薄ら笑みを浮かべた。………三枚カードを交換するようだ。
「三年生が何をしているかご存知でしょうか」笹井が一番気にしているであろう情報を、カグヤに訪ねた。
カグヤは、妖美に「ええ♡」と微笑んで頷く。
本田の瞳が動く。
「この学園の三年生は二年生で得た運営権を破棄。その上で【詐欺】は座学の中心に無く、教室で独立して実践を行われているようです。後は【職業訓練】ここの島のコンビニの店員やⅮ棟の商店も担当されているとか…。それにやっぱり三年間この学園を生き残った皆さんは資産がかなりある方たちばかりなので【賭け事】に熱中される方は多いですね…後は三年になると【お祈り当番】が夜中にありますわよ」
カグヤの説明に、「…お祈り当番」と呟く本田。
「ええ…私の知人である先輩が一番苦労されていましたわ」
知人の先輩と言う単語を聞き、本田は「苗字…渡邉…だったり…します…?」と問いかける。
カグヤは、ふッ、と笑った後で、「ひょっとして。彼女をご存じで?」と本田の表情を見るが、本田は「いや…俺…の…友だ…ちが知り合いで」と笹井の顔を浮かべながらあれを友達と表現していいのか悩みつつ答える。
カグヤは驚きの感情で「まあ」と僅かに目を開いた後で、「彼女は三年のクラス委員をされ、直前まで【元気に】姿を見せていましたわ。それも…あなたたちが入学する初日ごろまでは。あなたたち一年生の入学の前、始業式の日には私にも最後の連絡が入っています。他の先輩方も特段彼女にトラブルは無かったとお話されていました」と貴重な情報を提供する。
「失踪…ですか」
「義務である処刑報告は少なからず聞いていません。担任の報告義務は基本【同学年まで】なので当然ではありますが先輩方も渡邉さんが亡くなられたのなら何かしら反応はされるでしょうし。無いって事は彼らも本当にわかっていないんでしょう」
本田はカグヤの言葉を聞きつつ、(四月に失踪。連絡無いまま二ヶ月…。脱走なら処刑だろうし…見逃されるはずはないだろう…笹井のいう渡邉って先輩は裏階級が高く何処かで保護でもされてるのか)と考えるが、(いや…希望的観測が過ぎる、この学園の事だ…だが…なんでそんな極秘裏にやる必要…)カグヤが目でこちらに合図を取ってきたので、「ストレート」「ツーペア」ほぼ同じタイミングでカードを場に出した。
またしてもカグヤの強い役だ。
タイマーの時間がどんどん減って行く。
二勝、ゼロ敗。本田はカードの角を触る。
若干厚い。「…火野先輩」本田が静かに彼女の名を呼べば、カグヤは「なんでしょう?」と首を傾げた。
「…古典的なやり方ですね」本田が呟けば、ディーラーがチラッとカグヤを見る。本田はトランプに貼られたシールをディーラーが見ている前でペリペリ、と剥がした。
カグヤは目を充血させながら見開く。
「カードにシールをトランプの上から貼り。わざと工作して相手を確実に負けさせる。見損ないますよ、この学園で二年も座学を受けて率先して出海奈先生を【不信任】で降ろしたあなたがまさに信用ならない手口でこうやって後輩をハメようとするんですから…俺はあの時、手が震えていたんじゃない…カードの角を確認していたんだ、それで気づきました…ひょっとして、さっきの増田との試合も」
本田がカグヤの不正を見抜き問い詰めては、カグヤは立ち上がり、「なに⁉」と怒鳴る。
その大声に、会場の視線が集まった。
「こんな汚い手を使う人間は…やはり…生徒会長にならなくて良かったと思いますよ」
本田の最後の一言に、カグヤが逆上し、「このッ…!」と彼の首を絞めようと手を伸ばす。
だがインカムを付けた監視役が割り込み、「ダメです」とカグヤを制止した。
反射的に仰け反りながら「…」と突然の暴力に困惑する本田。
「ふざけないでよ‼この私が不正⁉こんなに真っ当に生きて来た私が‼有り得ない‼こんなみすぼらしい一年を前に不正なんかで勝つはず無いでしょう⁉」
大暴れをしながら他の監視役らに押さえられるカグヤを、本田はボーっと見つめる。
「確認します」監視役は他の本田のカードもシールをはがす。
「確かにシールです」監視役はシールをもう一人の監視役の女に渡した。
「…三千万」本田は静かにカグヤに額を請求する。カグヤは「わたくし…わたくしはッ‼無実です‼」と訴え続けるが、本人に有無を言わせないままにディーラーがカグヤの代わりに数字を入力してしまう。
「嫌ッ‼いやよ!だれが、、誰がこんなクソガキに‼ド陰のクソ野郎に、三千万なんて高額、私…シールなんて‼死ね本田ああああああああああああ‼」
絶叫しながらカグヤは会場の外に連れ出され、監視役に背中を強く蹴られる。
本田はタイマーを止めた。
扉の向こうで未だに本田への罵声をあげ続けるカグヤの声を聞いていては、「邪魔」と敗退した二年生の女子に肩をぶつけられ後ろに転ぶが、近くにいた笹井が二年の女子の腕を掴みつつ、「どう見ても今のはあなたが前見てなかったからですよ」と二年生を睨んだ。
「ッチ…」二年生の女子は黙って去って行く。
「あなたも災難ね」笹井にジト目を向けられつつ、「ほら、立ちなさいよ」と手を差し伸べられる。
本田はその手を取って立ちあがり、「…ありがと」とそっぽを向きながら素直に例を言う。
その恥じらいもあるような普段なかなか見せない本田の表情に笹井も「え、ぁ」と動揺しつつ。
「助けたわけじゃないから‼」と満更でもなさそうに赤面して次の二年を探しに行く。
「おー…」
ただ純粋に間抜けなところを見られたので恥じらっていた本田と、割と彼に対して本気そうな笹井だった…。




