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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編 六月

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83/111

FILE83『死の決闘は圧巻の…』

「本田」木部に呼ばれた本田は顔をあげないまま「なんですか」と答える。「去年の競技祭で何があったか聞きたいか」「いいんですか、聞いても」ぴく、と本田が耳を動かし興味を示せば、木部は頷く。



「去年の俺たちのクラスはこの祭りで大量の借金を抱えた。一人で一千万なんて借金を背負った奴もいる。全員から押しつけられたのさ。それに一度負けた人間は競技祭に参加できず観客席に回される。さて、結果どうなったと思う⁉」木部の迫真っぷりに本田は「えーっと」と圧倒される、




「…賭け狂いになったんだよ!カジノ、カジノ、カジノ、毎日放課後競技券を買って、買って、買い漁って!詐欺よりも賭けに命をかけて結果!処刑されっちまったのさ、学園裁判じゃない…【学級裁判】にかけられてな!」という一言に、「学級裁判?聞いた事ありませんけど」と首を傾げる本田。


「出来るんだよ、学園裁判は生徒会長を巻き込む、学級裁判より重い措置。学級裁判はクラス委員独自で決められるクラスの処刑会…。そりゃあ、額稼がなきゃ投票処刑システムはあるんだし先公もベラベラベラベラ喋らねえさ。だがクラス委員ってのは【特権】を使い放題、クラスの規則を変える、なんてのも自由な立場だ。一年は知らねえのも当然だがクラス委員に逆らう事はお前らが思うより重いんだ。」



木部からの情報に、本田は「…」と目を逸らす。



「ツーペア」「スリーカード」木部は「はあ」と片手を伸ばし呆れるようなポーズを取りながら溜息を吐く。



「運がいいガキめ」 



「木部先輩…」本田は何かを思ったのか、「今いくら持ってますか」と問いかける。



木部は「ゲームに集中しろよ、クソガキ」と片眉をピクピク動かしながら遮った。



「…」本田は瞬きをする。



ディーラーが更なるカードを配った。



木部は次の手札も交換する。



本田もその後に続く。ゲームが進んで暫くしては、タイマーの音が早くなる。同時に、追い込まれている一年の一人が、「リタイアするわ!」と立ち上がる。



そして二年の男子生徒が、「そんなのアリかよ‼」と一年の女子生徒に掴みかかる。



「なんの騒ぎだ」とそっちに気を取られる木部と本田。


「リタイアしちゃダメなんて言われてないでしょう‼どうなのよ生徒会‼」



舞台に置かれたテーブルで紅茶を飲むさくらに怒号をあげる四組の…。本田は彼女の顔を見て(あ…)と以前、新入生歓迎会前にピアノを演奏していた少女を思い出す。




(あの時は前髪でよく見えなかったがこの子か)ボーっとする本田。



木部は「気にせず続けるか」と正面のパッとしない男と顔を合わせた。



さくらに詰め寄る一年四組の女子生徒だったが、「あなたは、負けです」と見下ろされながらはっきり言われ、不燃焼のまま同じクラスの身内から借金を負わせる生徒を選ぶ運命を課される。



「結局こうなの…?これなら…試合を…もう一度」



一年四組の女子生徒はさくらに懇願するが、さくらは汚いものを見るような目で四組の彼女を見つつ、「出来るわけないでしょう。それとこの私にこんな公の場で詰め寄ったのです。手までかけようとした。然るべき対処は取らせていただきますね」とはっきり告げた。



四組の女子生徒はその場で泣き崩れるように体勢を崩し、監視役にカジノの外の扉まで追放される。四組の女子生徒の券を買っていたのか、観客のゴスロリ姿の一人の女が立ち上がり、「クッソがよ!」と言いながらブーツで券を踏みつけ帰って行く。




その様子を、一番出入口に近い席で戦っていた二年生と試合中の前髪で重たく顔を隠した暗い女子生徒が「…」と眺めていた。



数十分後、「ふはははははははは‼二、三回とゲームが続けばさすがにお前も焦りが出てくるだろ?俺だって序盤は負けたかねえんだ!だから弱そうなお前を選んだ、なのになぜ勝つ、勝ち続ける、俺は楽しくなってきたぜ」追い詰められているのを隠すためか馬鹿笑いする木部に、本田は「…そうですか…良かったですね」とカードに視線を向けながら呟く。




「お前が負ければ俺はお前のオトモダチから数千万以上ふんだくることが出来る、お前は敗退だ、どーする坊主」




得意げに笑う木部に、本田は「…」と目を逸らした。




至る場所から試合終了のタイマーがボチボチ聞こえてくる。




「きゃああああああ‼」顔を両手で覆いながら泣き出す志田。




「ッ、ッ…」初日で負けたショックからだろうか。志田の絶叫に視線が集まる。





だが、「ふッ」席がかなり近い本田の表情は…笑み?




