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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編 六月

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79/111

FILE79『見世物の馬たち』

志田本人には何も知らされないまま、淡々と冷たい日々が過ぎて。六月一日。競技祭の最初の日がやってきてしまった。



だが、朝日や榎本、福川は違う。そんな中でも志田に少しでも話しかけに行き、段々と朝日と志田の関係も改善して行っていた。




「ねえ。なんで最近みんな私にこんなに冷たいの」志田の問いに朝日は、「まだなんか《Ⅹ》とか変な事で疑ってるのかな。私が犯人って割れてたのに」と言いながらも、「ごめんね朝日さんたち」と独占欲を星野に剝き出しにされては、「あ」と気まずそうにしつつも、「またあとでねー」と手を振りながらジャージ姿でグラウンドに向かう。





「~♪」鼻歌を歌いながら準備運動をする笹井の頬に、「ほら」と本田が缶コーラをピトっとくっつける。片手には自分の分も持って。




「まさか。競技祭なのにこれからマラソンをやらされるなんて思ってもいなかったわ。知ってたら教えなさいよ」なんだかんだ言いつつ缶コーラを受け取り、ベンチに座ってプシュッと音を立てながら開ける。本田もその隣に座り、缶を開けてはコーラを飲んでグーッと伸びをした。





「ねえこの【競技祭】。勝てたら六月かなりの収益が見込めない?」笹井はそう言うと、「まあ、《Ⅹ》の作戦に賛同は出来ないけど。もう過半数はそうするでしょうね」と補足する。




「なあ。その《Ⅹ》の目論見ってなんだと思う」本田の問いで、笹井は「…」と顎に手を当てながら考える。「志田さんが真犯人って事を早めに公表して支払い役の票数を誘導する事じゃないかしら。今日までこっちでは一組のメンバー主体にして作戦らしい作戦は何も定めてない分読めないけれど」笹井の考えに、「票数を一人に集めて何を狙ってるんだろうな」とこちらも思考するような仕草を見せる本田。




「《敵》を作る事でクラスの矛先を全員彼女に向けるとか?」「こっわ」笹井の意図は合っていないもののそれっぽい返事に、若干引いたように仰け反る目の前の《Ⅹ》本人。




「学園裁判。本物が処刑出来たらいいわね」と腕を組みながら言う笹井。本田も「…そーだな」と乾いた笑みを混ぜながら答える。




「あら…明らかに部外者っぽい人が闘技場、向かっていくわね」笹井がそう言うと、本田は「ぁ…?」と不思議そうに反応しながらも、その部外者たちを観察する。



「なるほど。だからこれから身体検査を毎日しなきゃなんねえのか」にやりと笑う本田に、笹井は「どういうことか教えなさい」とジト目を向ける。




本田はラインカーを用意しながら、「身体検査なんか普通いらないのに、競技祭開催中は毎日やんなきゃならないの、なんでかなーとは思ってたんだけど。部外者のオッサンや姉ちゃんたちが揃いも揃って新聞紙を楽しそうに読んでいるって事は…。そいつらも俺たちと同じように【一種の賭け】をやりに来たんだろう。てかそもそも出海奈先生。〈近々会員様〉が来るって競技祭に言及する前になんか嬉しそうに語ってたし。」と簡易的に説明するが、笹井が「もう一種の賭け?」と眉をピクピク動かす。




「笹井は鈍いなー…。例えるなら。【競馬】だよ。【競馬】。多分あの新聞にもう、生徒の裏階級や今までの授業態度なんかが書いてあるんだ。そこがまず一つの基準。んで、闘技場の中にモニターがあって、計測が終わるごとに全部のステータスが発表されるんじゃないか。まあ憶測だが。」




「今朝監視役にスリーサイズ測られて尿検査も出させられたのってまさか…全部公表され…」




本田の話を聞き、片手で口を押えながらショックを受ける笹井に、「お前スリーサイズバレたとこで胸も尻も全部貧相で何も無」と本田は言いかけるが、ガッと思い切り靴を踏まれ両手をバタバタ動かしながら「ってぇ…」とバランスを崩し、笹井の身体の方に倒れ掛かる。




「ちょやめ」笹井が突き飛ばすも、布田に「ちょお、早くついてしもった…?」と思い切り抱きしめあっているかのような瞬間を見られる。




後ろにいた鈴木にも、「笹井…本田…お前ら…」と指をさされてしまう。




「え」何にも気にしていなさそうな本田と、メラメラと負の炎を燃やし目を怒りのマークに変化させていく笹井。




「布田くん!なんでもいい!この男に教育してやって!」




布田に本田をドンッ、と差し出し、自分はラインカーで線を引きにバタバタ何処かへ消えてしまう。




「本田お前なんか笹井に言ったん」



「あースリーサイズ測らされたの公開されるか笹井が気にしてたから…お前べつに胸も尻も全部貧相だろって」



本田がポカーンとした顔で経緯を説明しては、布田と鈴木が「さっすがに笹井に同情する」「それは紳士とちゃうわ」とドン引きしたような表情を見せる。


「こういう時はな…」布田がコソコソと耳打ちしては、「なるほど…」と本田は何かを納得しつつ、一周してきた笹井の肩にポン、と手を触れ「さっきは悪かった笹井。俺、お前の身体で興奮出来る」とドヤ顔で布田に言われた通りのフォローを素直に入れる。



その後笹井は本田の背中に長い足で蹴りを入れ、制裁。


「がはッ…」砂を拝む本田と、「お前おもしろすぎ」「まっさか、まさかあの本田が…」と後ろを向いて笑いを堪える鈴木と布田。



「本田にキャラじゃない事やらせるん楽しすぎる」あまりに布田と鈴木が笑うせいか本田は目を「…」と丸くしつつ、「恥かいたわ…」とだけショボーンとした顔で呟いた。




本田が出海奈のためにメガホンやらを用意していれば、続々と一組の生徒らと、校庭の後ろには二年一組の生徒らが集まった。


『整列―――!』そのメガホンを取った出海奈が呼びかけると『オァイ!』と雄叫びのような掛け声で一組の生徒たちが応えながら中央に集まって行くのだった。





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