六十三話 『新しいクラスメイトと』
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生徒会室では、ケンが「何か一悶着あったんですか?」とさくらに問いかける。「いいえ」とさくらは答えた。長谷部が「あの一年をそこまで心配する必要あるかよ」とケンに言うが、ケンは「傷ついてる奴を放って」と言いかける。
さくらは、ケンの頬に触れた。魔性の笑みを浮かべる。ケンは「うぐッ」と言葉を詰まらせた。「私が誰かを傷つけるとお考えで?」とケンに問いかけるさくら。ケンは、「いいえ」と首を横に振った。
「本田くんに勝手に接触するのは、辞めてくださいね」と手に刺さったティーカップの破片を拾い、血を流しながらいうさくら。「そういう事だ」と長谷部もケンに釘を刺した。「あなたたちに高級寮、監視対象除外、一番良い就職先の確約。学園での良好な立場を与えたのは、この私。…本田くんに感情移入なんてしたら。校則を書き換えてあなたたちを生徒会から除名しますわ」さくらの発言に、ケンと長谷部は息を呑んだ。「では、寮に帰りますわよ」さくらの言葉の後、その背中に着いていくケンと長谷部。
私立遠州学園。生徒会寮。普通のマンションのような見た目の生徒寮とは打って変わり、一歩入った途端、『おかえりなさいませ、楚々辺様、長谷部様、三上様』と使用人らが頭を下げる。生徒会にだけ許される、特別待遇。
ケン、さくら、長谷部は堂々と赤い絨毯を進み、それぞれの部屋へと向かった。(楽園ですわ…こんな場所、他にない)と優越感に浸るさくら。使用人ら一人一人には、八咫鏡の指輪が。高級ホテルも顔負けの自室に入ったさくらは、鏡台に新しいコスメを配置する。
部屋の一室にあるバスルームには、赤い入浴剤と、花が浮かんでいた。(ふふッ、素晴らしいですわ)と自身の生活に満足するさくら。さくらが着替えを持って中に入れば、バスルームを囲む硝子に湯気が蔓延する。水飛沫の音がして暫くすれば、バスローブに身を包んださくらが出てくる。
(シャンパンがあればいいのだけど)さくらは考えるが、まだ自身は未成年である。渋々いつもワイングラスに葡萄味の炭酸飲料を淹れて気分を味わっているのだ。優雅な夜を過ごしたさくらは、本田の隠し撮りの写真を手に取る。愛おしそうに笑みを含んでは、窓から島の外の海の景色を眺めるのだった―――――。
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翌朝。二学期の通常通りの授業は今日からはじまる。教室に入った本田は、いつもの癖でちらり、と笹井の席だった自分の隣の席を見てしまうが、そこには「おはようございます本田くん」と胡散臭い笑顔で自身を待つ得体の知れない男がいた。
「…」本田は流し目を彼に向けるだけで、すぐ着席する。「いやぁー冷たいな、僕たち、湊と陸。でお似合いな名前じゃないですか」とおちょくるように言う古市に、本田は「港に止まる船は陸には上がらない」と冷たく答える。
「なんですか?それ、笑っていい洒落ですか」と何を言っても余裕をかます古市に、本田は少々イラっとした。「席が隣だと話しやすくていいですよね。いやー飛んだ暴力魔…布施くんがいなくてよかった」とベラベラ口が回る古市に、本田は「俺がその役割を担いたい気分だ」と冷静に返した。
とりあえず視界に、耳に隣の男を入れないようにマニュアルを眺める本田。とはいえ、もう読み漁ったマニュアルにずっと視線を向けるのも退屈なので、ホノカの席をチラッと見た。女子生徒に囲まれまるで転校生のような扱いを受けるホノカ。「ねぇねぇ、緑川さんって高校来る前何してたの?」「…嗚呼、バカな男の面倒を見ていた」ホノカの答えに、「バカな男?」と首を傾げる女子生徒たち。
「弟、とか?」と言う生徒の一人に、ホノカは「言うなれば…不登校で男と遊び三昧」と適当な設定を付けた。「ゲッ…」と固まる女子生徒たち。「ごめんね、変な事聞いちゃった」と言いながら去って行く女子生徒たちを見て、ホノカは「ふッ」と見下すように笑った。
「誰だ?馬鹿な男って」逆に珍しく興味津々になる増田。ホノカは「私の忠告も聞かず軽率に世界を変えようとするような…」と言いかけるが、その言葉に「世界を変える⁉」と目を輝かせながら飛鳥がホノカの席の前に駆け寄った。
「オカルト研究部は部員募集中だぞ緑川‼俺と一緒に魔王やそういう話をしようじゃないか!!!!!」と興奮する飛鳥に、「オカルト部か」ときょとん、としながら首を傾げるホノカ。「だが部活動の提出は一学期まで。帰宅部と既に提出してしまった」とホノカは飛鳥に説明する。
飛鳥は首を横に振った。「生徒会直々ならちょちょいのちょいだ」と高笑いする飛鳥。ホノカは「…お前は産まれる時代を間違えたな。もっと昔に産まれていたら面白いものが見れたぞ」と意味深に飛鳥に言った。飛鳥は冗談で、「さては不老不死の美魔女だな⁉」とホノカに振る。ホノカは、「?」ときょとん、と目を丸くした後、「そうだ私こそ不老不死の美魔女、ダーククイーン…」と飛鳥のテンションに付き合う。
飛鳥は、「ホワァァァ⁉」と目を輝かせる。「ふははははははは‼」と寸劇が入る飛鳥とホノカに、教室が静まり返る。「あれ…緑川さんって意外とそっち?」と真顔になる星野に、増田が「違う違う、あいつがやたら誰とでもあのムーブに持ち込めるだけ」と説明する。
本田は怠そうに様子を見つつ、「ふぁー…」と欠伸した後、腕時計を見て「もう出海奈先生来るぞー」と生徒たちに言った。「あ…」といろんな席に動き回っていた生徒らが自分の席に戻って行く。




