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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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三十二話『一年一組の号哭』


「追い込んだ…?」とホノカに訊ねる本田。

ホノカは、「嗚呼」と何処か寂しそうに笑った。

「私が今日お前の誘いに乗ったのはただ一つ。夜叉鏡をお前に理解してほしかったからだ、でも…その顔じゃ無理そうだな」


ホノカは本田の怒りを堪えるようなだがそれを自覚できていないような表情を見て呟いた。


「なぁ、本田。お前は夜叉鏡と似ているようで似ていない。お前に奇跡は起こせない。…あと純粋な疑問だがお前私の連絡先をどこで」と既に立ち去ろうとしている本田の背中にホノカは声をかける。


本田はズボンの両ポケットに手を入れ、ホノカに背を向けたまま「夜叉鏡を全肯定するのか?」とホノカに問いかける。


ホノカは「お前は夜叉鏡を全否定できるのか」と質問をぶつける。


「お前がさくらに勝てないところはそこだ」とホノカは余裕そうな声で言った。


「お前は俺の敵か」と訊ねる本田。


ホノカは「敵・味方なんてありふれた概念に私を配置させないでくれ。敵にも味方にもなりうる存在だが…私は少なくともお前には【無害】だ」と続けた。


本田は黙って屋上の扉を開けて去って行く。


ホノカはその姿を在りし日の夜叉鏡と重ねた。


そして十字架のネックレスを空に翳す。


「良かったな夜叉鏡…お前の生きた時代にこいつがいなくて」


ホノカはそう呟くと、屋上の扉を開けて静かに自分の教室へ戻った。


 一年一組。


本田がリサーチ班の席に戻ると、榎本が「長かったね」と笑う。


「ひょっとしてうんこ?」と朝日は本田に訊ねた。


本田は「そういう下品な事を容易く言うからお前って嫌われてるんだな」と本田は冷静に分析して朝日に言う。


朝日は「ぐぬぬぬぬ…」と悔しそうにする。


飛鳥が、「オイ、本田。顧客はまだゲットできていないが着々と拡散されてきてるぞ」と本田に画面を見せる。


「いい傾向だ。何かしたのか」と本田は飛鳥たちに問う。


「朝日がプロモーションってやつで広告打ったらいいんじゃないかって」と飛鳥が説明する。


「○○日経過後からしかみたいなルールあるんじゃないか」と言う本田に、朝日は「いつの時代のなんのアプリの話してんの?」と切り返した。


「え」と本田は呟く。


「ひょっとして本田くんここ来るまでロクにそうゆうSNSとかってした事なくて親から聞いたようなそのままのイメージで話してない?」と本田に問いかける朝日。


本田は「いいから作業に集中しろ」と流す。


榎本はにやにやとその様子を眺めた。


教室中を巡回したまたま通りがかった笹井が「へぇ、意外と本田くんってそういうの鈍いのね」と眺める。


榎本が「ちょっと嫁来たよ」と本田に言うが、「こんなの嫁さんというより女王様だろ」と本田はさらっと言う。


笹井は「あら面白い事言うじゃない」と鋭い視線を本田に向ける。


朝日が「ねぇ、対応係はいまどうなってるの」と笹井に訊ねる。


本田も、チラッと対応係がいる席を見た。


「ボチボチってとこかしら。初動より大金が舞い込むような気配は無いわ。みんな試行錯誤よ。そっちは発展あったの」と朝日に問いを返す。


朝日は「一応プロモーション機能でやったんだけどねー」と溜息を吐きつつ、「依頼はまだ」と笹井に答える。


「そう」


笹井の素っ気ない返事に、朝日は「やっぱあなた苦手」と笹井に言う。


笹井は「苦手で結構よ、私は生徒同士で馴れ合いなんてする気ないから」と答え髪を靡かせて美しく去って行く。


「ねぇなんで本田くんって笹井さんとうまくやれてるの」と朝日が本田に訊ねる。


本田は「…」と考える間を一拍置いた後、「別にうまくはやれてない」と答える。


榎本が「え?傍から見ればいい感じなのに」と言うが、「どの辺りが」と冷めた視線を榎本に向ける。


「まったく、素直じゃなーい」と退屈そうな榎本。


「…」


本田はとりあえず女子は無視しつつピコピコ鳴る私物のスマホに目を向ける。


【さくら様からお前のアカウント聞いてラビィのグループ作ったぞ‼】と言うメッセージと、生徒会の三上、長谷部からの膨大なスタンプラッシュ。


(どいつもこいつも…)


