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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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四十話『詐欺師たちの雅楽』


 授業時間──────。


 出海奈と交代した笹井は、


「今日からペース上げていくわよ。ホームページ対応班は偽投資サイトの対応。電話班は通販サイトを装って最初に集めた名簿に片っ端からショートメール送りなさい。で、リサーチ班は…」


 笹井がリサーチ班の机を見る。


「ちょっと教えろよ‼ どうやったら会長なんかと付き合えるんだ‼」 飛鳥が本田の身体を揺らす。本田は生気がない目で黙って揺らされていた。


 榎本も、「ねぇ♡本田くん、チューしてたんでしょチュー♡ 布田くんから聞いたわよー?」とノリノリの様子。「…ちょっと人の話聞きなさい。」詐欺をやりながらの恋バナ。


 普通では有り得ない光景に笹井は、(高校生らしくみんながなってきたと思えばいいけど)と心の中で呟く。


「リサーチ班は依頼をこなして調べものをするのもいいんだけど。調べた事私に共有してくれるかしら、特に本田くん」


 笹井の瞳が本田を捉える。


「はぁ」


 本田は疲れたように「なんで必要なんだ」と訊ねる。


「逆になんで笹井さんに共有してなかったのよ」


 という朝日に、「はぁ…印刷するのも怠いんだよ」と適当な理由を付ける。


「ノートに書く事だって出来るでしょ。いいから。そこだけでコソコソしないで。クラス委員に共有しなさい」


 笹井の指示に本田は、「わかったよ」と学園スマホを閉じた。


(なんで俺がやってることあいつは知りたがるんだ)


 本田は軽く疑問を抱きつつも、「やるぞ」と仲間たちに指示を出した。



 一方でホームページ対応班の鈴木は、「はーッ」

 と大きな溜息を吐き、「ログインできねぇ」と頭を悩ませる。


「誰だよこんな強固なパスワードかけたやつは‼」


 頭を掻き回す鈴木に、「俺知ってる‼」佐田が急いで駆けつける。


「別室班だったからわかる‼」


佐田はそう言うと、パスワードを鈴木の代わりに入力した。


「助かったぜ」 と佐田に笑顔で言う鈴木。


 増田は、「投資の知識ゼロなんだが…」どうすればいいのか迷う。


 次は茅野が立ち上がり、「増田くん、多分本田くんが資料持ってる」と増田に教える。


 増田は、「ふーん」と茅野に答えながら、本田がいる場所へ動く。


「本田ちょっと」 後ろから話しかける増田。


 だが本田は何やら周りの生徒とは違う英字のサイトを見ているようで、「本…田?」増田に話しかけられ急いでその画面を閉じる本田。


画面いっぱいに切り替わった海外の野球選手の画像を見て、「野球の試合の結果なんて授業中に見るものじゃないだろ…」増田は呟きつつ、「投資についての資料、本田が持ってるって茅野に言われたから受け取りに来た」と答えた。


「嗚呼…」


 本田は増田の話を聞いて「お前の私物のスマホにメールで送る」と答える。


「電子?」首を傾げる増田に、「あんまり紙で残したくないからな」と返す本田。「嗚呼、わかった…」本田の席を離れる増田。



(俺が茅野の第二のマスターになって命令を出して万が一を防げるのはいいが…。さすがに解除できずとも登録されていることぐらい気づくよな理事長も…何してるんだ…? 一応茅野のアクションのレポートが俺の学生証アプリが入っていないスマホに届くようにはなっているが、キャリアの通信は衛星インターネットサービスしかここに届かない…。ラグがあるぐらいにはいくら最新とはいえ不完全だ…。毎日理事長室には帰っている様子ではあるし…さすがに理事長がわかっていないとは思いたくないのだが、まぁバレてなかったらラッキーだけど。なんだか一筋縄ではいかないような感じがする。それに出海奈家と楚々辺家、完全に合意していないような二つの家系がなぜこの島を統治していた時期があるんだ)


 本田は思考に浸る。手が止まる本田。


 朝日や飛鳥、榎本たちは受け取った依頼の調べものを続けている。


「図書室に行きたくなる…」と呟く朝日。


「授業中に図書室なんて言っていいの?」


 朝日に聞く榎本。「わからない、でも下手な行動は禁物」 と朝日は躊躇う。


 飛鳥が、「別に授業中に終わらせろなんて決まってないじゃないかー‼」朝日と榎本の二人に言う。


「土日だって可能だぞ‼ ふはははは‼」


 笑う飛鳥に、朝日と榎本が『そうだね』と声を揃える。



 一方、対応係の星野は、佐田に「ねぇ、昨日メール来てた競技祭のルールって本当なの?」と訊ねる。


 佐田が「本当だよ、全員に均等に作戦のメールも来てる。」と星野に答えた。


「でもおかしいよな、いっつも俺らへのメールは学園からでも笹井からでも無い、意味わからん古いメールアドレスだし。例のアンケートだって俺だけもろてへんし。志田ちゃんなんか金も振り込まれてたって言うし。よーわからへんわ」


 星野に漏らす布田。


 星野は「…」 と難しい表情を浮かべた。


「そういえば…先生…盛田さんがお金…志田ちゃんに振り込んでたって…言ってたよね…でも…盛田さん…厳しくない? だって…盛田さんと茅野さんなんてほとんど接点無いじゃない…」


 不自然な点を並べる星野。


 佐田が「確かに…言われてみれば」と考え込む。


 布田が、「じゃあなんや星野。誰がなんのために俺らにこんな指示出してまで」と星野に訊ねる。


 星野は「いるのよ…このクラスの誰かに…盛田さん以外に」と言いながら詐欺をしているクラスメイトたちを振り返る。


「【裏】の顔を持って動いてる誰かが」



 星野の言葉に、茅野が「で、でも。星野さん。そんなに疑心暗鬼にならなくても大丈夫だよ。保証はないけど、私たち友達だから、…信じてほしいな」と今までの自分に引け目を感じているような言い方で返した。


 星野は「そうだといいんだけど」と言いながらも、茅野の励ましを受け入れる。


(これでいい…布石を打っておけば、私に疑いは向かない…寧ろ私がクラスメイトを疑っているような立場に行ける…私だって、みんなを裏切るような事、したくはないけど。わかっちゃったから。楚々辺理事長が、何をしようとしてるのか。誰のために動きたいと願っているのか。知っちゃったから)


 星野の心情とシンクロするかのように、島に静かに雨が降り出した。

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