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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期 五月

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78/111

FILE78『人工異能の順序』

《 ブーッ、ブーッ、ブーッ―――――! 》 タイミングよく。それとも悪くか。鈴木のもとに《Ⅹ》からメッセージが届いた。




「…ウソつけよ⁉」そのメールに記載された一言に、鈴木は目を見開く。





《 真犯人は…【志田】 》志田本人以外の全てのメールに、そのタイトルが刻まれていた。




「…あいつ中心に悪口を言われてたんじゃ」と鈴木は送られてきた映像をタップするが、確かに、早朝にパソコンを開いている教卓からのアングルの映像が届いていた。




志田本人と一緒にいた星野にもメールは届き、その表情の変化に、志田が首を傾げる。「どうしたの?」キョトンとした志田の顔。




星野はスマホを握りしめながら、「ううん、なんでもない」と答える。最近ずっと暗かった星野にしては、何処か嬉しそうな顔だ。




「…いや…ちょっと、すごいなって」星野はそう言うと、「志田ちゃん、これから何があってもずっと…ずっと私が志田ちゃんの味方‼」と興奮気味に笑う。




そして星野に詰められ手を取られた志田は、「えッ、ちょ」と頬を赤らめつつ、「嬉しい、嬉しいけど何も理解できないよー…」と棒のような目になり涙を流しながら混乱する。




「メール、そんな良い内容だった?」「うん。ちょっと絶望しかけてたんだけどね…神様っているんだな…って」何かを勘違いしているのか、そうやって意味深な事を言う星野に、志田は「よ、よかった…の?」とだけついていけない様子で相槌を打つ。




《Ⅹ》から来たメール。




自分の仕業が全て《志田》として加工されている映像に、星野は胸中で(誰が《Ⅹ》かわかっちゃったなー…♡でも、私有利にしてくれるなんて…思わなかった♡)と呟く。




オルゴールの音が鳴っては、「星野ちゃんお風呂湧いたよー?先入る?」と志田がタオルを用意しながら問いかける。星野は「いいの?ごめんね?」なんてそのタオルを受け取りつつ、入学の際に持ってきたボストンバッグから風呂上がりに着るルームウェアを取り出す。




暫くして星野が浴びるシャワーの音が聞こえる中で、志田は、(何、さっきの星野ちゃん)とその変化の理由を考え込む。





男子生徒寮の一室では、一通りメール作業を終えた本田が額に腕を乗せ椅子の背凭れに凭れかかりながら、「クッ…」電気も付けない暗い部屋で泣いているようだった。「…」自分がやっている事に耐え切れないのだ。



(普通なら…星野を犯人にすればいい。でも。AI生成で星野の動画を志田の動画に変換することで…星野自身に自分が志田を傷つけながら志田が自分を信頼する事の重さをわかって貰うために…星野が志田に優しくするきっかけを作りつつ、制裁を加えるやり方を…思いついた…から踏み出したんだが)本田は自分で必死に理由を作って正当化しつつ。「…もうやめたい」と多少疲れたような声で呟く。




(誰よりも酷い事をしているのは…俺…)本田は私服のフードを深く被り。自分のデスクに顔を乗せた。




競技祭を前にして。それぞれが、それぞれの動きを深める一組のメンバー。




彼らを統率するリーダー・笹井は《Ⅹ》から来たメールに「…」と瞳を揺らす。



「志田…さん…?」こうなると目的が一切わからなくなってしまった。AI生成らしいカクツキや画質の悪さも無く、笹井は最初から最後まで何回も映像を繰り返す。



AIがミスしがちなパソコンの細かい描写はどうだろうか?



文字まで、文字まで正確だ…。



笹井は明らかに辛そうな顔を浮かべる。



(こんなところで折れる事なんてできない、ケイ――――!)


Ⅽ棟。一般の立ち入り許可が無い三年生の体育館では、黒一色のマントに身を包んだ彼らが、夜な夜な八咫鏡のモチーフに向かって、何かを集団で歌っていた。



両手を広げる、救済の女神の彫刻。首を吊るされる、男子生徒。これは…三年なりの、処刑の時間…。




三年の男子生徒は既に息絶えていたが《暴徒にはさせられていない》。針や短刀で串刺しにされていた。



三年生の一人が聖書のようだが、黒い表紙に【人工異能書】と書かれた書物を片手に持っている。



「いけないのです…人工異能を《暴徒》になる前に覚醒させては」


「順序がそもそも違うからね」「でも。これ。いつまで続けるの…?私たち。」


「生き残りはこれだけ…」


「…他クラスとの合併もありつつ…1クラス大体十人」


処刑を終え、ザワザワとマントのフードを取って不安げに話す三年生たち。処刑された男子生徒と同級生だった男子生徒は、床に手を突いてひたすら涙を流す。



「…救い…これが救い…?何人死んで…ここま…」だが周りは男子生徒の言葉を聞きながら俯いて、黙っているばかりだ。


「…光道教…を…信じろッ、‼」



もう一人の男子生徒が床に涙を零す彼の手を引っ張る。



「光道教は…いつか俺たちを必ず救う」



「私たちは光道教の使者…神は、救済の女神様は私たちを見逃さないでいてくれる…‼」



三年生らが狂気的に励まし合っている中で、体育館の扉を「…」と見つめるもう一人の黒マント姿でおさげを赤いリボンで止めた黒髪の少女の姿が。




だが、Ⅽ棟の様子を見に来ていた死神のヒビキが、「何してるの?」と微笑みかけては、少女は「ううん、ただの覗き。」と続けヒビキの傍についていく。


「ごめんね、ヒビキちゃん。あいつのせいでこんな場所まで」



おさげで赤リボンの少女がヒビキに並びながら言うと、ヒビキは「ううん、平気。こっちこそごめん、勝手に邪魔しちゃうような真似しちゃって」と答えながら、Ⅽ棟の教会のような廊下を歩き、二人でスッと姿を消した。



体育館にいた桃色髪の女子生徒が黒マントのフードをバサッと取り、「めがみ…さま?」なんて呟くが、「え?女神様の姿が見えたの」と隣にいた友人に言われてしまう。



「ううん…だと…いいなって」三年生たちは処刑にかけた男子生徒の身体を棺に入れ、その洋風の棺に八咫鏡のレプリカを入れる。



「…今回は事故だったわね…まさか暴徒になる前の健康な人間が…【異能】を覚醒しちゃうだなんて」



「でも、薬学の進化って考えれば」




並びながら三年生が帰って行けば、遅れて監視役らが空になった体育館に辿り着き、静かに棺を運んで行った。



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