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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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三十話『真実と事実』


「今日の座学の内容だ。マニュアルの五月のページには無いことだ。競技祭も少しずつ近づいている中、私が真っ先にお前らに教えたい事がある。それは【真実を見極める方法】だ。」出海奈の切り出しに、生徒たちはざわざわと近くの生徒と耳打ちする。飛鳥が「真実はいつもひとつ‼」と大声で叫ぶが、「よくそんなアニメ知ってるなお前…」と溜息を吐く。「そりゃあ我が日本国が生んだ最大の名探偵…」と飛鳥が言う最中に、言葉を遮るように出海奈が「真実は存在しない」と腕を組みながら言った。



「へ⁉」と飛鳥が大声をあげる。出海奈がホワイトボードに【6】を書いた。笹井は「?」とホワイトボードを注目する。「これはなんだ」と生徒たちに問う出海奈。「ろ、ろくです」と朝日が少し困惑しながら言った。布田は「そ、それ以外のなにがあんねん」と動揺する。「じゃあ逆から読んだらどうなる」と少し笑みを交えながら言う出海奈。



出海奈は【9】の文字を書いた。「それがなんだっていうの⁉」と志田が立ち上がる。星野も、「さすがに、それくらいわかりますけど…」と困り果てていた。「つまり反対側から見て9である事も、本来の数字が6であることも正しいんだ」と言う出海奈に、「じゃあ真実が二つあってゼロってわけじゃないな‼」と鈴木が言う。



「嗚呼、傍から見れば、な」と出海奈は続けた。「当人たちはどうだ?反対側から見ているやつは【6】であるはずの数字を【9】だと思い込んでそれを訂正しようとしない。なぜならそいつの世界では正しいからだ。もちろん、正位置から見ている人間は【6】だと反論する。正位置から見たものは6で間違いがないからだ。つまり争いは双方の辿り着いた真実、つまり思い込みで発生する。6か9か。これは実はどちらも正しい。つまり全ての事象において【真実】を定義できるのは結局前も話した通りに個々の前提と情報の集合体だけだ」出海奈の言葉に、増田が腕を組みながら「なんだか難しくてわからないな」と険しい顔を浮かべる。「いずれわかる」と出海奈は続けた。本田は(思い込み…)と心の中で呟く。



出海奈は、「問題だ。英雄。と呼ばれる人物がいた。そいつはある日死んだ。何者かに殺されて。その場合、英雄は【可哀想な被害者】として後世に語り継がれる。だがその英雄が活躍した目立った証拠は残っていない。あるのは断片的な証言だけ。だが大衆が感情移入するのは殺人犯ではなく【英雄と呼ばれた】という前情報がある被害者だ。つまり、自分の中にある情報でしか人は判断しない、殺人犯の生い立ちなんて、まず見ない、なぜなら【倫理】と言う壁でブロックするからだ」と例え話をした。笹井は「…」とホワイトボードを真っ直ぐ眺める。



(なんだか全貌がそっくりじゃない…なによこの話…)と笹井は疑問を抱く。「つまりいずれいまお前たちに教えた【真実】は思い込みである事が活きる時が来るはずだ。そして【真実】なんかより必要なのは【事実】だ。お前たちが辿り着くものより、実際の記録。発生した事。 に目を向けろ」



出海奈の説明に、本田は(事実と真実…。この話は…俺は[はいそうです]と素直に聞けない話題だ)と気難しい顔をする。その表情の変化を、笹井はボーっと眺めていた。「いつも通り持ち場につけ」出海奈の言葉の後、笹井と交代し出海奈は教室を後にする。



生徒たちは持ち場に移動した。笹井はメモを見る。「注文住宅会社の偽サイトによる詐欺。尻尾を捕まれずにみんなうまくやれてると私は評価するわ。でも、五月の目標金額には程遠いのが現実ね…お金を増やす事と怪しまれるような情報を落とさない事、私たちはこの二つを両立させなきゃいけない…」悩む笹井に、朝日が「ちょっと意見あるんだけどいい?」と手をあげる。「何かしら」と笹井は朝日を見る。「私たちリサーチ係が別途調査依頼を外部から受けて詐欺とは違った形でもう一つの資金確保が出来る場を作るってどうかしら」朝日はチラチラっと少し下を向きながら何かを考える様子の本田を白々しく見る。笹井は、「はぁ…」と呆れたように溜息を吐いた後、「勝手にして頂戴」と承諾し、ホワイトボードに向き直る。



布田が、「へぇ、朝日って偉そうなだけ思っとったけど案外俺らん事考えてくれてるんやなぁ‼」と声をあげる。朝日は「い、いや、べつにそんなんじゃ」と戸惑うが、榎本も「朝日最高―‼」と後ろから歓喜の声をあげた。笹井は、(また本田くんが何かしたわね)と本田のしれっとした態度から見抜いている様子。本田はチラッと笹井に流し目を向ける。笹井は、むすっとした表情を本田に返しつつ、「じゃあ、取り掛かって」と対応係の机の方へ消えていく。



朝日は、「こ、こんなんでよかったの」と本田に言うが、「嗚呼」と本田は淡々と答える。「別にそれがしたいなら本田くんが言えばいいことじゃない」と朝日は本田にツッコむが、本田は「お前に発言させてお前が二度、三度と前に出て目立てるように構築したほうがいいだろ」とさらっと言った。榎本は「私のノリも大正解―♡」とにやにやする。飛鳥が「なんだか秘密結社みたいだ‼」と大声で叫びながら立ち上がる。そのせいで布田や茅野がチラチラとリサーチ組の席を見つめた。「はぁ」と飛鳥の服の裾を優しく引っ張り座るように促す本田。飛鳥が気づき席に座る。「こっちはこっちであいつらに協力するぞ」と本田が言っては、朝日、飛鳥、榎本は『うん‼』と答えた。

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