立て続けの面倒事に本田は怠そうな表情を見せる。



 そして終業のチャイムが鳴った。


同時に「うわあああああああ‼」と布田が泣き崩れる。


「あかん、目標の一千二百万、全然到達できひん、まだ八百六十五万や、目標達成せなクラスメイトから一人の死人がッ…」 布田の震えた声。


「盛田助けてェェェ…」と布田の声により絶望的な雰囲気が教室中に漂う。


「一番助け求めてんのは盛田だろ」と言う増田に、布田は「ほんまに…俺ら、盛田助けに行かんくてええの…?」と声を震わせる。


鈴木が「一人のために俺たちで助けに行って俺たち全員死ぬような羽目になったら終いだろ‼それに生きてっかもわかんねぇ盛田のために侵すリスクにしては代償がデカすぎる‼」と立ち上がりながら叫ぶ。


星野が、「誰かを騙し続けるの辛いよ…」と限界そうな声で言った後に、両手で顔を覆いながら泣き出した。


(鈴木ってリスクとかで考えられたのか意外だな)本田は心の中で感心する。


朝日も立ち上がり、「今は…試練の時なんだと思う、ここを乗り越えてしまえば、きっと‼」とクラスを励まそうとするが、星野が「ここを乗り越えるために何人の被害者が産まれるか考えた事ある⁉」と叫ぶ。


「ちょっとみんな落ち着いてよ」とクラスメイトたちを宥める茅野。


志田は、「星野ちゃん」と星野の服の裾をきゅっと掴む。


星野は瞳を揺らしながら座り込んだ。


「本田、少し作戦があるから聞いて欲しい、明日の放課後、お前の部屋に行ってもいいか」と飛鳥が本田に耳打ちする。


「優良な作戦なら聞いてやる」と本田は小声で飛鳥に返した。



 出海奈が教室に入ってくる。


「…会話を聞いていたが。」


出海奈はメガネをクイっとかけ直す。


「まだ五月だって余裕あるだろ。そんな焦る事じゃない」と教卓前で腕を組みながら言う。


「だって死ぬかもしれないのに‼」と言う星野に、出海奈は「誰が回避できない死だと言った。この場合は校則違反の制裁死じゃない。なぜ抜け道を探そうとしない?お前らは天才なのかバカなのかわからないな。助言だ。金は溜めておけ」と出海奈が生徒たちに伝えた。


「え…?」と志田が出海奈を見つめる。


「お前らは【目標未達ならだれか一人死ぬ奴を選べ】と言われてそのまま言う通りにするのか。さすがは教育が行き届いてるいい子ちゃんたちだな。国はまさにそういう人材を欲してるんだ。そのままでいいのか?社会のルール、常識に柔軟に対応するだけ。そしてみるみるうちに目が死んでいくだけ。令和の時代の嫌な遺産を引き継いいるといった感じだな…。まだ余裕はある。再度言う。金を溜めておけ。使うな」


出海奈の助言に、星野は「…金…」と呟く。


鈴木は「バッカヤロー‼稼げてねぇから…」と言うが、出海奈は「溜まっている分はあるだろ」と冷静に返した。


志田は「なんなのよ、従えって銃向けたくせに」と愚痴る。


ただ「…」と出海奈の発言の意図を考える本田。


「今回の目標未達の件だけじゃない。来る競技祭の事もだ。金は溜めるに越したことはない。なぜ学食が無料だと思う?最低限の食にまで金を使っているとこの学園では金が減る一方だからだ。なのに文句言って本土でうまい飯食ってるような奴らもいる。…まぁいい。私は言いたい事は言った。だがこれが出海奈が言った事だと洩らすな」


生徒たちに伝えた後、「学園スマホを回収ボックスにいれて解散」と生徒たちに指示を出した。


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