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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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五十四話『祭囃子の後は…』


 一組の教室に戻ってきた本田は、モニターで会長と笹井の試合を眺める。


(やっぱ追い詰められてるか)


 睡眠薬の効果でまた眠たそうな本田に、朝日が「ちょっと、笹井さん勝てなそうだよ」と話しかける。


(判断力が鈍るな……普通に連れてってくれたらよかったものを)


 本田は思考をグルグル回しつつ、(嗚呼―――、一度俺が断ったからか)と納得する。


 モニターに映し出される笹井の最終戦。


 明らかに手元が震えている笹井。


 だがその後ろに、(あの指輪の奴――――‼)本田を捕まえた黒服が、笹井を品定めするかのように眺めていた。


「本田くん聞いてる?」朝日が本田の肩を叩く。


「嗚呼―――」と振り向く本田に、「笹井さんの後ろ。なんか変な人いる。あれって監視役じゃなくない? 確かに、スーツだけどさ、銃も携帯してないし。ガタイもそんなにいいわけじゃない。かと言って観客でも無さそう。あの人たち誰?」考える朝日に、「俺に聞かれてもわからないものはわからない」と答える。


 暫く生徒たちで映像を眺めていると、


 ブブーッ。とタイマーが鳴った。


 同時に、『ああー』

 落胆する佐田、鈴木、増田、布田、飛鳥。


「笹井でもダメだったかー」 と言う佐田に、「いーやここまで進んだのは流石だろ、一年の中じゃ快挙だ」鈴木は笹井を労う。



 モニターを眺めていた出海奈は、


「お前らよく聞け」


 教卓を両手でバンっと叩き、生徒たちに前方を向かせる。


「競技祭で一年が会長戦まで行くのは物凄い事だ。……その前例が一組から出た。よって……お前たちには……夏休みの課題、減らす‼」


 出海奈の宣言に、「よっしゃあああああああ‼」立ち上がり飛び跳ねる布田。


「うるさいな」


 と出海奈は布田に静かに言う。


 布田は明らかにシュン、と落ち込みながら座り込む。


「課題を減らすことはお前らにとっていいことかもしれないが、同時にその間に詐欺を学んできた奴らに遅れを取ることになる。だが私はお前らなら追いつけると見込んでの実施だ。……本土に宿泊などもしていいルールになっているが、当然のように拳銃を所有している監視役付きだ。ただ……前例を言うと、その監視役から銃を奪って射殺してしまい、自らも自死してしまったような先輩がいる。つまり、またこのクラスから人がいなくなるかもしれない。その事を頭に入れておけ」


 出海奈の説明のせいで、素直に喜べなくなる生徒たち。


 志田は下を向き悩むような表情を浮かべる。


 星野が、「大丈夫だよ」と優しく志田の肩を叩いた。


「……?」


 志田と星野の二人を眺める本田。


(なんだか前より距離が近いような……?)


「志田せつな、星野真澄、後で職員室に来なさい」


 出海奈は女子二人の名前を呼んだ。


「え?」


「私たち?」首を傾げる志田と星野。


「頼みがある」


 出海奈の言葉に、二人は互いの顔を見た後、


「いいけど」志田が言った。


「なんで?」星野も不思議そうに出海奈に視線を向ける。


(この二人も怪しく見えるな)


 本田は二人を眺めながら考える。



 試合が終わり、生徒会の三人と共に、舞台へ上がる笹井。


 一年生が勝った試合では無かったが、盛大な拍手と歓声で祭りは締められた。


 出海奈が、「お前ら、私服に着替えておけ。競技祭の最終日はパーティーだ。他クラスや先輩と交流を深めるチャンスかもな」微笑みながら伝えた後、教室を出ていく。


 暫くして笹井が教室に帰れば、


「クラス委員様ァ‼」


「最高の作戦だったぜー♡」と称賛される。


 笹井は、「ふんッ」席に座ろうとするが、照れ臭そうに「あ、ありがと」と答える。


 そんな笹井の様子を見て、「あっれ」恋に落ちるような表情を見せる鈴木。


 カバンをロッカーに取りに行く笹井。


 佐田が、「鈴木、硬直してんぞ」鈴木の顔の前でパタパタと手を振る。


 鈴木は、「はッ‼」と大きな息を吸った後、「こ、硬直なんかしてねぇよ‼」佐田に言い返した。


「で、どうする?出海奈先生行っちゃったけど」と言う茅野に、「じゃ、解散―。私たち先生に呼ばれてるし」と志田が立ち上がる。


 星野も、「先に帰るね♡ また夜♡」生徒らに手を振り教室から帰って行く。



 本田も一度生徒寮へ帰ろうとカバンを取るが、


 笹井に、「ちょっといいかしら」と呼び止められる。


「ん?」


 本田は笹井を振り返った。校舎の中。下駄箱に向かう途中。


「会長から聞いたわよ、あなた。私の命をかけて取引してたって」


 本田を問い詰める笹井。


「どういう事?なんで共有してくれなかったの」


 本田は目を逸らしつつ、「お前に言って何かメリットあるのか」淡々とした口調で答えた。


「……」


 アメジストの指輪を眺める笹井に、


「だが……。お前が俺に守って、と言ったのは正解だったらしいな。女が一人で動くにはここは危険すぎる。笹井、俺はお前の命を切る事は無い―――。ただ、確実に一学期中にお前は誰かに襲われるはずだ。俺は理事長が来ると踏んでいるが、学期末、それも夜に訊ねてくる人間には警戒しろ。その人を見た瞬間、校庭に向かって全速力で走れ。身動きが取れずとも助ける手段は既に用意しているが、最大の性能を発揮するにはとにかく広い場所に逃げてくれ」


 意味深に言う本田に「性能?」と首を傾げる笹井。


「これは俺の実験でもあるんだ。最新鋭の技術とやらがどこまで動くのか」


 本田の言葉を聞いた笹井は「はっきり言いなさい」ジト目で本田にツッコむ。



「言えない。」


「じゃあな。パーティーの時も気を抜くな。お前は最後に会長と戦った一年だ。いろんな人に絡まれるかもしれない。」


 と続け、本田は笹井から距離を置く。


「ちょっと⁉」


 距離を置かれた笹井は本田に手を伸ばしつつ、


「ったく‼」


一人で歩いていくのだった。

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