表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 二学期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/65

六十一話『優しい魔王とSOS』


「一年二組布施。最終調整が済んだから生徒を連れて来た。入れお前ら」教室に入る長い緑髪の女子生徒と、スラッとした背の高い男子生徒に注目が集まる。


「怒涛の展開や…」と呟く布田と、まだしんみりとした空気が広がる教室。「明日で良かったんだけどな、こんな空気の中…」と困惑する出海奈に、笑顔で、「先生、何かあったんですか?」と微笑む二組から来た男子生徒が教室で一人だけ浮いてしまう。



やたら整った顔立ち。もう一人の女子生徒、ホノカは無機質な表情で棒立ちする。「何もない…とりあえずこいつらが二組から交換派遣される事になった…古市と翠川だ。古市の席は本田の隣、翠川の席は…星野の隣で」と二人を座らせる。



鈴木は、「佐田の席はどうすんだよ」と出海奈に問うが、出海奈は、「知らん。倉庫にでも片付けとけ。」と答える。



「これは茅野の案だ。交換派遣。新しい学びにもなるだろう、決して能力不足だから左遷されたわけではない」出海奈の説明を、星野はじっと聞いた。



本田は、(あの女…)とホノカを見ながら考える。席に座る古市とホノカ。古市は、「よろしくお願いします、本田くん」とこの空気を一切気にしていないのか、お気楽に笑った。



本田はその名乗りさえ無視するが、古市はやけに薄気味悪い穏やかな 笑顔を本田に向けていた。



波乱の幕開けの二学期。出海奈は、「二学期はこれと言った行事も無い。座学と詐欺を中心に執り行う。笹井の件、お前らも深い傷を残したはずだが。ここで立ち止まるな」と優しく生徒たちに語りかけた。



「茅野」と出海奈がクラス委員の茅野に話を振る。「はッ、はい」と立ちあがる茅野。「立たなくていい…今、クラス委員は茅野しかいない。お前に出来る事は何か。じっくり考えろ」出海奈の言葉に、茅野は「私…私に…この状態…で…何が」と戸惑う。



茅野が笹井を守らなかった。その事実を知らない生徒たちに、何処か冷ややかな視線が向けられているような、そんな後ろめたさを覚える茅野だったが、彼女はこの感情さえ、プログラムによるものなのかと疑った。



出海奈は、そんな茅野に「一歩ずつでいいさ」と続けた後、教室を出る。その後、すかさずに飛鳥が教卓の前に立った。「え?」と嫌な予感が走り、朝日は絶句する。


やたら真剣な顔で立つ飛鳥に、教室がざわついた。「諸君‼俺がこの国の魔王として今日からここに君臨する‼」馬鹿でかい飛鳥の声に、『はぁ⁉』と感情を振り回される生徒たち。



そんな中で、ホノカはふッ、と笑い、古市は楽し気な様子で飛鳥の表情を視界に捉え、本田は俯く。「俺がやらないで誰がこの魔王軍を建て直すんだ、友の意思は俺にある、俺がこの国の新しき魔王として新時代を築いてやるのさぁ‼」



飛鳥の高笑いに、布田が「お前マジ空気読めやアホ‼」と声を荒げるが、「お前が人に言えるタチかよ」と増田に突っ込まれ、黙るしかなくなる。



「ふははははっははっは‼」と一人で世界観に浸る飛鳥に、茅野は、「え、良いと思う!」と微笑む。茅野のその言葉に、俯いたまま多少腹立ったように表情を変える本田。



「大丈夫。私と飛鳥くんでこの教室を…」と茅野が言うが、本田は逃げるように離席した。「え」飛鳥が出て行った本田を見る。「待て我が使い魔‼」本田は追いかけて走り出す飛鳥。



増田が「なんかあいつ今日おかしくね」と本田を眺めながら言うが、「なんやかんやであいつが一番笹井と交流あったからな」と切なげな顔で返す布田。



「すまんなぁ、初日からこんな空気で」と布田が古市やホノカに視線を向けながら言うが、古市は、「構いませんよ、二組は布施くんの支配で、毎日このように緊張が走ってますから」とまったく気にしていない様子を見せる。「この男と同意見だ」とホノカも何処か楽しんでいる様子で答えた。



本田を追いかけた飛鳥は、「オイ‼」と屋上に続く階段に座り込む本田に話しかける。「我が使い魔・ホンダ・キャスバット・ジュリアスよ。みんな心配するぞ」と飛鳥が言うが、本田は「面白くないんだよ」と一蹴した。


「なッ」と瞳を揺らす飛鳥。飛鳥は、「…お前」徐々に本当に心配する声色になっていく。「俺のせいなんだ」 本田の弱音に、飛鳥は、「はぃ?」と首を傾げた。



「俺が笹井を守るって…」暗く、ドンヨリした声色の本田に、飛鳥は「約束でもしてたのか」と問いかける。だが本田はそれをガン無視する。ふらつきながら立ち、教室ではない何処かへ行こうとする本田の胸ぐらを廊下で引っ張る飛鳥。



「何だ」と抵抗する様子もなく飛鳥にジト目を向ける本田。飛鳥は「俺はお前が大切だ!」と大声で騒いだ後、「いくならどこでも行け!」と敢えて突き放す。


「でも…俺みたいに…お前を…大切にしてるやつも…忘れないでくれ」と本田の服の襟を掴みながら言う飛鳥。本田は「あー」と怠そうな声を出しながら、「なんでこうなるんだ」と白け気味の顔で呟く。



「戻るぞ」と飛鳥が本田の手を引く。飛鳥は本田とお手手を繋ぎながら、「ただいまー‼」と大声を出したが、「二組の教室だバカ野郎」と布施に言われ、飛鳥は「すいませんしたァァァァ‼」と布施に謝りながら一組の扉を開けるのだった。二組の生徒や佐田、志田たちは、(手つないでた)(何か可愛い)と、近くの生徒らと耳打ちするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