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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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四十七話『不正を働く悪魔』


「フォーカード」「スリーカード」


 同時にカードを出すカグヤと本田。


 カグヤは「ふふッ。一年生が散ってくれるのならそれに越したことはありません。」と嬉しそうに微笑んだ。


(好奇心から対戦相手を選んでしまったが……悪手だったか…だが…)


 目線が泳ぎ出す本田を、カグヤが見逃すはずなかった。


「あら? 先ほどまでサメのような威厳を放ってらっしゃったのに、今はまるでただの中坊のような可愛らしさが見えますわよ。迷ってらっしゃる?」


 カグヤは本田に問いかける。


「カードを持つ手も、少し震えてます……」


 と目線を自分に合わせるカグヤに、本田は「……」と黙り込んでしまう。


(苦手だ……こういうタイプは)


 目を逸らしつつ、カードを二枚捨て交換する。


「聞きたい事がある」


 それでも本田は表情を崩さずにカグヤに問いかける。


「なんでしょう」


 カグヤもカードを交換しながら言った。カグヤのほうは三枚だ。


「三年生が何をしているか知ってるか」


 訊ねる本田に、カグヤは「ええ」と頷く。


「教えてくれ」


「この学園の運営権。委員会や生徒会、部活の部長などを担うのは主に二年生。三年生になれば座学の無い詐欺中心の授業になります。教師の介入は無く、自分たちの判断が委ねられるでしょう。そして三年生に求められる中心的な事。それは【賭け】です。三年生になれば詐欺の時間は二時間。他の四時間は基本【賭け】になります。なぜなら三年生は詐欺をマスターしているので自分たちでも個人的にやりはじめます。授業で決まった時間を設ける必要性が無いのです。そして製薬会社や研究所の方々がその【賭け】を見学しに来ます。優秀な遺伝子を探すために」とカグヤはベラベラと三年生についての情報を答えた。


「ストレート」「ツーペア」


 またしてもカグヤの勝利でタイマーの時間がどんどん減って行く。


「遺伝子? 【人材】を探すためじゃないのか」


 と興味を持つ本田に、


「あちらの人たちが求めているのは選別された優秀な【遺伝子】です。卒業前にテストに合格しなかった三年生は皆……死にます」


 小声で答え、本田に続いてカードを交換するカグヤ。


「……だから私は、生徒会長さくらさんがテストに不合格になる日を待っています。そうすれば今度こそ就職先では私が――――‼」


 悪役のような表情で笑うカグヤを見た本田は、


「いや……その日は来ないと思うぞ」と冷静に言った。


「なんですって⁉」


 カグヤの低い声がカジノに響き渡り、チラッと視線が集まる。


「まず考えてみろ、さくらは理事長の娘だ。お前を生徒会長から外した時みたいに、不正が働くと思うのが自然だ」


 本田はトランプに貼られたシールをペリペリ……と捲る。


「そしてお前も。古典的なやり方で弱い役をわざと増やして相手を確実に負けさせる……。見損なったよ……。ディーラーが目をはなした隙に急ぎでやっている分、角をよく見れば二重になってる。あの時、カードを持つ手が震えていたんじゃない、角を触ってたんだ。それで気づいた。……今までは正攻法で勝ち進んでいたが、相手が弱そうな俺になった途端にこうか」


 という本田に「何⁉」と絶叫するカグヤ。


「こんな汚い手を使ったって会長が知ったらお前をどう扱うだろうな」


 本田がボソボソ言うと、カグヤは「このッ……‼」と勢いよく立ち上がり本田の首を両手で絞めようとするが、監視役に「ダメです」と抑えられる。


「ふざけないで‼ 私は不正なんて‼」


 大暴れするカグヤ。


「確認します」


 シールを剥がす監視役。


「そうだな……。億万長者って言ってたし……一千万くらいは払って貰わないと困る」


 本田がカグヤに請求しては、


「嫌よ‼ 誰が、誰がこんなガキに‼ こんなド陰キャのガキに‼ 一千万なんて‼ 私ッ……!! シールなんて貼ってなッ!! 私がこんなもの思い付くと思って!!?? ちょ、信じなさいよ!!」


