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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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四十五話『不揃いの足並み』


 カジノ前に呼ばれた一年生と二年生は、二年生を順に整列させられる。


 二組の担任が、「はーいみんな並んでー」と全員を指揮する。


 (一年の担任全員が女性なの、少し不自然なんだよな)と考える本田。


 だが二年生の教師にも普通に男性もいるため、「考えすぎか」と呟く。


 (そういえば一年って副担任がいないよな)と考える本田。


 後ろの笹井をチラッと見るが、笹井は何も気にしていないようだ。


「なに」


 こちらに顔を向ける笹井。


 本田は「いや別に」と答えた後、真っ直ぐカジノの扉に視線を戻した。


 カジノの扉が開くと、壮大な音楽が流れていた。


 だが生演奏……というわけにもいかず、明らかにスピーカーからの音源だ。


 出走のファンファーレのような豪華さ。


 はじめて入るカジノの中はまるで本田が昔サブスクで見たアニメのような世界だった。


 (凝った作りだな)と苦笑する本田。


 カジノであるにもかかわらず、豪華客船のようなステージや観客席まで出来ている。


 (佐田の言葉みたいだが、たかがポーカーをするだけでこのバカ騒ぎか)と辺りを観察する本田。


 『一、二年生は舞台に注目してください』とアナウンスが流れる。


 指示通り一、二年生たちの視線が舞台に向けられると同時に、電気が消えた。


 生徒会の長谷部とケンが舞台に現れる。



『どうもどうも三上ケンですみなさーん‼』


 ケンの登場に、二年生たちが『ワァァァァァ‼』と歓声をあげるが、一年生、特に一組たちは白けた顔をしていた。


『さーて、毎年ご来場して頂いている皆様にはもうおなじみですが、ルールを説明させていただきます‼ 我々二年生と一年生はこれから六月の期間中、毎日ポーカーで競い合いをします‼ 勝てば次の対戦に進み、負ければ勝った人が指定した額のお支払いを自分が選んだ誰かに強制させる‼ その人が払えない場合は借金の押しつけ……。その上一発でこれ以上の参加禁止です‼ くぅー怖い‼ 一年、二年両者最後のペアになるまで対戦は続きます。本来の座学・授業時間カジノはずっと期間中解放されていますので、どうぞいつでもエントリーを‼ また競技祭中はフェリーの本数が増えます‼ 何度でも遊びに来てくださいねー‼』


 とケンは手を振る。


『ご安心ください‼ 一年生に限り一回に支払わせる上限額は合計五十万が限度‼ 裏を返せば稼ぐビッグチャンス‼』


 ケンはそう言うと、高く飛び跳ねた。


『楽しくなってきたでしょ? では皆さん準備に取り掛かってくださーい♡』


 生徒たちに手を振りながらケンは舞台袖に消えて行った。


 同時にモニターでは『選手たちの最新のコンディションを紹介します』と大きな映像にクラスごとに生徒の顔と名前、ステータスが映し出された。


『券のご購入はカウンターより……期間中、半額の朝割販売もお求め頂けます』と無機質なアナウンスが流れる。


 本田は観客席の大量に券を購入している男に視線をやる。


 (一番前に持ってる券は会長の名前……他はたぶん二年生の券ばかり買ってるな)


 本田が周りを観察しているうちに、『一年生の皆さんはそれぞれ好きな席に座り初戦の二年生を待機してください』とアナウンスが流れ、本田はたまたま近くにあった席に座る。



「……ふぅん、弱そうなやつがいたもんだな。ひとつ相手させてくれよ」


 本田の正面に座ったのは、帝王風味の偉そうな口調の男。


 長い金髪のドレッドヘアが絶妙に似合っていない。


 高二から放たれる柄の悪さとは思えない仕上がりだ。


「ああ。構わないが」本田が対戦を受け入れると、「俺は二年三組の木部大介きべだいすけだ。名前ぐらいキチンと覚えてくれな」と木部が名乗る。


本田は「……本田湊だ」と静かな声で名乗り返した。


「自信ねェのか坊主」と顔を近づけて煽る木部に、本田は「正直ない」と答えた。


「ふははははははは!」と気持ちよさそうに笑う木部。


「オイ、ディーラー、はじめてくれ」と木部がディーラーを呼ぶ。


 が、ディーラーは無言で頷いた。


 一般的なポーカーのルールとは変わらない。


 強いて言えば簡易化されたドローポーカーだというところだろうか。


 ディーラーが手慣れた動きでカードを配る。


 本田は伏せられたカードを持ち上げた。


 (ワンペアか)


 強くは無いが、別に他のカードを交換するほどでもない。


 だが木部は少し気分良さげだった。


「先攻は俺だ」という木部に、「嗚呼」 と本田は頷く。


 木部は迷うような素振りも無くチップを前へ押し出した。


 本田は木部の表情に注目した。


 カードではない。人間のほうだ。


 木部はカードを一枚捨て、交換する。


 まだ余裕そうな態度。本田も悩んだ末に少しだけカードを交換した。



「本田。去年のこの祭りの事聞きたいか」


 木部は本田を観察しながら訊ねる。


 本田は「教えてくれるのか」と表情を変えないまま返す。


「去年の一年。つまり俺たちのクラスではこの祭りで大量の借金を抱えた。一人で五百万なんて大金を抱えた奴もいる……全員から押し付けられたんだ。借金を。一度負けた人間はカジノに参加する事は出来ない……にも関わらず……集中砲火。そいつはどうなったと思う」


 問いかける木部に、本田は「脱走……」と考えながら答える。


「嗚呼…そうだ」


 木部はそう言いながら、本田と同時に役を見せた。


「ツーペア」


「スリーカード」


 木部は「はぁ」と溜息を吐く。


「運がいいガキだ」とどこかへ目線をやる木部。


「木部は今いくら持ってるんだ」


 という本田に、木部は「木部先輩……だ」と訂正する。


「あ」と呟く本田。


「あ じゃねえよ」木部は呆れたように言った。


「なんだ。今年の一年は礼儀すらなってないのか」


 という木部に、本田は「……」と黙る。


 木部は「何かいいたいならいえよ」と本田に迫るが、「別に」と本田は流した。


「こーいうタイプの奴って相性合わねぇんだよなぁ」


 額に腕を乗せて嘆く木部に、本田は「先輩」と少しぎこちなく言った。


「なんだ兄弟」急に機嫌よさそうにする木部。


 本田は「……」と死んだ目で木部を見る。


 木部は次の手札も交換する。


 本田もその後に続けて交換をする。



 ゲームが進んでしばらく。負ける生徒が出てきたのか、「うわぁぁぁぁぁぁぁ⁉」「なんで私なのよ‼」

 と言った怒号が至る所でチラチラと聞こえはじめた。


 ……一年二組の女子の片方も試合を中断してまで席を立ち上がり、「ねぇなんで⁉なんで私にするのよ‼ ずっと友達だったでしょ⁉違うの⁉」と喚きながら借金先に自分を選んだ女子の頬を平手打ちする。


「違う、違うの‼ルールだから‼」


 頬を抑えながら泣き出すもう片方の女子生徒。


 本田はその様子を流し目で見つつ、まだ試合中の一組を見て安堵する。


 木部は「うっるせーな周り」と舌打ちする。


 本田は「自分の試合に集中しろ」と木部に言い放った。


 木部は「なんだとお前ッ、後輩のくせに!!!!」と感情的になるが、本田は「……」と目を逸らすだけだった。

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