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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 二学期編

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六十二話『妖美な外道のティータイム』


静かにその日が終わった。本田は生徒会室をノックする。「あら?苦情ですか?」本田を見るや否や、さくらが口角を上げた。ケンや長谷部は不在の様子だ。「悪く思わないでくださいね」と妖美に微笑むさくらは、「…どうです。ティータイムでも…」と本田に紅茶を淹れようとするが、本田はそのティーカップを手で払った。



割れるティーカップを見て、さくらは「お高くつきますわよ」と言うが、本田はさくらを壁まで追い詰める。「どういうつもりだ」いつにも増して低い声で言う本田に、さくらは、「と、言いますと?」惚けたように首を傾げた。



至近距離で近づく本田の生気の無い顔。「あなたにしては随分リスクマネジメントの無い行動ですね」と目の前の彼を煽るさくら。


本田はさくらの首に手を伸ばしかけるが「無駄ですわ」と姿勢を低くして本田の手から逃れる。「…何故笹井を」と拳を震わせ怒りのままに訊ねる本田に、「…そうやってあなたの機能が失われていくから」と答え、挑戦的な瞳を本田に向けた。



「それと、あなたが悪いのですよ。あなたに自分の個人情報をバラさせるほどの柔軟性が無いから。つまりあなたは自分の目的のために彼女を犠牲にしたことと同義。…あ・わ・れ」



さくらの声に、「…お前はやっぱり俺の敵か」と堪えるように言う本田。「それを確かめに来ましたの?」とさくらが首を傾げる。「ご安心を」怒りで瞳を揺らす本田の指に、笹井の身体から抜き取ったと見られるヒビだらけになったアメジストの指輪を授けようとするが、本田は、「ッ」と瞳孔を開き、指輪を床に投げつけた。



「酷い。お友達の形見を…」と言いかけるさくらに、本田は「…この…外道が」と吐き捨てる。さくらはふッと笑った後、髪を耳にかけた。「自覚してます?今のあなた…すごく怖い顔、してらっしゃいますよ」本田は、俯きながら悔しそうな表情をする。



「…お可愛い事」と本田を愛おしそうに眺めるさくらは続ける。「でも…あなたが本当に怒るべきは。私のお父様♡私はただ、あなたを観察したい、だけですわ」背伸びしたさくらの手が本田の頬に触れる。「すべてはあなたが選んだ結果。終わった事ですわ。私に怒りの矛先を向けるんじゃなくて、更なる犠牲者を出さないように動いたほうがよろしくて」さくらは本田に冷めた視線を向けた後、背を向ける本田に、「それともあなた…まさか本気でクラス全員を守りたいって、ふざけた事を…考えてらっしゃるの?」と言葉を投げかける。




本田は、「…」と迷うように瞳を震わせた。「…私情などとうに捨て…」と反論しかける本田に、さくらは、「じゃあ、今。私に会いに来た理由は?」と詰められる。「…怒りを抑えられなかったんですよね?」 さくらの言葉を聞きながら、本田は生徒会室を出た。


監視役と合流するために校門に向かう途中、長谷部やケンとすれ違う。「廊下は走ら…」とケンが注意しかけるが、既に遠くまで走って行ってしまった本田の背中を見て、「あいつ泣いてたぞ」と心配する。



「いや聞き間違いだろ、あんな奴に限って」と隣にいた長谷部が言うが、ケンは「大丈夫かよ一年…」と放っておけない様子だった。



一方の理事長室では、志田と星野が呼ばれ、「お見事だったよ」と楚々辺に称賛される。志田と星野は顔を合わせて微笑んだ。「星野ちゃんが誘ってくれたから。私はただ笹井さんを呼びに行っただけですよ」と照れ臭そうに頭を掻く。




星野も、「でもでも、なんかすっごく良かったよ、私遠目に見てたけど、本当にかっこよかった」と志田を褒めた。楚々辺は、「笹井は駆除できた。次は本田だ―――。お前たち二人は、学園の目的、救済の理念を理解してくれている、この学園並びに光道教の理念に反する者を徹底的に駆除しろ。そして生徒を、次々と光道教の教えに取り込め。人類は救われなければならん。我々の救い方を否定するものは新世界に不要だ」楚々辺の指示に、『ラジャ』と敬礼する星野と志田。



星野は「また明日ね茅野ちゃん」と、スタンドで目を閉じながら充電される茅野に手を振り、理事長室を後にした。



一方の本田は、坂杉に何回もコールする。ようやく電話が繋がれば、『んだよ今まで連絡一つ寄越さなかったくせに』と、男の声が聞こえた。「…声聞きたかっただけだ」と坂杉に言っては、坂杉は『はぁ?らしくねぇ』と爆笑した後、『そっちどーだ、テメェ勝手に乗り出しやがって、こっちは毎日お前の事考えて…』と嬉しそうにベラベラ喋り出す。



『調べモンとかじゃねぇんだろ。だったらカバちゃんに連絡するもんな』坂杉の問いに、本田は「お前が元気そーで良かった」と再び泣いてしまいそうな声で言いながら微笑む。「まぁ声は聞けたから切る」という本田に、坂杉は『はぁ⁉』と不思議そうな顔な声で叫んだが、本田は電話を切ってしまった。


(そうだ…。泣いている場合じゃない)と心の中で呟く本田。本田はお守りに目をやる。「…これはもう、俺の戦争だ」本田はクシャッと一学期の間に使ったメモを丸めた。スマホの学生証アプリが、本田が帰宅後に見ていた画面のまま光っている。一学期の通信簿。本田の成績は、【総合・B】と表示されていた。


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