四十六話『捨て駒たちへ花束を』
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数十分後。
「ふッははははははは‼ 二回、三回とゲームが続けばさすがにお前も焦りが出てくるだろう? 俺だって序盤は負けたくねぇんだ、だから弱そうなテメェを選んだ、なのになぜ勝ち続ける? 俺は楽しくなってきたぜ」
と馬鹿笑いする木部に、「序盤でやられるキャラがよく言うセリフみたいだな」興味なさげにカードに視線を向ける本田。
木部は、「お前が負ければ、俺はお前さんのオトモダチから五十万を稼ぐ事が出来る。お前は敗退だ。どーする坊主」本田を見て得意げに笑う。
後ろから、「きゃああああああ‼」星野の泣き声が聞こえる。
「ほ、星野ちゃん‼ なんで⁉ なんで私にしたの‼ もっと朝日さんとかいるじゃない‼」
絶叫する志田。
だがぎこちなく、慣れていないような怒号をあげる。
一方の星野は、「一番、一番、志田ちゃんが仲よかったから、志田ちゃんならァァァァ‼」どこかオーバーに泣き叫ぶ。
「ッふ…」
鼻で笑う本田。
木部が「仲間割れ見て笑うたァお前も性格悪いな」本田の様子を見て言う。
「人に言える口かよ」冷静に煽り返す本田。
木部は、「こいつッ…まずは礼儀ってものから教えねぇと」片手で額を抑えながら嘆く。
「弱そうに見えるが案外お前そうじゃないのか? ひょっとして裏で無双してたり」
という木部に、本田は(まぁまぁ鋭いな)と感心しつつ、薄ら笑いを浮かべた。
「ツーペア」
「フォーカード」
本田が最後に決める。
同時に、ブーッ、と本田と木部の横にあったタイマーが鳴り響き、一試合の終わりを告げる。
木部は、「ウッソだろ…‼」と崩れ落ちる。
「…二百五十万」
崩れ落ちる木部を見下ろすように額を言う本田。
「え」
木部は顔を上げた。「もっとかと思ったんだが」
という木部に、「俺が今いくら持ってるんだ。ってお前に聞いた時、お前は【先輩って言え】と俺に訂正させるほうを優先した。金持ってるなら普通に六百万だの七百万だの言えばいい話だ。でも言わなかったってことは今パッと言えるほど持ち合わせないんだろ。ただお前は二年生。今まで実践で稼いだ分、少しは残っているはずだ。ギリギリのいいラインだと思うが」
本田は静かに言い放つ。
木部は、「くッ…」 歯を食いしばった後、「もってけ」と学園の校章が入った小切手にサインを書いた。
「どーも」それを受け取り席を離れる本田。
ディーラーは机上に置かれたカードを次の試合でも使えるように置き直した。
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背を向けながらカジノ場を後にする星野は、
「チッ、クラスの中心的存在なら勝つと思ったのによ」
星野の名前が書いた券を捨てているロングヘアでキセルを蒸した女性とすれ違う。
星野は引け目を感じつつもカジノ場を後にした。
(作戦通り…私の戦いは競技祭じゃない)
ブーッと色んな箇所からブザーが鳴る度に、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
「きゃああああああああ‼」絶叫が鳴り響く。
次の対戦相手を探す笹井とすれ違う本田。
笹井は、「初日から八百万ゲットしたわ。案外楽勝ね」と乗り気だ。
「他クラスは大金を狙って生徒会長や強者に敢えて対戦を申し出ている…。これじゃあ二組三組の数も減っていくな」と返す本田に、笹井は、「一組からは星野さんが敗退。大方作戦通り。でも、なんで星野さんがわざわざ率先してその役を引き受けてくれたのかしら」と問いかける。
本田は、「俺もわからない」と答えた。
「その表情だと本当にわかってなさそうね」という笹井に、本田は、「星野はたぶん…競技祭じゃなくて別の事がしたいんだろうな」と憶測を語る。
「別の事?」
きょとん、と笹井は首を傾げるが、
「俺もわかってないから言えない」
本田は視線を逸らしながら言った。
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「お前は誰と戦った」と笹井に訊ねる本田。
笹井は、「別に。そこら辺の弱いやつよ」と答える。
「…私は今日はこれ以上のリスクを踏まないから…それと、気をつけた方がいいわ。あそこに座っている火野カグヤ先輩。億万長者だから目付けられまくってるけど…。かなり強いらしいわ。じゃあね」
髪を靡かせ体格が細い二年生の男子が待っている席に座りに行く笹井。
ちらり。横のカード置き場にある山札を気にする本田。
(こんなに管理が杜撰なのか…??)
本田はこの学園らしくない管理の甘さに内心驚く。
そのまま立ち去っていく笹井に視線を映しつつ、好奇心からカグヤがいる席に座った。
伸ばした手でそのまま、ゴソゴソ、とポケットに何かを入れる。
「あら。私と手合わせしたいと?」と口角を上げるカグヤ。
本田は、「戦ってくれるのか」と訊ねる。
「うふふ♡」と可愛らしく笑った後、「いくら私が億万長者だからと言え手加減はしていただきたいものです…」と続けるカグヤ。
「生徒会長のさくらさん、連勝し続けてるみたいですね。でも知っていました?」
カグヤの言葉に、「?」本田は真っ直ぐ視線を向けた。
「本来は私が生徒会長でしたのよ。」とカグヤは説明する。
「どういうことだ」と興味を抱く本田。
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「生徒投票では私が一位でした。私が生徒会長になれる。そう信じていたんです。さくら様はどちらかと言うと詐欺はあまり得意ではなく、影に潜んでいるような、そんな不思議なお方でした。なのでまさかさくら様が生徒会長になるとは思っていなかった。ですが彼女は理事長の娘。どういうことか私が生徒会長になると決まっていた四月、新生徒会の発表を見たら、私の名前なんて無かったのです。私は真っ先に三年の去年の生徒会長のとこへ向かいましたわ。どういうことか説明しなさいと。…でもあいつ…いえ、去年の生徒会長は仰ったのです。【理事長権限】だと。こんなの不正ですわ、」
カグヤは学園の監視に怯えもせずベラベラと喋った。
本田は、「消されかねないな」まだ何も置かれていないテーブルを眺めながら呟く。…なぜか少し姿勢がいい。
カグヤは、「いいえ。結構です。私はその覚悟を既に抱いています。どうやら二年には裏切り者が一クラスに一人いるみたいで…もう遠くない未来でしょうね。」 と静かに返事した。
「ディーラー」
カグヤはディーラーを呼んだ。
「はい」
女性のディーラーが深々と頭を下げる。
「はじめましょう。」
カグヤに言われては、本田は、「嗚呼」と答えた。
二回戦がはじまる………




