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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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五十六話『シャルロッテ』


 「なんで一緒に帰んなきゃいけないのよ、監視増えるじゃない」と言う朝日に、本田は「まぁそうだよな」と納得する。


 「夜道が寂しいのか」と言う飛鳥に、本田は「…」と考えた後、飛鳥が、「でもおかしいよな」と考える。


 「監視役ってがばがばじゃないか? いつも遠くから見ているイメージだし。守ってくれるような気配もない」と考える。


 「何、あんた監視役が守ってくれるとでも考えてたの」と驚く朝日。


 「違うのか」と飛鳥は首を傾げる。


 「…護衛役じゃない。寧ろ奴等は敵。余計な話はしないほうがいいと思うぞ」


 本田の言葉に、飛鳥が「…」と真顔になる。


 隣のテーブルで志田と星野が立ち上がる。


 それを見た本田は笹井の腕を引っ張り立たせた。


 飛鳥と朝日も立ち上がる。


 パーティー会場から出て、監視役らと合流する四人。


 先を歩いていく朝日。


 飛鳥はいつものように、


「我が王だ‼」「フハハハハ‼」


 などとふざけながら帰って行く。


 その様子を眺めつつ、本田は「行くぞ」と笹井の手を取った。


 「心配してるの」と言う笹井に、本田は「お前に守れって言われてるから」と答える。


 「嫌々?」と本田の顔色を伺う笹井に、


 「そりゃ、危険は冒したく無いよな。でも俺はお前を危険な目に遭わせないことが出来るから引き受けただけだ。よかったな、あの時。フェリーの展望デッキにいたのが増田や朝日じゃなくて。」


 と本田は微笑みながら返した。


 監視役をチラチラ見つつ、笹井が「ねぇ」と本田の腕をクイッと引っ張る。


 「あなたの部屋寄らせて」


 笹井の誘いに、本田は「構わない」と答えた。



 そして生徒寮で監視役と離れ、笹井が本田の自室に入る。


 「用件はなんだ。監視役がいない場所で何か話したかったんだろ」 と本田が言うと、笹井は「…その」と目を逸らす。 「なんでも言えばいい」 本田が笹井を安堵させては、「私…。」 と言葉を震わせた後、飲み込んだ。

 


そして、 「クラス委員として、一学期頑張れたのかしら。朝日さんには嫌われているみたいだし…」 と続ける。


 表情を一つ一つ観察しつつ、本田は、 「それ聞きたいために来たわけじゃないだろ」と溜息を吐く。


 「…私に何かあったら。クラス委員を朝日さんにしなさい」


 笹井から発された意外な台詞に、「嫌われてるって自分から言ったばかりだろ」と呆れつつ、 「なんでお前は助からない前提でものを考えるんだ」と冷静に言う本田。


 「クラス委員はお前しかいない。それに俺は仮に何かがあってもクラス委員に朝日を選ばない。まず、茅野とうまくやれない。あいつはクラス委員というより発言者だ、群衆にいたほうが価値がある。俺が選ぶとすれば――――。だが、俺としてはいつまでもお前にクラス委員をやっていて欲しい。クラスの中でまだお前ほど優秀な奴はいない」


 本田の言葉に、笹井は、 「…私が助かる保証は???」 と問いかける。


 本田は「…」と考えた後、 「ほぼ百」と答えた。 


「何よ、迷い無いじゃない」と笑みを零す笹井。


 「当然だ。」


 本田は頷いた後、 「完璧な作戦を立てている。お前が広い場所に逃げる事さえできれば後は簡単だ」と再び説明する。


 「死ぬ気になるなよ」


 笹井を励ます本田に、笹井は、「ねぇ…なんであなたはそうやって…時折優しさを見せるの」と訊ねる。



 「…」


 本田は考えた後、 「…被害は最小限に抑えたいだけだ…」と言いかけるが、 「違うでしょ」と笹井が遮る。


 「…あなた…本当は…冷たい人じゃない…そんなフリをしてるだけ…わかるわよ…馬鹿じゃないもの…いや…あなたも…私の前から…いなくなるの?」


 と問いかける笹井の顎を、本田はクイッと扱いに慣れたような手つきで持ち上げた後、むにゅ、と笹井の顎を掴み、離す。


 「変な顔」と呟く本田に、 「なッ、レディに何を」笹井は猫パンチをした。


 本田は笹井のアメジストの指輪を見た後、 「お前、アメジストの宝石言葉。何か知ってるか」と問いかける。


 笹井は「え」と固まった後、 「確か…お前の父さんがお前の母さんに譲ったもの、なんだよな…」と考える本田。


しばらくの間があって、「真実の愛」と本田が言っては、「…」と指輪を眺める笹井。


 「それをお前の母さんが授けたってことはそういう事なんだろ」


「何よ…それ」 


 「つまり、愛されてるんだなお前」


 本田は笹井の顔を眺める。


 「そんな人を…この嘘と闇で覆われた島で失うわけにはいかないんだよ。」


 覚悟を決めた表情で言う本田に、笹井は静かに涙を流しながら、「そうやってさらっとかっこつけないでよ」と返した。



(嗚呼―――本当に――――)


 笹井は本田の顔を見上げながら、


 (私って彼の事―――、好き…なのかな…)


 キュッと高鳴る胸を手で押さえる。


 「…」


 「気は済んだか」 ぼーっとする笹井を見下ろす本田。 


「え、ひゃッ…」混乱する笹井を奇妙な目で見つめつつ、本田が、「… …惚れた?」 なんて冗談を言っては、 「ッ、違う、違うわよ‼」と顔を真っ赤に染める笹井。


 「ッ、バカッ、もぉ、知らないんだからッ、」


 と言いながら足早に部屋を飛び出す背中を見送りつつ、 「はぁー」本田は頭を掻く。


 「なんだあの女」

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