二十七話『二人の騎士と陰の悪魔』
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「大変や大変や‼」布田が大声をあげながら教室に入る。出海奈が、「うるさい!」と布田を叱る。「本田が、さ、さくら会長と」と布田が言うが、本田は黙って席に座りに行く。「あああああああかんあかんあかんあかーーーーーん‼」と混乱状態になる布田。布田は急いで本田の席に駆け寄る。「おまッ、ひょっとして、笹井が好きだって思ってたけど、かいちょ…」とパニックになる布田。出海奈が、そんな布田に銃を向けながら「座れ‼」と命令する。布田は「ひぃッ‼」と怯えながら席に座った。
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「はぁ」と溜息を吐く出海奈。「何があったか後で聞くから」と言う出海奈に、布田は「本田に殺されそうでいややああああ」と叫ぶ。詐欺途中の教室。本田はリサーチ組の席に座る。「俺いない中なに調べてた」と言う本田に、朝日は「別に、出海奈先生の指示通りに集めた生徒のデータの入力、詐欺とは直接関係ない作業やらされてただけ」と答える。ふぅん」と自分から聞いたのに興味なさげな本田。志田が、「てか実践で先生いるって珍しくない?」と出海奈に言う。出海奈は「全員が揃ったら連絡事項を言おうと思って待っていたんだ」と説明した。「連絡事項?」と茅野が首を傾げる。「六月の競技祭についてだ」と出海奈が続ける。「全員一旦手を止めてこっちを見ろ。この学園では毎年六月、【競技祭】と言う全校生徒トーナメント大会が執り行われる。そこで競われるのは、主にカジノ」出海奈の説明に、生徒たちはぞっとする。「カジノ?」ざわざわと教室中がうるさくなる。
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「静粛に」出海奈はそう言うと、「二年生と総当たりでカジノで戦うことになる。上手くいけば大量の資金を獲得できる絶好の機会、この一学期最大のチャンスを逃せば、【死】…。で済めばいいが、生徒会から不利な条件を叩きつけられる。去年の競技祭でぼろ負けしたクラスは、全員の現在の資金を没収されると同時に、多額の借金を背負うことになった。こんな事になればクラスとしての機能は停止する。」出海奈の説明に、朝日が「ここの三年生って一体」と疑問をぶつける。出海奈は、「詳しい事は言えないが、三年生になると就職に向け詐欺ではない【全く別の事】を強いられる。とでも言っておこう。まぁもちろん、軽く詐欺を自習のようなノリですることもあるが。」と説明する。本田は、リサーチの手を止めないまま、出海奈の話を耳だけで聞く。笹井はそんな本田の様子をたまたま近くにあった席に座りチラッと見ながら、(就職…)と心の中で呟き、以前本田が進路が製薬会社や研究所ばかりと言っていた事を思い出す。(まさかね)と笹井は頭で一つの仮説を作るが即座にその考えを自分で否定する。
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「私が心配しているのはお前らがカジノで勝つか負けるかじゃない。今ほど統一出来ていれば勝てると思っている。ただ私は楚々辺からこのクラスに学園側の監視者が入っていることも知っている。情報が学園側に漏洩すればクラスが疑心暗鬼になる懸念がある。事実、貴様らは盛田の件で他クラスより先にそのフェーズに片足を突っ込んでいる。勝ち負けではない領域からの崩壊さえ防げば。容易に勝てる試合だ。私はお前らならそこも乗り越えるとは思っているが、総じてノイズ要素が多い。私は教え子の中から死者を出したくない。既に出てしまった後で言う事でも無いと思うが。私はこの学園のやり方全てに賛同しているわけではない。学園側の契約で教師は生徒同士の作戦に深く介入することは出来ない…。とにかく、私が今日伝えたかったのは近いうちに競技祭があると言う事だ。頭に入れておけ。」説明すると出海奈は教室から出ていく。星野に「ちょっと布田くんこっち来て―‼」と呼ばれ「な、なんや?」と対応係の席へ移動する。朝は、「ねぇ本田くん」と本田にスマホの画面を見せる。「ん?」本田はそのスマホを覗き込む。
