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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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二十八話『海の中で流れる鰭』


笹井側の監視役と茅野側の監視役合計四人が生徒寮に笹井と茅野を送る。


茅野は「お邪魔しまーす♡」とスクールバックを放り投げ中に入って行く。笹井は茅野が投げたスクールバックを丁寧に廊下の端に置いた。


「ねぇねぇ、聞きたい事あるんだけどさ」と言う茅野に、笹井は「何かしら」とマグカップにコーヒーを入れながら答える。


「茅野さんも飲む?」と笹井が聞いては、茅野は「じゃあミルク頂戴?」と笹井にお願いする。笹井は「いいわよ」ともう一つのマグカップにコーヒーとミルクを入れた。


「でね、聞きたい事って言うのは、笹井さんと本田くんって普段どんな話してるの?なんかいつも二人でいる事多いなぁって」と茅野は笹井に探りを入れる。


「笹井さんって本田くんが好きなんじゃないかなって」と言う茅野に、笹井は少し流し目を向け間があった後、「どうかしら。意識はしているかもね」と答える。


同時に、(本田くんに対してこんな事言うのは屈辱的だけど相手は茅野さん。つまり学園側の内通者で監視役。やっぱりこうやって探りに入れてくるための誘いだと思ったわ。だから下手に見抜かれるよりこっち路線で考えて…最悪噂になったとしても本田くんの逃げ場を失くせばそれに便乗して私が聞きたい事――――。)と笹井は頭を悩ませる。



茅野は「へ?な、なんか分析的に笹井さんはいや、その、もっとなんて言うか、相棒みたいなポジションで…」と混乱する。


笹井は「どういう相棒だと思ったのかしら、私が彼と手を組む必要性は?」と問いかける。


茅野は「いや、その」と目を泳がせながら、「だって私をクラス委員にって考えたの、笹井さんじゃなくて本田くんのアドバイスじゃないの…って私は…」と頭の中で情報を整理する。


「それで?茅野さんをクラス委員にした場合の本田くんのメリットは?」と茅野に問いかける笹井。


(彼女が本当に黒なら自分が学園側のエージェントだから、なんて言えない。私を追い詰めたくてもできないはずよ)笹井は茅野の表情を一つ一つ観察する。


「あ、な、ないよね」と言う茅野。



笹井は「ねぇ、あなたって知らずにこの学園に来たの?」と茅野に訊ねる。


茅野は「知らなかったよ?何にも」とここだけやけに不自然にさらっと答えた。


笹井は「そう」と流す。


茅野は「つ、つまり、つまりだよ?笹井さんは少し本田くん意識してるってことでいいんだよね」とどこか嬉しそうに言う茅野。


笹井は「広めないでちょうだいね、まぁバレても本田くんがやりづらくなるだけだけど」と答える。


茅野は、「…」と少しの間を生んだ後、「わかった♡」と笹井に答える。



「ねぇライブのディスク持ってきたんだーせっかくだし一緒に見よ」と言う茅野に、笹井は「用意周到ね」と答えた。


「だってお友達のお部屋に行くんだもん♡」と言う茅野。


だが笹井は先ほど茅野が飛ばし、笹井が丁寧に置き直したスクールバックに目を向ける。


(なんだか…茅野さんも純粋な裏切り者というよりは…利用されてしまったかわいそうな立場って感じね)と笹井は心の中で考えるのだった。



ところ変わって男子寮。本田は生徒会からの手紙を手に取り、内容は気になるので開けてみることにした。


【さくら様と話した内容を教えてくれ】


案の定の内容に、本田は(生徒会内部でも通達されてないのか?)と意外に思う。


本田は脳裏で、さくらに持ち掛けられた取引を思い出す。


『笹井さんの命を諦めて下さったらあなたの個人情報は保証しますわ』


あの時のさくらの視線、声色、表情。


本田は、(笹井を切り捨てる事ぐらい、できたはずなのに)と考えるが、四月、笹井に言われた『私を守って―――』という言葉と、笹井に三年の就職先の傾向を伝えた時の『お父さん―――‼』という叫びが交差する。そして出海奈が彼女の名前を聞いた時、『笹井?』と微妙な反応を示した事も。情報の断片が本田の脳裏で錯綜する。


「…」


本田はスマホを眺めて考える。(笹井がこの学園に来た時、無断でフェリーに乗った。だからフェリーの部屋は用意されてなかった。乗り込むにしたとしても計画性が無い、制服などを揃えたにしても願書ぐらい…普通は先に出すはずだ…。別の学校に願書を出した期間があるくらいには迷っていた?それとも直前まで笹井は誰かに島に行くことを反対されていた?)


本田は少し指を震わせながら、スマホで【笹井 事件 事故】と入力し検索する。


(…関係無さそうな同姓同名ばかりだな)と本田はつまらなさそうな表情を浮かべる。


(ん?)


だが本田は、念入りにスクロールを続け、時期がかなり光道教のパンデミックと重なるが一見関係なさそうな一つの記事に辿り着く。


【警察官 路地裏で焼死 焼肉屋の火災に巻き込まれたか 被害者の笹井警部補 他死傷者多数―――――】


本田はその記事を「…」と眺める。


(焼肉屋の火災…非番か?にしては…路地裏で焼死?)


本田はその記事をブックマークし保存しておく。そして自分から非通知に電話をかける。


「椛島さん」本田は椛島の名前を呼ぶ。


『嗚呼―――。お前か』と椛島が電話に出る。


「笹井警部補について調べてほしいんですが」と本田は椛島に頼む。


椛島は『笹井警部補?なぜ今更』と怠そうな反応を見せる。


「お願いします」


本田は有無を言わずに要件だけ伝え電話を切った。


「…」となにかを考える本田。


(いや、それよりもまずは笹井をどうするか考えないとな…)と心の中で呟きながら、本田はペンを用意し六月のカレンダーに〇を付けた。日付の下には【競技祭】と本田の手書きで記されていた。

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