「オトモダチの負け様を見て笑うたァ、お前結構性格悪いんじゃねえか」




木部が本田の表情を見て言っては、本田は「先輩…お言葉ですが…人に言える口でしょうか」とはっきり言い返した。



「なッ、こいつッ!まずは礼儀ってモンから教えねえと」




本田の思うまま挑発されてしまう木部。




志田は泣き出しながら手元のタブレットで《Ⅹ》から今朝メールが来た通りに、クラス委員のどちらか。を悩み本田に支払い先のチェックマークを入れる。




志田と戦っていたピンクのポニーテールを高い位置で結び赤いリボンを付けた先輩は、「バァーカ、調子乗って全交換なんてするからそうなるのよッ!二千五百万、払えるわよねえ?あなたのオ・ト・モ・ダ・チ♡」とゲラゲラ笑いながら志田の背中をブーツで踏みつける。




その様子を見ていた星野は止めに入りたいが入れず、「くッ…」と歯を食いしばって集中力を欠いていた。




それを観察していた星野の対戦相手である王子様系の男子生徒に、「ほら、焦っちゃだめだよ?僕はこんなにも真摯に対応しているんだから。煽りもせず、追い詰めもせず、イカサマもせず、ね」と余裕そうな声色で言われ、「わかってるわよ」と少々気分を下げる。



ピピピピピ…。タイマーが鳴った。



負けていく一組の生徒たち。




一方で一組の生徒の中には《シャオラアアアアアアア!》と勝利の咆哮をあげる者もいた。鈴木だ…。



飛鳥も「我…我…我が…勝った!!百代目魔王・ヒラガ・アスカ‼五千万…獲ったどおおおおおおおおお!」と夢のような金額に大興奮。




飛鳥に負けた先輩は相当悔しかったのか、足早に走り去って行く。



負けたであろう茅野は下を向いて髪の毛を垂らしながら、「ごめんなさい…ごめんなさい…」と罪悪感に駆られ謝り続ける。



その後、指で志田にチェックマークを入れた。







(志田ちゃんに優しくする自分…志田ちゃんに優しくする自分…私はもういじめっ子なんて辞めるの!)



一方、相手とは、一勝差。ギリギリで出たカードは…【フルハウス】。



そんな星野は瞳を揺らす。



(志田ちゃんを…助けに行けない)




同時に星野もタイマーが鳴る。



対戦相手だった王子系の二年生は両手を広げながら首を横に振り、「ツイてないな、僕も」と呟いた後で、「いくらをご所望かな」と問いかける。




星野は小声で、「八千万…」と強気な金額を命令する。




男子生徒は目をバッキバキに開き豹変した。




「そ、そんな額!!僕一人で⁉さすがの二年生でも‼やめろ、やめろ、払えるはずがない‼こんなブスの小娘に‼はっせ…八千万など、認めない‼認めな―――――‼」




王子様系の男子生徒はみっともなくギャアギャア星野を罵りながら騒ぎ、監視役に捕まりながら連れて行かれるが、星野は、キュッと拳を握った。



(こんな賭けよりも早く、志田ちゃんの傍に行きたい)




一年一組の教室で、学生証アプリを見ながら下を向く志田。




自分に請求が入っている。期限は、今の二年が三年になり、卒業するまで。




茅野が戻って来ては、「ねえ…私に入れたの…茅野さん」と志田は震え声で問いかける。




茅野は「…私は」とウソを吐こうとするが、志田は「ううん、」と首を横に振った。



「私の推測ではそれが…最適解…でも…そんな回りくどい事するなら《Ⅹ》もさ」




志田は片目の涙を拭いながら、「いっそ本当に…私を悪者にしたままで良かったのに」と微笑んだ。


志田は状況を知らない。たまたま茅野が選んでしまった可能性さえ、充分にある。だが志田は記録表の真犯人も、クラスで謎の存在《Ⅹ》が工作をしている事も、全部…知っている。




「私…私が借金を背負う事よりッ…」と声を震わせた後で、茅野に抱き着き静かに泣き出した。




茅野は、「し、志田さん…⁉」と驚きつつも、その背中を優しく摩る。




茅野は、「ねえ志田さん?」と志田を宥めた後で、「それって…《Ⅹ》の言う記録表に悪口書いた犯人が、ウソって事だよね」と首を傾げる。




志田は目を見開き、「…か…や…の…さ…ん?」と声を震わせた。




「…真犯人の件 何人が知ってたの」志田から情報を聞き出そうとする茅野。




志田は「…言わないよ」と黙った。



「ごめん、脅かしちゃったかも」「ううん、大丈夫」



本来の授業時間が終わるまで、志田と一緒に教室で待機する茅野。



(…一番最初に抜けて教室の空白の時間を監視する。これが理事長からの指示…私が優先すべきは競技よりも…【任務】)


茅野は静かに、教室のホワイトボードだけを眺めた。

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