FILE77『布田は〇〇!???』
『プリップ~♪』『オープン!』 『リバース!』
『よーく回転させて~!正義に決めるよ!』
『1・1・0!』
『聖なる一筋のシューティングスター!ティアキングダムスター♡』
『正義と…情熱で包み込んで差し上げます!』
サブスクでアニメを視聴し、テレビに釘付けになる佐田と飛鳥。
「おおおおおおお!」
「ティアスターさまああああああ!」
「ほらほらそこもう一回再生しろって!」
大興奮しながらカチャカチャとリモコンを触る二人。
『きらめーくー。正義のまばたきー私たちー乙女ティア戦士ィー♪ショーウィンドウショーウィンドウ開けば♪変身♪変身♪ティアキュア!キングダムビート♪キングダムビート♪ティアキュアー♪あー』
肩を組み揺れながら高校生二人が日曜朝に以前やっていたシリーズの作品を眺める。
「…良い…!」「良い…!」
佐田と飛鳥が交互に同じ反応を見せた。
そんな事をしていればあっという間に十八時ほどになり、二年の先輩がワゴンに学食を乗せながら「佐田遥くんーごはんBセット…あ、飛鳥平賀くん…Aセット!お届けでーす」と冷凍弁当を渡しに来る。
佐田は「ありがとうございます!!」と受け取り、先輩に気さくに手を振った後で、「ほらほら飛鳥!飯だってよ!」と飛鳥を手招きする。
「おおお!」いちいちリアクションのでかい二人。
『すべての悪意はこの私、ティアキングダムスターが許しませんわ!』
ティアキュアがテレビの中で戦っているのを横目に、二人はレンジに弁当を温める為に動く。
「おしぼり!」と飛鳥は机を拭いて貰ったおしぼりを二人分配置する。
『私の行動を悪意と片付けるか!このべらぼうめええええええ!!』
敵とティアキュアの会話を聞きつつ、電子ケトルがサーッ!と沸騰した音を知らせては。
「さていつもの如く味噌汁を寄越せ我が四神の最高位黄竜よ!」と飛鳥がノリノリでポーズを決める。
佐田も、「この佐田遥!魔王様のご期待には全力で!」と胸に拳を当てて忠誠を誓うようなポーズで応えた。
それでも出すのは和風の味噌汁というなんともまあミスマッチな光景だ…。
ジュボボボボ…。
器に熱湯が入る音と同時にほわ~と湯気が上がる。
「ジャパニーズ…禅…」飛鳥は嬉しそうに湯気を嗅ぐような角度で顔をあげる。
佐田も、「ジャパニーズ…ホカホカ…」と主食が質素な冷食であまりおいしそうでは無い見た目だが、本人たちはそれさえも楽しめるようで、無邪気に目を輝かせながらぺリペリペリ…♡とラベルを剥がす。
「必殺・自然と生命のエネルギーを吸収する儀・いただきますの詠唱!放て力を!与えよ!希望を!魔王が毒を制し切り開く我が真理の道!異汰駄規魔捨!!」
「さすが我が魔王様!こちらも負けてられませぬ!黄竜!それは忠義の証!」
「民を想わん食と自然の全てに感謝の意を表する古来の詠唱魔法、異汰駄規魔捨の後に続き!我が黄竜が戦況を魔王様優位に加速させる陰陽時代から伝わる由緒正しき呪文を唱える。大地よ、空よ、我に続け、魔王様に力を与えよ!!位多打奇真進!」
佐田と飛鳥がふざけていれば、隣の部屋から、ドンッ!と壁を殴られるような音が聞こえる。
『 あ 』二人は顔を見合わせた後、急に陰気臭く『 いただきまーす… 』とテンションを落としていく。
一方、
佐田と飛鳥の部屋の右隣では、布田が鈴木を突き飛ばして冷たい目で見下ろしていた。
「な、なんだ急に!」と叫ぶ鈴木に、布田が鈴木のスマホを見ながら、《鈴木隼人 あなたが次のⅩに選ばれました》というメッセージを覗き、スマホを床に落とす。
「なんで教えてくれへんかったん?やっぱⅩって複数人だったんやな。鈴木。アンタとずっと一緒に居って、思ったんやけど。鈴木は人を急に警戒するようになったわりに一番身近な俺を疑いに来ォへんかった。なんでやろなーって思っとったんやけどそういう事か」
鈴木は布田を見上げた。
「じゃあテメェは…俺を学園側に通告すればいいだけだろ、黙ってるつもりか」
突き飛ばされた影響で鈴木は尻もちをつきながら起き上がる。表情を崩さない布田。
「大元はだれや」布田が見下ろしながら鈴木に問いかけるが、「知らねえよ…電話番号も050で本来ありえねー状況だ」と鈴木は答えながら立ち上がる。
「いきなり突き飛ばすんじゃねえ心臓にわりぃ」
「…鈴木。お前にだけ言ったる」布田は口角を緩めつつ、「俺は《Ⅹ》から…そのほかの脅威からクラスを守ろう想て独自に動く事を企んでる…ちょお違うけど、本田が人狼ゲームで例えてたようにいえば。いわば【狩人】や」と鈴木に宣言した。
鈴木は「狩…」と瞳を見開く。
「それと鈴木さっき、なんで今から寮来るんか聞いてきたけど。アンタそれ従わんくて良いって言いに来たんや。」
その言葉を聞きつつ、鈴木は「信用していいのか」と問いかける。
「嗚呼、出来ひんかったら鈴木は俺に立場がばれてしもて危ないってだけやな。お前はただ何も動く気も、権限も無い市民…人狼にンな指示されても信じたらあかんよ」
その忠告に、鈴木は「…他にⅩとして利用されてるのは誰だ」と訊ねる。
布田は「…わからへん」と首を横に振る。
「朝日やと思ったんやけどそうなると真犯人が一切不明瞭になってまう」
「鈴木、手ェ組め」
布田は少々強気な態度で鈴木に提案する。
「俺、増田、鈴木でコミュニティを組むんや。そうすればここに工作員がいようがすぐわかる」
その提案を聞いては、鈴木は「本田や佐田、飛鳥は」と交流がある男子の名前を挙げて問いかけるが、布田は「大人数にするメリットは皆無や。鈴木は《Ⅹ》から指示が入る環境を手にしたんやろ?」とウンウン二回頷きながら言う。
「後は正体を割るだけや」
「いきなり押しかけてすまんかったな」
布田は手を振って鈴木の部屋の扉を閉めた。
「ははッ…」と鈴木は乾いた笑みを零す。
「…おもしれェ」




