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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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二十四話『だれなの?』


「はぁ…はぁ…」必死にスマホを動かす星野。

何人かが電話応対で欠けて教室にいない。

星野はメッセージをひたすら書き、その行動に疲弊していた。


「やっぱ私向いてないよ」と落ち込む星野。


そんな星野に佐田は、「向き、不向きじゃないんじゃないか、こういうの」と励ます。


「信頼さえされれば」と言う佐田に、星野は「信頼、信頼…」と少し自分を追い詰める。


「わたし…やっぱり詐欺なんて人を騙すような事きらい」と頭をがっくり下げて呟く。


「だって私…こんな悪い事いままでしたことないんだもん」と言う星野を、別の班の志田が見つめる。


志田は星野の様子を見た後、少し切なげな表情を浮かべた。



「志田?」鈴木が志田の名前を呼ぶ。


「どーしたよ。志田にしてはボーっとしてるじゃん」と言う鈴木に、志田は「ううん」と首を横に振る。


「私…また悪い子に戻っちゃったなって」と言う志田に、鈴木は「また?」と首を傾げる。


「こっちの話」と笑う志田。


鈴木は「まぁ元気だせ、一人で脅迫されたわけじゃねーんだから」と志田を放っておけないのか、志田の肩を優しく叩いた。


増田は「ふッ、鈴木っぽくないな」と鼻で笑う。


鈴木は少し照れ臭そうに、「うっさい‼」と叫んだ。


そしてしばらくそれぞれの班でやるべき事に集中していれば、授業時間の四時間が経過し、チャイムが校舎に鳴り響いた。



「はい、これ」放課後、朝日が本田にプリントアウトしたコロナに関する情報が書かれた紙を渡す。


「ああ、ありがとう」と言いながらそれを受け取る本田。


朝日は「ねえ、笹井さんとどういう関係なの」と本田に問いかける朝日。


本田は「…」と少し考えた後、「ともだち?」と意外な返答をする。


「え」と固まる朝日。


「なんだ」と本田は朝日の反応を見て訊ねる。


「と、ともだち…」と予想外な答えに、その場をたまたま通りがかった笹井が「ともだちになった覚えなんてないんだけど」と突っ込む。


「わーふられたー」と演技にもなってない演技をする本田。


朝日は(感情なさすぎだろ⁉)と心の中で呟く。


笹井は長い黒髪を左手で靡かせながら、「ごきげんよう」と後ろを向いて去っていった。



「なにあれ、ムカつく」と言う朝日に、本田は「笹井はずっとあんな感じだ」と答える。


朝日は「で、なんでアンタは私と同じ班になりたかったわけ」と本田を問い詰める。


本田は「使えるから」と淡々と言った。


「使うぅ⁉」と声を張り上げる朝日。


「暫くお前を見ていたが、友達は少ない、オタク、意外と技術面にも強い。デメリットと言えば偉そうで嫌われてる事ぐらい」


冷静に朝日を評価する本田に、朝日は「うぐぐぐぐ」と悔しそうな表情を浮かべる。


「つまり結構いいポジションだと判断した」本田の言葉に、朝日は「へ」と真顔になる。



「志田や鈴木、布田。目立ちすぎるタイプは返って動かしづらい。布田に至っては口が軽い。星野はたぶん詐欺に対する罪悪感があるから俺に忠実に動かない。それに汚れ役をするタイプじゃない。佐田と茅野はなるべく使いたくない。というか状況的に今は使えない。増田は動かせる位置だが目立ちすぎるやつらとつるんでる。なんかあいつらに聞かれたら喋りそうで信用ならない。つまり朝日お前は便利な位置だ。ついでにお前は榎本ともう一人の女子とばかりつるんでいる。こっそり作戦会議をしてても不自然じゃない。それに嫌われてるなら汚れ役だって自然に出来る。」


急にべらべら喋り出す本田の言葉に朝日は、「なに、なんなの」と混乱する。


本田は「お前はとりあえず意見を言うような場があれば積極的に動いてくれ」と朝日に指示を出す。


朝日は、「私が⁉」と衝撃を受ける。


「無理無理無理無理‼それに私の友達も巻き込むの⁉」と断固拒否しようとする朝日に、


本田は「……さっき見ちゃったんだけど。確かお前の引き出しに鈴木と増田のボーイズラブの漫画ノートが入っていたな」とボソッと呟く。


「あんなものが出海奈先生の手に渡れば」と言う本田に、朝日は顔を真っ赤にさせながら、「わかった!わかったから!」と叫ぶ。


本田はカバンを持ち直しながら、「じゃあな」と言って朝日の傍から立ち去って行った。


「もう、許せない!ただ脅しただけじゃない!」立ち去る本田の後ろ姿に向け、朝日は嘆くのだった。


下駄箱。監視役二人が校舎の外で待っていた。本田は彼らについていった。



生徒寮。笹井の部屋。笹井は自らのスマホで『椛島』と言う苗字を検索ボックスに入力する。


医療関係者、土木関係者、モデル、経営者。ズラリと並ぶ椛島の苗字。


(珍しいから当たると思ったけどそうもいかないのね)


笹井は鼻歌検索で本田の着メロを調べる。


(洋楽のバンド…十四年は前のものね)


笹井はそういうと、(令和なんて旧世代の音楽を聴いているって言った本田くん、妙に引っかかったのよね、私も人の事言えないけど)と考え込む。


(それに、【芸能界に興味ない】って本田くんの言い方、普通なら【芸能人に興味ない】って言うところじゃないかしら)と笹井は悩む。



そんなことを調べているうちに、ピンポン。と笹井の部屋のチャイムが鳴った。


「…はい」笹井が扉を開けると、そこには本田がいた。ラフなジャージ姿。


「…本田くん」笹井は現れた男の名前を呼ぶ。


「何か用があるから呼んだんだろ」と言う本田に、笹井は自分を奮い立たせるように少し拳を握る。


「ええ」と言う笹井。


「別にメールで聞けばいいような内容ではあるんだけど、あなたにとって不都合かもしれないから」笹井の言葉に、本田は「不都合?」と呟く。


「とりあえず入って」笹井は本田を部屋の中に入れる。


「単刀直入に聞くわ」笹井は少し躊躇うような表情を浮かべつつ、「椛島さんって誰なの」と本田を真っ直ぐ見つめながら言った。

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