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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編 六月

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84/111

FILE84『不信感を抱いた姫君』

木部と本田の席の隣にあるタイマーは後、十五秒。



「ツーぺア」



「フォーカード」




本田が、最後に決める。



同時に、タイマーがピピピピピピピピ‼と鳴った。



一試合の終了の知らせ。




木部は「おま…ウソだ…これは罠だ‼こいつ‼何かの不正をしてやが…」と大声で叫びながら立ち上がって詰め寄り、本田を悪者にしようと企むが、「あ、すみません…」と謝りながら喧嘩か何かで鍛え上げられたであろう右ストレートをさりげなく避けられ、「⁉」と目を見開く。




「…どうして俺のこの負けなしの拳を避けられる貴様‼」と木部に騒がれるが、本田は「…」と棒立ちしつつ、「…いや…単に、当たってないんですよ。純粋に…俺止まってますよ、?殴ればいいじゃないですか…ほら、やれよ」と最後は木部にだけ聞こえるように声を低くしつつ、煽ってみせる。



木部が上を見上げれば、あくまで、きょとん、とした顔だ。



無心?違う。優越感すら感じている?



いや、本田のことだ。



素直に憐れんでいるのだろう。



相手が何を言っているかわからないと言わんばかりの視線。



だが、木部は泣き崩れるように床に姿勢を崩す。「…何万 何万だ オイ」木部の問いに、本田は「…」と目を逸らした後で、「五百五十万」と答える。




木部は「他の連中もっと」と言うが、「無いんですよね、手持ち」と本田は木部を見下ろしながら答える。



「別に俺ない所から取る気ないですよ。俺が先輩に【今いくら持ってるか】聞いた時、あなたは金額を答えるんじゃなくて俺にゲームに集中しろと怒ってきた。それってあんまり持ち合わせが無かったからそうやって言ってきたんですよね、わかりますよ。だから三桁で良いです。あれ。ひょっとして三桁も厳しいですか。二年なのに」




煽り混じりの容赦ない一言に、木部は「一千万だ」とプライドが許さなかったのか、強がって支払い額をあげる。



多少無理しながらもタブレットに額を入力する木部。


「ありがとうございます。」と少し申し訳なさそうに会釈をしてスッと他の男子生徒のように興奮するわけでも無く静かに席を離れる本田。



二年生を探す盛田がパタパタと安心したような表情で「本田くん‼」と手を振る。



「三千万ッ、三千万ですよ、‼」とスマホを見せながらニコニコ微笑む。



本田は「で」と少々冷たい。



盛田は眼鏡にパキ…とヒビが入るように固まりつつ、「今のところ利益が上回ってます」と報告する。



「ですが…一方で志田さん以外の負けは二人。二人は志田さんに」



「…クラスの大半は《Ⅹ》支持者か」盛田と本田はまだ試合中の一組のメンバーを見る。


「あれ二人?また一人だれか」と違和感を覚える本田に、盛田は「増田くんです」と増田が戦っていた席に座っている巫女服姿の二年生を眺める。


「火野、カグヤ先輩。私も先ほど聞いた事ですが現在ほぼすべての神社の運営に介入している由緒正しき家系の生徒です。言わば、神道の名家。彼女自身も神奈川県相模原市に位置する火野村神社の巫女さんのようです。億万長者で目を付けられてますが、あの堅物で頭脳派な増田くんが敗退するくらいですから…何か。何かあるのでしょう」



盛田の会話を聞きながら、制服の右のポケットを気にする本田。



「さっきからあの…ズボン気にされてますが」



盛田はその仕草に気づき、首を傾げる。本田は「ああ…今日スマホ…バッグの中忘れて来たみたいで」と不安そうに呟く。



「そういう事ですか、本当にあの、火野さんみたいに不正疑惑でないように怪しまれる事あまりしないほうがいいですよ」



その忠告に、本田は「不正って…俺はいつだって正攻法だよ」と不機嫌そうに答えつつ、好奇心からか、「危険です!」と手を伸ばす盛田の制止を聞かずに火野の正面に座ってしまう。



伸ばす手を下げては、「本田くん…」と俯き、そのまま次の二年生を探す盛田。



「あら、私とお手合わせしたいと?」カグヤは本田を見つめる。彼の強いオーラを感じ取っているのか、何処か機嫌良さそうに。



「うふふ…諦めるなら今のうち」カグヤが綺麗な声、優雅な喋り方で言葉をかけては、本田は「諦め?俺は諦めたりしませんよ…」と瞳孔を真っ直ぐ輝かせながら頷いた。


本田の目の光が、カグヤを捉える。



「いくら私が億万長者と言えど、手加減はして頂きたいものです。厄介な相手は苦手ですから」



カグヤはそう言うと、「でも…あなたも。私にこれから負ける運命を背負うだなんて、哀れなお方。本来は私が生徒会長…でしたのよ」と悔しさを交えながら吐き捨てる。



「詳しく、お伺いしましょうか」本田はカグヤの一言に興味を持った。



「一年全クラス生徒投票では私が一位でした。私が生徒会長になれる。そう信じていたんです。なのに!!さくら様はどちらかと言うと詐欺は無能、今ほど贅沢な人間でも無くどちらか言えば黒のショートカットで黒淵メガネで一言も話すらされないようなお方!なのでまさか…まさかさくら様が生徒会長になるとは私…あまりにも…!ですが彼女は理事長の娘…。どういうことか私が生徒会長になると決まっていた三月末!私は軽やかに生徒会室に向かいましたわ。あの椅子に座れると!そこにいたのは、私よりも美貌を放ち、イメージがガラッと変わったさくら様…」



カグヤの辛い胸の内を聞いた本田は、「そうですか…。じゃあ…本当に急な話だったんですか」と机の山札のカードを見ながら目をパチパチさせて驚く。



「…だから私はそのさくら様をも利用して、最終日の授業終わり。担任だった教師を下ろしました。二年生が全会一致の場合に持つ【運営権】を使って。《理事長が決める場合の説明不足》に対する不信任決議案です。あと二年間もその担任の指示を仰ぐだなんて到底不可能ですから。」



カグヤの説明に、本田は「…その担任の名前。教えてくれませんか」と問いかける。カグヤは「…出海奈」と恨みを込めたような言い方で教える。



「え…」



戸惑う本田の反応を見つつカグヤは「そうですよね、無理もありません。だってその彼女のクラスですものね?一年一組は。」と続ける。



「ディーラー」カグヤはディーラーを呼んだ。


ディーラーは「はい」と頷く。



「はじめましょう」



バチバチと滾るようなカグヤの目が、本田の目に向けられた。


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