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「出海奈先生に頼まれた作業とは別に自分のスマホでもコロナについて調べてみたんだけど。不可解な点がやっぱり多いの。まず当時のユーチューバーが重要人物の名前を出しただけで動画が消されてしまったらしいのよね、そのユーチューバーのブログを見ると後のパンデミック?よくわからないけど。の陰謀論なども扱ってたらしいんだけど、全部運営に消されちゃったんだって。なんか言論統制されてそうじゃない?」朝日に言われては、本田は「すぐ履歴を消せ」と焦り気味に朝日に言う。「なんで」と真顔になる朝日のスマホを本田は奪い、勝手に履歴を消す。朝日は「な、なによ」と本田を不審に思うが、「それはお前が調べるには危険すぎる」と続ける。「だってコロナについて調べてって言ったの、本田くんじゃない」と言う朝日に、本田は「俺の指示範囲外の行動はするな」と釘を刺す。朝日は「どういう事情があんのか知らないけど」と言いながら本田から返されたスマホを受け取る。(下手なベクトルで頭が回るやつだ)と朝日を見ながら心の中で呟く本田。星野が「やばい…百万…二百万…‼」とスマホを見ながら呟く。その声に鈴木が、「どうした?」と星野に駆け寄る。星野は「違うの、流れるようにお金が入ってくるの‼」と怯えたような表情で言う。
「今さらどうしたんだよ星野、俺たちがやってきた事じゃないか」と言う佐田に、「だって、これ全部…私たちが人を騙して」と星野が言う。罪悪感に駆られる星野を見つめる本田。星野は「いいのかな…本当に…こんな事続けて」と悩む。榎本が「ねぇ、なぎさ、あの子やばくない?今更すぎる」と朝日に振る。朝日は「適応力低いのかもね」と榎本に言った。飛鳥は「ははははははは‼悩める民よ、みんなで渡れば怖くないって奴さ‼」と教室に漂う悪い空気を切り替えに行く。「うるせぇ飛鳥‼」と鈴木に怒鳴られ明らかにしょんぼりした顔で座り込む。本田は(他クラスの状況が知りたいな…たった六時間のうちに覗きに行けるものでもないし…部活動組に接触させるか…いや…朝日を使って口が軽い女子経由で…)と考え込むのだった。
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チャイムが鳴ると同時にその日の授業が終わる。帰り道、スクールバックを手に取る本田に、笹井が「ちょっと本田くん、今日いいかしら」と話しかけるが、本田は「悪い」と断り部活に行こうとする朝日を追うように教室から立ち去る。笹井は(急に付き合い悪くなったわね)と本田が去った方向を見ながら心の中で呟く。今度は茅野が、「ねぇ笹井さん、今日生徒寮遊びに行っていいかな?」と笹井を誘う。「…」と笹井は一瞬迷った後、「構わないわ」と答えスクールバックを手に取り席から立ち上がる。本田は下駄箱で朝日の肩を掴み引き止める。
「きゃあッ‼」朝日は振り返る。「な、なに」と本田から目を逸らす朝日。「確か今日はじめて部活に行くんだったな」と本田は朝日に言う。「なんでスケジュールまで把握しているのよ」と訊ねる朝日に、本田は「張り紙がずっと教室にあるだろ」と答える。「真面目に読んでるのアンタくらいよ」と朝日は少し本田を気持ち悪く思ったのかツッコむ。本田は「朝日、他クラスの女子と接触してくれないか、その結果を明日俺に伝えろ」と朝日に指示する。
朝日は「他クラスなんて交流一切な」と躊躇うが、本田は「適当に話すだけだ、友達増える機会かもしれないぞ」と朝日に友達が少ない事をいいように扱う。朝日は「はぁ…、これで私が白い目で見られたら責任とってよね」と本田に言うが、本田は「その場合はただお前がコミュニケーション能力に欠けているだけじゃないか」と冷めた目で朝を見る。朝日はギクッっと図星を突かれたような反応をしつつ、「はームカつく、でもやらなきゃノート晒されちゃうし…」と愚痴りながら下駄箱を後にする。本田は、(一先ずはこれでよし…)と安堵し、自分の上履きを手に取るが、その中にレターセットが。【生徒会 長谷部浄 三上ケン】 と書かれた紙を見て、めんどくさそうな表情を浮かべつつ、本田はそのレターセットをその場で読みはせずに一応は持ち帰るのだった。




