表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/65

三十九話『シルバーブレットを探して』


 「さて。今日の授業は【改革】だ。【改革】。まずお前らに問う。【正義】とは何か。」


 出海奈はホワイトボードに『正義とは』と大きく記す。


 星野がその文字から目を逸らしたのを、本田は見逃さなかった。


 茅野が「誰かに求められた事を遂行する事」と真っ先に答えるが、「それは『正義』と言うより『責任』なんじゃないかと私は思う。」と出海奈は返す。


 次に増田が言う。


「…人を誘導し自分を『正しい』と思いこませてしまえばそれが正義になるんじゃないか」


 増田の発言を受けて、「つまり正義は後付けと言う考えか。あながち間違いではない」と出海奈は頷く。


 飛鳥は、「誰かを守るために戦うのが俺の正…」 とかっこつけながら言うが、出海奈は、「それで自分の神経が擦り減って『死』を目前とした時、お前はその『誰か』に文句を言わないで死ねるのか?」重い問いを飛鳥に投げる。


 飛鳥は「ぅ…」と言葉を詰まらせた。


 「じゃあ質問だ。お前たちがこの学園の理事長になったらどうする、星野」出海奈は星野に訊ねる。


 星野は一瞬だけ暗い表情を見せた。「…仲間のために、学園をよりよい方向に」と言いかける。


 だが出海奈は、「じゃあ詐欺は続けるのか? お前が一番嫌がっていたのに、不思議だな」と答えた。


 星野は、「…」黙り込む。


 次に鈴木が立ち上がる。


「正義なんて答えが無いもんをまだ高校生のガキに追及すんなよ‼ 俺たちはただの高校生だ、改革したいとか、政治家になりたいとか、そんな事思ってねぇんだよ、ただ、ただ普通に真っ直ぐな青春がしたかったんだ、なんだよ『人質』って、なんだよ『詐欺』って、俺たちはそんな事するためにこの学園に来たわけじゃない、脅されてっから仕方なく授業を受けてるだけなんだ、犯罪に加担なんてしたくないのは皆一緒、既に二人のクラスメイトの所在がわからない、このクラスに【裏切り者】がいるかもしれねぇそんな状態で、こんな…こんな授業…‼」


 鈴木の訴えに、出海奈は、「答えが無い、正解だ。おめでとう。そうだ、正義には答えが無い。正義と言うのはそれぞれの中で決着する【理想】。ある者は金を稼ぐのが正義だと言う。またある者は場を支配する事が正義だと言う。またある者は…殺人が正義だと言う。」と続ける。


 志田が「殺人が正義…?」と瞳を揺らす。


「戦時中なんてそうだよな。殺人を国家を守るための『正義』とみなされ若者が送り込まれていく。お前たちはそれを『法』と言う基準で否定するが、『法』さえ世界から無くなってしまえば、ありとあらゆる言葉で様々な事が正当化されてしまう。お前たちがいくら感情で否定しようが、その大罪人たちにとっては『正義』だった。だがそれを肯定するかしないかはお前らの倫理観だ。いま感情的になって否定しようとしているやつもいるかもしれないが、【運】がよかっただけだろ? どれだけこの学園にお前らがいようが、お前らが『殺人犯』になってしまうほど不運だった人間だとは思えない。上級国民の殺人犯も中にはいるが、そういう倫理に辿り着いてしまうのなら、私ならどれだけ環境が恵まれていようが【不運】だったと捉える。『救済』なんて易い言葉にハマるような…私の家族も」


 意味深な表情を見せる出海奈。


(先生の…家族?)


 笹井は出海奈の発言が気になっていた。「はぁー言い切ってすっきりした」 と言いながら鈴木が座る。



「つまりこれからお前たちが考えるべきなのは競技祭をどう乗り越えるかじゃない。学園をどう変えていくかだ」と生徒たちに説明した。


「言うて理事長側やろ出海奈先生も」布田が言うが、出海奈は「私は…巻き込まれただけだ。家族のせいでな」と答える。


「私が望んでいるのは理事長の目的の達成なんかじゃない。…深くは言えないが、私は『切りジョーカー』を求めている。その存在が現れるとすれば。」


 チラッと笹井に視線を向けた後、「一組からだと思っている」と静かな声で続けた。


(ジョーカー…? なんだ、この島は楚々辺家と出海奈家が仕切っていると思っていたが…やっぱり双方仲が悪かったりするのか?)本田は考える。


(仮に出海奈先生が学園と対立した思想にあるのなら出海奈先生本人は敵というわけではなさそうだな)


 出海奈にも一応の警戒をしていた本田は安堵する。


 飛鳥が、「アニメで似たような話あった気がするんだけど思い出せない」腕を組みながら思考を巡らせる。



「…後、お前ら」出海奈は生徒たちを見渡した。


「競技祭のルール知っているみたいだな、どこで掴んだ、まだ公にはされてないぞ」


 不審そうな反応を見せる出海奈に、笹井は立ち上がり、「二年生に聞き込みました。校則違反でしょうか」と問いかける。


 出海奈は、「いや、別に違反ではないが、そうか。そんな風に漏らすような上級生がいるか。さすがは笹井、頭が切れる。だが笹井にずっと聞きたいことがあった」笹井に疑いの目を向ける。


「お前…裏に誰かついてるだろ」


 出海奈の問いに、クラスが「え?」とざわざわとどよめく。


 笹井は、「いいえ」と流した後、「詐欺じっせん以外の指示等については全て私の独断で動いています。」堂々答えつつ、「ただ詐欺じっせんの配役などの指示においては指示役を自ら申し出た本田くんに委ねている部分が事実としてあります。」と説明した。


 出海奈は、「そうか、授業以外は全てお前の独断なんだな」と頷く。


「はい。」笹井はそう言うと、席に座った。



「本田」と出海奈が公開で本田に話を振る。


 本田は、「は、はい」動揺したような幼い表情を見せる。


「布田から聞いたが…お前、生徒会長と付き合ってるんだってな」


 出海奈が何一つ表情を変えずに本田に問いかける。


「えぇ⁉」声を裏返す本田。


 「何⁉事実なの!?」オーバーリアクションで驚く朝日。


「いッ、いや、ちが」焦るような表情を浮かべる本田。


 鈴木が「おーい抜け駆けで上級生とイチャイチャすんなよ」本田を揶揄う。


 飛鳥も「ふははははは‼ 祝福すべきだ‼」と高笑いをした。


「ちょっとお前ら辞めろよ‼」本田は訴えつつ、少し恥ずかしそうに俯く。


 出海奈は、「まぁ交際云々の校則は無いから勝手にすればいいが、犯罪強要されてる中でどういうメンタルしてるんだお前ら」引き気味に溜息を吐く。


 だが心の中で、(本田の反応は年相応か…)と出海奈が自分の仮説を否定した。


 笹井は本田を見ながら、(良かったわね…同級生たちがみんなあんな感じで…)と微笑む。(でも…よくまぁこんな臨機応変に対応できるものだわ…)と笹井の目はすぐさま意味深な視線に変わるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