 怒鳴り声をあげた。


 監視役が小切手に勝手にサインを書いてしまう。


「ッ……⁉ 辞めてッ⁉ 離して⁉ 離しなさい!!」


 必死に叫びながらも、カグヤはカジノの外に追い出される。


 本田は「……」と追い出されるカグヤを見届けた。


 タイマーを止める本田。



 次の対戦相手を探す途中で、志田が茅野に支払いを押し付けているのが目に映った。


「志ッ……志田ちゃん、嘘だよね……?」


 と思考停止する茅野。


 志田は「ふんッ、クラス委員なら払えるでしょ」と暴論を言ってカジノ場から去って行った。


 一年一組から二人が既に敗退――――。


 二年生の数も減って行く。 二時間後。


 ブブーッ‼


 と会場全体に大きなブザー音が響いた。


 午前の授業終了の知らせだ。


(てっきり校則違反した奴らを人体実験に使っていると思ったが……そういうわけじゃなさそうなんだよな……どちらか言うと本命は【優秀な奴】のような)


 考える本田。


(それとも真の目的は人体実験じゃないのか? となると理事長はさらなる第三者に)



 グルグルと考えている間に、本田は「邪魔」負けた二年の女子に肩をぶつけられる。


 近くにいた笹井はその二年の女子の腕を掴む。


「どう見ても今のはあなたが前見てなかったせいですよ」


 二年生を睨む笹井。


「ッチ」


 二年生の女子生徒は黙って去って行く。


「笹井」名前を呼ぶ本田。


「助けたわけじゃないから」


 という笹井に、本田は「ツンデレか」とジト目を向ける。


「はあ⁉」声を裏返す笹井。


「今時ツンデレ系ヒロインなんて」


 という本田に、笹井は「ちがうから、そんなんじゃない」と怒鳴る。



 そこへさくらがやってきた。


 相変わらず、束になった小切手を扇子のように扱いながら。


「本田くん。ひとつお聞きしたい事があるのですが……いつ私たちお付き合い致しましたの?」


 さくらは本田に圧をかけるような口調で言う。


 本田と笹井は固まった。


 映像なら白一色で表現されていそうだ。


「あーその、布田が、見てたから、とりあえず付き合った、ってこと、に」


 試合中より明らかに目を泳がせながら誤魔化す本田。


 笹井も「申し訳ございません生徒会長様‼」と何度も頭を下げて謝る。


「……まぁ。本田くんとのお付き合いなら喜んでお受けいたしますが……私が一年とお付き合いしているなんて噂が二年生中に広まって大変でしたのよ? やはり責任はとってくださらないと」


 本田に接近するさくらに、笹井は、「ちょ、ちょ、ちょっと」なんて慌てる。


 笹井は本田の上履きを踵で踏んだ後、「なんで満更でもなさそうなの」と本田にジト目を向ける。


「あらぁ♡ 嫉妬ですか?ひょっとして笹井さんって結構本田くんの事」


 さくらは楽し気に笹井を煽る。


 本田は「そうなのか」と笹井をチラッと見た。


「ふん、勘違いしないでよね」とそっぽを向く笹井。


「で?どうします、本当に付き合ってしまいますか? 楚々辺家に婿入りしたって構いませんのよ」


 本田に顔を近づけるさくらとは裏腹に、「悪い、そういうのあんまり興味が無い」とはっきり断る本田。


「はいはい、本田くん、いいから一旦帰るわよ、休憩時間なんだから」


 本田の服の裾を引っ張りさくらから引き剥がす笹井。


 遠くから見ていた布田は「あーなんかええなああいうの本田はずるいわ」と嘆く。


 すると『本田はずるいな』と声が重なり、


『あ・・・』


 布田、長谷部、ケンが顔を見合わせた。


「え……誰や」


 呟く布田に、鈴木が耳打ちで「ほら朝いたろ生徒会の」と伝え、「行くぞ」とそのまま布田を連れていくのだった。

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