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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期 四月

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FILE23『ほぉあぁ!?』

「今日一日を通して、四月の授業自体は終わりだ。四月の全授業を修了する事でお前たちの学生証には【バッチ】が与えられようやく、全員が【カジノ】を利用することが出来るようになる。」



「今までできなかったのかよ!マニュアルには『自由に使える』って話だったじゃないか!」



出海奈の話を聞いた男子生徒が立ち上がり、教卓のほうへ指を指す。


「嗚呼、四月のマニュアルには『自由に使える』と書いているぞ。だが、注釈をよく見ろ」男子生徒は言われた通りにマニュアルを開いた。



「条件を満たした場合のみ⁉」と声を裏返す。


「…特例生徒…」増田が真剣な表情で呟く。


「…その言葉をどこで聞いた」増田は出海奈に睨まれるが、「上級生の小娘らが会話をしているのをな、帰り道にたまたま小耳に挟んだ」と冷静に誤魔化す。



本田は心の中で増田を(高校生には見えないんだよな、こいつも)と評価して注目する。


「と、特例生徒って何…?」志田が困惑する隣で星野が「あれだよあれ、なにかが特別なんだよ、理事長にすごーく認められてたり。」と人差し指を揺らしながら語る。


「せやけどー。そいつはカジノでぼろ儲けしたんとちゃう?俺やったら真っ先に行くわ」


楽し気に布田が話しては、「それは、恐らく不可能だな」と出海奈が腕を組みながら説明をはじめる。出海奈はホワイトボードに、黒いマーカーで【特例生徒】と記した。


「この学園の【特例生徒】という制度は、〈生徒会で〉引き継がれるシステムだ。1クラスに原則一人生徒会長が選定し、生徒会長の気まぐれで二人まで該当生徒にだけ適用される特性が付与される。場合によっては理事長だがな」


「選ばれた者は本人に通告される事は《基本》無く、生徒会と当事者の監視役二名にだけ共有される。理事長が決めた場合も理事長から生徒会に把握される。」


「新入生歓迎会を超えるまではあくまで〈仮〉で効果だけが適用される段階。正式に生徒会長が理事長に申請するのは新入生歓迎会を終えてからだ。」



「なぜ一度【歓迎会】を挟むのかと言うと、入学式の時点でお前たちは〈正式な生徒〉としては扱われるが、【歓迎会】を通すまではこの学園の厳格なペナルティ等は加算されない。また、委員会などの学園の運営に参加したり、他クラスとの交流が正式には不可能であったり、無意識の間にお前たちは制限を受けていた。」



「特例生徒の《主な》得点は三つ。一つ。数千円ほど毎日の収益に加算が付く、二つ。〈生徒会に〉意見が通りやすくなる。」


「三つ。ルール違反をしても多少は見逃される。処刑などが、されにくくなる」


本田は三つ目の特典を聞いた途端、イヤな予感が走った。


(失策なのか、これは)


隣の席からちらり、と本田を見つめる笹井。


(私は…彼がⅩだと思っている。なぜならⅩからの着信が入っていた事を確認できたのは、あの場にいた中でも私と、彼だけ。登録名さえ変えてしまえば、工作なんていくらでも可能…他の二人はⅩからの連絡を一切確認できていない。)



(茅野さんや佐田くんの性格なら真っ先に連絡が来たら言うだろうし、茅野さんは【標的は本田くん】と言った。)


(その言葉は本田くんをⅩに仕立てるためだとしたら、露骨すぎるし、ノーマークだった茅野さんが自己保身に走る必要も無く、たいして裏の無い言葉だと私は感じる)


(だって茅野さんが本田くんを【黒】にするなら、わざわざ本田くんを隔離組として安全地帯に置く必要は無いもの。)


(自分が監視しているとすれば別だけど、茅野さんがⅩなら、本田くんがⅩだと直接追い込めばいいんじゃないかしら。)


(となると佐田くんも候補の一人だけど…彼もⅩからの着信は来ていない上に明らかに怪しい盛田さんがいる中で)


(盛田さんのような人物と雑談する素振りしか見せないのは変よ。)


(教室にいる連中に紛れ込んでいる可能性もあるけれど、スマホが私が見ている前で鳴ったのは本田くんだけ。)


(あれほどの数が教室にいて、その中にⅩがいる場合、工作はかなり厳しいものになる。)



(だって後方にも、横にも大量の生徒がいる中で工作できそうなのは《対応係だけ》ここまで絞れるわ。でも彼らも白。)


