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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期 五月

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76/111

FILE76『私が見込んだ男とそうでない男』

「あれ」監視役に連れられながら生徒寮に帰宅。本田はストラップが無くなっている事に気が付く。




「…」制服のポケットなどをガサゴソと探すものの、無い。(落と…した?)瞳が揺れる。



本田の中ではかなり大切にしていたものだろう。ストラップが切れる意味を興味本位で調べる。



「…身代わり」下手に探すのも違うのか?なんて考えるが、

あれは数年前から所持していたものだ。損失は大きい。



(どこで落とした?)とやはりカバンの中も見てしまう。だが、千切れた紐だけが、悲しそうにぶら下がって、かろうじて残っていた。


「…」黙ってその残骸を見つめ、(明日の朝、探すか)と気分を切り替えておく。



その後、生徒寮に届いていた宅配食を受け取りつつ、(今日はBにしてたっけ)とメニューが書かれた小さな紙を眺める。


一方の女子寮では、星野と志田の二人が、同じ部屋に入る。さて、どちらの部屋だろうか。「ごめんね?星野ちゃん。ずっと日中べったりで」志田が星野が用意した座布団に座りながら言うが、星野は笑いながら、「でも志田ちゃんも良くないよ?悪口書いたのが私って知りながら、責めもしなければ慰めてそばにいてくれるばかり。わたし…裏切ってるんだよ?」と志田の行動を不思議に思いながらお茶の用意をして問いかける。



志田は、「ううん」と首を横に振った。



「私は星野ちゃんが悪口書いてようが…ただそばにいたいだけなの。いッ、いや普通はおかしいって言うか、今から訳わからない話、するね?他の人だったら悪口なんて書かれたら許せないし、ボコボコにしちゃうかもしれない。でも…でもさ、星野ちゃん。言ったじゃない。私に…優しく出来る自分になりたかったって、いい子に産まれ変わりたいって。私…そこまで誰かに思われた事なんて無くて」



志田はそう言うと、頬を赤らめる。星野も動揺して、「ッえ…?」と瞳を潤ませた。



期待。高揚に、多少の狂気をブレンドしたような空気が、二人がいる部屋を包む。



そんな二人を知らずして。食後、自室でゆっくりと休む本田は競技祭のプリントを見ながら考える。



(いじめっ子は報われるべきじゃない)



「私は星野ちゃんといたいの、どれだけ倫理が捻じ曲がる事になっても!」



(俺は星野に制裁を加えようとしている)



「志田ちゃん、私そんな報われるべき人間じゃ」


(最悪な手段で、誰も考え付かないようなやり方で)


「私は星野ちゃんが好き、星野ちゃんが星野ちゃんの思い描く理想の星野ちゃんになれなくたって」


(星野のような陰湿な人間は【きっかけ】を与えなければ更生しない。いや、それでも優しい。ドン底まで制裁して再起不能に…ダメだな思考まで少しずつおかしくなってきたか)




「…志田ちゃん…うん、一回さ、今までみたいに、普通になろ…?」


志田と二人で部屋にいる星野は、優しい声で話しかける。冷静になった志田が「…ごめん。でも。私。私…星野ちゃんにされてる事わかってるのに。何されたか。星野ちゃんが何をしようとしているか。わかりつつあるのに。嫌いになれないよ」と続け、一度差し出された茶をマグカップで飲む。星野は、「志田ちゃん」と志田の名を呼んだあと、「私がどんな姿になってもそうやって、傍にいてね」と指切りをするように小指を差し出す 。



「…」志田はその指切りを返した。




「さて。早速ご飯にしよっか。志田ちゃんの分、ロビーで貰ってくる」星野が冷凍弁当を取りに行けば、部屋に残された志田は(何してるんだろ、私。いつも…居場所が見つかれば執着して)と、それでも星野が好きでたまらない自分に後悔をした。




一方で本田は、ラビィのトークアプリで翠川穂乃果と記載された名前をタップする。




《プルルルル…》コール音が部屋を埋める。




ホノカが『来ると思ったぞ』なんて微笑む。「頼みがある」本田はそう言うと、生徒寮を一歩出た。




監視役たちがウロウロするベンチ。



当然だと言わんばかりに背後を取るホノカ。




「…ふッ」笑みを零しながら振り向く本田に、ホノカは「…私の力を頼るつもりか」と十字架のネックレスを揺らしながら問いかけるが、本田はそのネックレスを弾き飛ばし、「…俺の心情を覗くような真似をしていないでさっさと見せろ。力を」と言った上で事情を説明する。




「お前も大変な目に遭ってるんだな。と言うかクラスの問題すべてを中心で処理しようとしているのか」とホノカは微笑んだ後、本田の顎を持ち上げる。



「【死神代行】ですらないお前に力を使うのは絶大な代償を生むぞ。そもそもそれをしなくたってお前の作戦なら」




ホノカは本田の顎をさらにクイッと上げた。




「いや。使えるものはすべて使う。代償なら払う」本田の頬を手で掴みつつ離した後で、「ふッ、自分の事よりも正確性か。」と髪を靡かせながら立ち去って行く。




そして本田に流し目を向けながら、ホノカは(さすがだな。お前はカガミよりも頭が回る上に物分かりも良い。だが)と考えながら前を向いて女子生徒寮へ歩き自室の扉を開けた後、(お前は弐式カガミよりも、《思い切った方向に狂えない》のが一番の弱点だ)と残念そうな表情を浮かべ、ネックレスに付いた砂を払った。




(私が見込んだ男と、そうでない男)




(この二人は似ているようで本質は【真逆】だ)




ホノカは壁に貼った本田や笹井の写真を見つつ、本田の写真のほうにダーツの矢をブスッ、といい音を鳴らしながら刺す。



その後、意味深に【舘崎監督またしてもチームのため強力戦士を戦力外通告】と書かれた雑誌を手に取って読んだ。



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