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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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二十五話『俺もまた……』


笹井は本田の一瞬の表情のズレも見逃さないと本田を観察する。だが本田は表情の変化すらない。「嗚呼―――それならただの中学校の先輩だ。俺が一人で寮生活するからって心配して電話かけているんだ」と本田はそれらしい理由を作りその場をやり過ごす。「えっ…先輩?」と予想外の答えに戸惑う。



笹井は「でもそれなら呼び方が椛島先輩とかになるんじゃない」と本田に言うが、本田は「さん付けで呼んだらダメなのか」と表情ひとつ崩さない。「い、いやダメってわけじゃないけど」と目を逸らす笹井。「私の勘違いね」と笹井は考え直す。


「まさか本気で俺がスパイかなんかだと疑っているのか」と本田は冷ややかな視線を笹井にっ向ける。笹井は「少しだけ、何も確証はないけれど」と答えた。「あなたってやたら学生ぽくないっていうか、不自然な事、結構多いから」と言う笹井に、「よく言われる」と本田は答える。


「少しぐらい楽しそうに学園生活送ったって」と言う笹井に、「お前も楽しそうに学園生活送っているようには見えないけどな」と言い返す。


笹井は「…」と黙り込んだ。「まぁ」と本田は言った後、「お前にそんな疑いをかけられるなんて心外だ。俺はお前に頼まれた通りに守るよう動いてきたはずなんだけどな」と続ける。笹井は「ごめんなさい」と素直に謝る。



「呼び出した理由はそれだけか」と言う本田に、笹井は「…」とまだ納得いってなさそうな反応を見せる。


「ねぇ、ちょっといい」帰ろうとする本田に笹井は、「盛田さんの事、どう思ってたの」と続ける。


「なんで盛田なんだ」と振り返る本田。「盛田さん、あなたに接触していたようね。二度」と笹井は本田に問いかける。


「なぜそれを」と本田はジト目を笹井に向ける。笹井は「下駄箱で茅野さんに聞いたの。盛田さんと本田くんが秘密の話をしたりしていなかったかって」と答えた。


「そしたら茅野さん。盛田さんがなぜか男子寮の食事を回収しに行くのを見たって」と笹井は言う。本田は「そうか」と少し笑みを浮かべた。



「なんで笑ってるのよ」と本田を睨む笹井に、「そんな盛田を茅野が見ていたって不自然だろ。普通は生徒寮にいるはずなのにまるで盛田を監視していたみたいじゃないか」と本田は答える。


笹井は「⁉」と勘付く。「つまり…茅野さんは」と考えるような仕草をしながら本田に言う笹井。


二人を窓から差し込む夕焼けが照らす。


「笹井。大活躍だな」本田に褒められた笹井。だが喜ぶような素振りも無く、「じゃあ佐田くんはほぼ白ね」と情報を整理する。


「まさか、あなたそこまでわかってて茅野さんをクラス委員に」と言うが、「べつに佐田でもよかったけど」と本田は答える。


「より疑わしい茅野をクラス委員にしたほうが情報は落ちるだろ」本田の言葉に、「本当にあなたそういうのが本職みたいね」と笹井は疑う。


「本職レベルでも俺には敵わないだろうな」と本田は少し気分が良さそうな反応をする。


「会長には負けたくせに」と言う笹井に、「やめろ」と本田は流した。


「あなたって図星突かれたらわかりやすいから反応から見るに本当に椛島さんは先輩なのね」と笹井は笑った。



「まだ疑ってたのか」と言う本田に、笹井は、「ごめんなさい、でももう晴れた」と謝りつつ、もう本田を疑っていないと撤回する。


笹井は「ねえ本田くん」と本田を呼んだあと、「茅野さん、どう対処すればいい?」と本田に問いかける。本田は「…」と考えた後、「とりあえずは今までの作戦通りでいい」と答えた。笹井は「わかったわ」と頷く。



本田はその後監視役の男二人と合流し、生徒寮へと戻って行く。本田の部屋。あれから資料が増え、ドキュメントファイルがずっしりと並べられていた。


筆記用具、クリアファイル、大量の書類。充電中の学生証アプリが入ったスマホと、数年前の型のもう一端末。ショルダーバッグは黒のメッセンジャーバッグ。クマのキャラクターのICパスケースがぶら下がる。



非通知からの着信。


『た…本田、お前に言われた通り、遠州煉獄島の出海奈家・楚々辺家の権力者二家について人伝いで詳細を調べた。決定的な情報は得られなかったが、まとめたレポートをお前に送る』椛島だ。


椛島からの連絡を受けては「あなたは仕事が早いですね」と本田は微笑む。スマホをスクロールする指が、巧みに動く。


真剣な本田の目。椛島は、『盛田の件はこちらにも情報が入った。お前にとっていい協力者になれると思ったのだが…情報調査室側の指示が下手だったと言うしかない結果だ。盛田は直前まで暴徒について調べていたようだ』と説明する。


「暴徒…研究所じゃなくて」と言う本田に、椛島は『その過程で知ってはならないことにたどり着いたんだろう』と答える。本田は「…」と頭を悩ませる。『送ったレポートをよく読んでおくんだな』そう言うと椛島は連絡を切った。



そして洗面台に行き、目眩に座り込む。(…そんな…俺もまた…)額に手をあてながら瞳孔を開き倒れる本田。本田が電源を消したはずのスマホが、スリープモードだったのか通知とともにひとりでに立ち上がる。


本田が見ていたレポートと同時に送られてきた光道教設立時の号外。【ついに来た、救済の時が】と大きな見出しと共に、夜叉鏡の亡者と救済の女神が設立時から大量の信者をつけて凛々しく中央に立っている写真が大きく映っていた。

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