(まずⅩの犯人に盛田さんが利用された場合にXが単独犯なら彼女は白だし)


(布田くんや星野さんがⅩなら怪しい人間を三人隔離してもなんの恩恵も今のところは無い。)


(確かに容疑者からは外れやすい位置だけど、私がⅩなら隔離した佐田くんと茅野さんを近くで監視したいと思うわ。)



(でもⅩが選んだのが盛田さんじゃなくて茅野さんだったってところだけがどうにも引っかかるのよね…)


(だって茅野さんって隔離を指示する前って『パソコン触れます』って挙手したぐらいで)


(たいして目立っている訳でもなければ怪しくもない普通のポジションにいたのに…)


(Ⅹが本田くんだった場合、なぜ彼女に目を付けたの?)


(しかも、佐田くんが一緒に隔離された、お調子者が横に欲しいなら、一番適正があるのは布田くんじゃない?)


(なぜ彼がⅩの場合、布田くんを選ばなかったのよ)


笹井は思考を巡らせるが、ぽんっと何かに気づく。


(…ひょっとして、彼は私を動かす事が目的じゃなくて更に先を読んで動いているの?)


(…聞いてみるべきかしら)


隣の席の本田を眺める笹井。


だが出海奈の話はその間も続く。



雑談のような生徒たちとのやり取りを、本田も、笹井も聞き流してしまっていた。


「はいはいお前らちゃんと話を聞いてくれ、生徒会になれば更なる優遇だ、生徒会だけの高級建築に住める上に授業に出ずとも出席扱い。」



「生徒会は言わば学園に認められた"詐欺のプロ"」



「選定方法は前期生徒会長が、または理事長が会長を指名する。そのまま犯罪組織で幹部…なんて奴も過去には存在した。」



「話は変わるがお前たちは新入生歓迎会後、あらゆるものが解禁になる。まずは授業外で使う屋外プールと温泉施設。」


「これは放課後ならいつでも行っていい。温泉施設に至っては宿泊所もある。大層なものでは無いが、二年の学園運営の為でもある、使ってくれ。少し気分を味わいたい時にもいいんじゃないか。」



「後はトレーニングジムもある。この時代、必要なものは御前崎に揃っている分、こっちは簡易的だけどな。」


出海奈はそう言うと、何かの書類を取り出し、「それから部活、委員会。新入生歓迎会で仮入部の募集があるはずだ。好きな部活を楽しめ。部活や委員会は強制参加がうちのルールだ。だが部活や委員会は一年のうちは〈役職に就けない〉。それにうちの高校は上下関係も結構厳しい。下手な行動するとシバかれるぞ、鈴木とか大丈夫か」名指しで鈴木のほうを見る。



鈴木は「おうよ、先輩だろうがブイブイ言わせてやる」とグッドサインを示した。



福川に「そーれーがーダメなの!」とツッコまれてしまう。



「まぁ問題は起こさず穏便にやってくれ。また部活は参加する度に八千円の報酬。委員会は一万円の報酬が入る。稼ぎたいからと兼任はよせ」


出海奈の話を聞いた本田は、(なるほど?生徒が稼いだ【収益】を学園が手数料のように抜いて渡しているわけでは無さそうだな)と結論づけて、(恐らく、学園側にもどこかから定期的に大金が流れていて常時資金があるんだろう。シャイニング銀行、だったけ…正式名称を忘れてしまったが…シャイニングと言うぐらいだから独自で光道教が開発した銀行なんだろうな、となると学園の資金源はローンの利子などか…。)


(公的機関がよく使うのはセキュリティのためという名目もあるだろうが…普通はそれだけで一般人があまり選ばないような銀行を使うはずがない。公的機関がよく使うたって、誰も〈メインバンクである〉なんて言ってないしな。何かの取引…裏金等のやり取りに使いやすいのかも)と他の生徒があまり辿り着かないようなところまで推理する。


(光道教ってどこまででかい組織なんだ。)


一つの疑問を整理すると、また一つの疑問が湧いた。終わらない思考の反芻に、本田は次第に眠くなった。すぴー。と無防備なまでの寝息が横から聞こえては、笹井が本田の太ももをガシっと揉む。


「ほぉぉあ!!!????」



驚きながらぴくっと顔を上げる本田。ドン引きされたようにクラス中の視線が本田に集まっていた。笹井が真顔で言う。



「授業中に寝かけてたので起こしました、どうかお気になさらず話を続けてください」

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