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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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五十七話『等価交換』


 七月頭。一学期、最後の日。終業式後。


 (タイムリミットは今日か)


 ボーっとホワイトボードを眺めながら考える本田。


 笹井の命か。自身の個人情報か。


 (別に答える必要は無い、守りさえしてしまえばいいんだ)


眠気に襲われながらも、本田は自分の作戦に穴が無いかひたすら計算し、(大丈夫だろう)と言う答えに辿り着いた。


 出海奈が、教卓をバンッ、と叩く。


 「一学期もよく頑張った。ただ競技祭のカラクリを知りたい。笹井」


 出海奈が笹井を名指ししては、笹井は「はい」と頷き教卓の前に立った。


 「私たちは今回の競技祭で他クラスとは違い、結束が崩れないように設計を立てました。まず、代表者である私の口座に全員で共同貯金をしました。これで負債を誰かが支払う事になっても、友情が崩れることはありません。そして次に『支払い役』を事前に用意しました。一軍、二軍、三軍まで。負けたら負けた人の中から支払い役を作り、その人間以外を選ばないようにしました。競技祭終了後はそれぞれの口座に利益を振り込み、二年生への支払いがあるものは学園のATMから支払いました。」


 笹井の説明に、星野が、 「これ本当に笹井さんが一人で考えたのなら凄すぎるよ」と笹井を称賛する。


 出海奈は、フッ、と微笑んだ後、 「笹井、お前の作戦は実に素晴らしいものだった。新学期。生徒会長から表彰があるかもしれないな…」意味深な表情で言った。


 本田は「?」と、出海奈の意味深な表情を見逃さなかった。


 「通信簿は既にお前たちの学生証アプリに配布した。帰ったら確認しろ」


出海奈は説明する。


 布田がスマホを開くが、出海奈は、 「今じゃない」と強調した。


 「クラス委員の笹井と茅野は居残りで収益管理表記入しろー。本田は布施が話あるみたいだ。朝お前を探してたから会いに行ってやれ」


 出海奈は生徒たちに言った後、 「解散。通常授業は始業式翌日から。くれぐれも脱走、校則違反はするな」と続け、 「解散‼」 と叫ぶ。



 布施に会いに行こうとすると、佐田が教室前で、


 「布施に呼ばれるってなんだよ」


 本田の肩を二回優しく叩いて引き止める。


 本田は「さぁな」と適当にあしらい、廊下を出て二組の教室のほうへ歩く。


 二組の教室が少し遅れて帰りの会を終わらせれば、教室から生徒たちが沢山出てくる。


 帰宅ラッシュだ。


 本田は布施と目が合う。


 布施は、 「あぁ…」視線をこちらに向けて反応しつつ、生徒たちが全員帰って行く様子を見て合流する。


 「お前が噂の本田か」


 と布施は本田の名前を呼んだ。


 「…ペン」と本田は呟く。 「呼んだ理由、それだろ」 と本田は訊ねた。


 「なぜ俺だと分かった」


 本田の問いに、 「朝日って女。あいつからペンを貰ったって言う、うちの奴に多少の尋問をしたらケロっとそいつの名を吐いた。その女から部活中に朝日に雑談の最中にこう聞かせた。【今気になっている男子生徒はいるか。】一見すればただの恋バナだが。朝日はお前の名を挙げた。つまり少なからず朝日って女とお前は接点がある。そして朝日はクラス委員の笹井や茅野とほぼ接点が無いらしいじゃねぇか、ってなればあのイキリ陰キャ女にペンを渡せって言ったのはテメェかと踏んだ」布施は推理を交えながら説明する。


 「変な行動しないで貰えるか」


 布施のクレームに、本田は、 「あいつ自身が考えた可能性だって」と誤魔化すが、「そうやってお前が誤魔化すって事ァ朝日は利用されたんだろ」 と布施は言い返す。


 「何のためにんな事したかわかんねぇけどよ…」


 頭を掻く布施に、本田は、 「競技祭のお前たちのクラスの動向を探るためだ。競技祭は終わった。もう処分で構わない」と説明する。



 「でも、よく気づけたな。あれがカメラだって」


 本田は布施に問いかける。


 布施は、 「そんなもの、普通のペンと重さを比べりゃ一発だ。いくら外見が同じでも、バッテリーが入っている分すぐにわかる。女は自分のペンが多すぎて感覚麻痺でも起こしてたんだろう、あいつらやたら文房具集めるしな」と女子のペンケースを思い返しながら語る。


 「それは気づいたから言える事であって、ただ重いペンもある。重さで違和感を持ったお前は恐らく、ペンを女子生徒から奪い…床に投げつけ、踏みつけたか何かした。俺に返してこない時点で既にそのペンがお釈迦になっているか…もう捨てていて現物が無いかの二択」


 本田の推測に、布施が、 「ご名答」と頷く。


 「そこでだ」 帰ろうとする本田の背中に声をかける布施。本田は振り返る。


 「お前が朝日を利用した事。バラされたく無ければ俺の言う事聞いてくれ」


 布施の頼みに、 「なんだ」とりあえず耳を貸す本田。


 「来る二学期。二組の生徒を自由に動かしていいから結束力上げてくれ」


 布施は両手を合わせ、「頼む、流星じゃできないんだ」と本田に訴える。


 「流星?」と首を傾げる本田。


 「銀河流星。俺のクラスの参謀だ。俺が圧力をかけて統治する裏で、作戦はあいつが立てていた。だが、うちのクラス、競技祭での負債と、関係の崩壊が致命的なんだ。だから一組からお前に」


 布施は言うが、本田は、「お前馬鹿か」と論する。



 「一組の都合良いようにお前らを動かしたらどうなるんだよ。それに勝手に同級生を売るのは阿呆にも程がある…。だが、お前もお前で【クラスを守りたい】と言う意思は伝わる…。そうだな…出海奈先生や皇先生に許されるなら。二組のお前や流星、統治する役割がある奴以外で聞き分けが良くて口が堅い奴をうちのクラスにくれ。それで受けてやる。こっちからは力ですぐ従順に動きそうなやつを派遣してやる。こっちも厄介なことになってるんだ、いいよな」


 「構わねぇ」本田の提案に、布施は頷く。


 「俺は茅野から出海奈先生に提案させるようにする。お前も頼んだ」


 本田はそう言うと、「じゃあな」布施の顔を振り向かずに立ち去った。


 (…こんなにうまく行くか? 布施が馬鹿なのか、それとも…あいつも一組を観察したいから二組で連絡が取り合える奴を一組に派遣するのが都合良いのか…)と考えつつ、本田は監視役と合流した。

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