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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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三十八話『友情のステンドグラス』


 早朝。出海奈は職員寮の一室で目が覚める。


「…」


 ボーっと前を見つめる出海奈。


「朝か…早いな」


 と呟いて、出海奈は立ち上がりピンク色のパジャマから教師らしいジャージ姿に着替えた。


 出海奈はヘアバンドを付けて前髪を上げ、洗顔をしながら考える。


(布田に聞いた本田と生徒会長がキスしていたという情報、本当なら生徒会長と本田が何か話し合いをしていても不自然ではない…。それと星野が発熱したという連絡…職員に出回るには早すぎる…垂直に迅速な対応として誇っていいのだろうか、いや違う、理事長か会長が動いていなければあのスピードにはならない…)


 頭の中で数式のように今までに得た情報が駆け巡る。


(ただの男子高校生、それ以上でもそれ以下でもない少年が…入学してすぐ郷土資料を調べるなんて、それに奴には戸籍が無い…でも、盛田だって偽名だった、考えすぎ…か?)


 出海奈は、「⁉」と何かに気づく。


(いや…仮に盛田が《実在する知人の名義》でこの島に来ていたとしたら、戸籍の件はクリアできる。なぜ学園が簡単に籍を調べられるのかはわからないが。じゃあなぜ本田だけ戸籍がない?偽名だとして都合のいい知人がいなかった?)


 考える出海奈の脳裏に、『巡査…巡査部長…警部補…』と完璧に警察の階級を暗記した本田の姿が浮かぶ。


 鏡の前の自分の顔を見つめる出海奈。


「ふッ、私としたことが、アニメや漫画の見過ぎだな」


 出海奈は有り得ない自分の仮説に失笑した後、パソコンを開いてニュース番組を動画サイトで見ることにした。


(だが実際内調が来ていた。油断は禁物だ)



 登校時間。教室。「ほわぁ…」本田が大きな欠伸をする。


 隣の席にいた笹井が、「寝不足?」と問いかける。


 本田は「…調べたい事があったからな」と窓から外を見ながら適当に答えた。


「昨日、お前がしてた指輪。あれってなんだ」


 眠そうに適当な場所へ視線をやりながら訊ねる本田。


 笹井は「よくそんなことまでわかるわね」と引いたような表情を見せる。


 今日も笹井の手には、紫色の宝石の指輪があった。


「なんで急にそんなもの付け始めたんだ」


 と本田が問いかけると、笹井は「…決意」と何かを考えるような表情を浮かべながら答えた。


(決意…?)


 と本田が疑問を抱いていると、それを察したのか、


「私の初恋の人が私の大切な人に渡したものなの。アメジストの宝石。当時は戦争の危険すらあった中…かなり高かったみたい」と笹井が補足する。


「まぁ、その初恋の人に会ったことは無いけど」付け足す笹井に、「会ったことが無い初恋なんて変わってるな、どんな人なんだ?その初恋の人って」と続けて質問をした。


 それを聞かれた笹井は、「別に」とそっぽを向く。


「…常に誰かの事を想って動いていた人だって聞いたわ。私にとっては幻の戦士みたいな…そんな」


 泣きそうになる笹井を見て、本田は察する。


「そうか」


 本田は静かに笹井に言うと、「今日は午後雨らしいぞ、虹がかかるかもな」と意味深に続けた。


 笹井は、「はぁ?」と何言ってるんだこいつ、と言わんばかりの顔で振り返る。


 本田は「…」と教室に入ってくる星野を見つめた。



 志田が「星野ちゃん‼」と駆け寄る。


「志田ちゃん‼」と志田とハイタッチする星野。


「もう熱治ったの?」


 星野を心配する志田に、「うん♡」と星野は答えた。


「星野さん元気になってよかったよ」


「星野ちゃーん‼」


 女子生徒も男子生徒も星野を囲む。


 その波に巻き込まれながら自分の席に座ろうとする茅野を、佐田が「ちょっとこっち」と手招きして助ける。


「なんかあったのかー?茅野ちゃーん。なんだか今日顔が暗いから」


 茅野に顔を近づける佐田に、茅野は「ううん、なんもないよ、でも、少し、悲しいって感じがする」と佐田に言った。


 佐田は「感じがする?」と首を傾げた。


「ちょっとこっちもいろいろあって」茅野は佐田を心配させないために笑った。「そうなんだ」と深くは追及しない佐田。


「ね、私も…一組で…いいんだよね…?こんな私だけど。みんなの友達でいたいって、思っちゃダメかな」


 とぎこちなく言う茅野に、来たばかりの鈴木が背中を押す。


「逆に茅野は俺たちの事今まで友達って思ってなかったのかよ」


 鈴木に背中を押された茅野は、


「うわぁ‼」


 とバランスを崩しながらも照れ隠しの笑みを浮かべる。


 佐田は「そーそー。こいつの言う通り俺たちはとっくの昔に茅野も友達認定だったけどな」とグッドサインを示す。


 朝日はその様子を羨ましそうに眺めていた。


 榎本「なぁに、なぎさちゃんも青春をご要望~?」と朝日を見ながらにやにやする。


「そんなんじゃない。ただ私って嫌われてるみたいだから」


 妬ましそうに言う朝日の肩を、「こんなに私に好かれてる奴がよく言うわよ」とドンっと押した。


 その会話を聞いていた少し朝日の前に座っていた女子生徒も、「そうだぞー‼朝日ィ〜‼」と朝日に手を振った。


「ほらね?友達が多いか少ないかの違い。別に言い方きつくて外野から嫌われてたとて、内輪で好かれてるんなら最高じゃん」


 自分を励ます榎本を見て、朝日は「はじめて言われたよ、好かれてるなんて」と笑みを見せた。


「話してて思うけどアンタは別に誰かを傷つけようと暴言とか吐いてるわけじゃないんだから大丈夫よ」


 その榎本の言葉に、朝日は救われたような笑みを見せた。



 チラッと交友関係が深まって行く教室を見た星野は、周りの生徒たちと雑談しながらも、(私は…違う。でも決めたから) と一人寂し気に想うのだった。


「おーい、授業はじめるぞ」


 出海奈は生徒たちに話しかけるが、まだ教室はざわざわと話し声が聞こえる状態だ。


「はぁ」


 出海奈は溜息を吐いた。


 そして腕時計を見る。


 本田はその出海奈の行動を見つつ、「お前ら、授業だってよ、もう出海奈先生が来てる」と生徒たちに知らせた。


 生徒たちは、「あッ…」と気まずそうに席に戻って行くのだった。

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