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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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十八話『道化の髪飾り』



「失礼します」理事長室に入る茅野。


「お疲れさま」楚々辺に話しかけられた茅野は「この学園をよりよくすることが私の使命ですから」と答える。


「で、ですが」と茅野は声を震わせる。


茅野はⅬ字の箒を理事長室の掃除用具入れから取り出しながら、「クラス委員になっちゃいましたあああああああ」と楚々辺に伝える。


「クラス委員?」と楚々辺は茅野に訊ねる。「はい、笹井さんに抜擢されてしまいました…」と箒を掃きながら言う茅野。


楚々辺は「それはでかしたな茅野」と茅野を褒める。


「でかした?」と首を傾げる茅野。「なんでですか?楚々辺理事長」と茅野は訊ねる。


楚々辺は、「単純だよ茅野。この状況を用意されたならそれを活かせばいい。」楚々辺の発言を聞いた茅野は、


「活かす…」と考える。


「人は肩書きに弱い。ただの茅野がお願いしても動かない生徒はいるがクラス委員の茅野がお願いすれば動く生徒もいる。そんなものだ」


楚々辺の言葉に、茅野は「私は理事長様第一ですから、言われた通りに活かします♡」と宣言する。



「ですが理事長、私にもZ2に関する詳しい情報が欲しいのです。理事長様が以前私に教えてくださったデータは最低限。教えて頂けたら理事長様がお望みであるこの学園からネズミを駆除する事も、光道教を復活させるその野望も、叶うかもしれません♡」


茅野の提案に、「あれが限られた情報だ」と楚々辺は答える。


「え」とフリーズする茅野。


「インターネットから降ろして、長期データ化できるものはあれしかなかった。アナログの資料ならあるが…それは全て東京の金庫だ」


楚々辺の発言に、「では…薬品のデータとかも」と楚々辺に訊ねる茅野。


楚々辺は、「薬品のデータなら研究所だ。読むか?」と茅野に提案する。


茅野は、「でも…あの中は」と下を向いた。


楚々辺は「あの中がどうかしたのかい?」と優しい視線を茅野に向ける。


茅野は「私は…あの中で何をしているのか…よくわからないようになっているはずなんですけど…私があの場所に入ってもいいのでしょうか」と楚々辺に訊ねる。


楚々辺は「君はあの研究所で産まれたんだよ。この学園の代行者としてね。私が欲しかった完璧なエージェント。それが君さ。だからもちろん、入っていいんだ。君だけの特権でもある。それと…一年一組の特例生徒は、君だ」と茅野に言った。



「え⁉」と驚く茅野。


「わ…たし…てっきり…本田くんだと思っ…」


楚々辺は娘のさくらからのメール、【茅野さんを特例生徒に選びましたわ】と記されたタイトルを見て微笑む。


茅野は「…どういうこと…」と想定外の出来事に少し動揺を隠しきれない様子だ。



数時間前、生徒会生徒寮、庭。「まさか本田くんからお呼び出しなんて、光栄ですわ」さくらを呼び出した本田は、「やはり…俺が特例生徒だったんだな」とさくらに言う。


「ええ。ですが…。特例生徒を申告する際、本田くんに言われた通り茅野さん。と言う事で通しました。でもすごいですね。本田くん。特例生徒について言及される前に気づくなんて」


さくらの言葉に、本田は「カジノに行かないか。って監視役に誘われたんだ」と答える。


「確かに、カジノがある。とはこの学園のマニュアルにも書いてあった。だが一年生の出入りなんて見た事ないし、帰り道にカジノを通っても一年生は追い返されているような様子で、なぜ監視役にカジノに誘われたのか、わかっていなかったんだ。だが俺はもう一度資料室に入れるタイミングを見つけた。そこで卒業生に関する書類を見た時に、【特例生徒】と言う文字を見た」と補足説明をした。


さくらは、「それで私に茅野さんを特例生徒として教師らに申告するように頼んだ。真実を知っているのは私と監視役の二人だけ。お見事ですわ。ですが監視役が話してしまったらどうするつもりでしたの?それに、他の監視役にバレている可能性さえありますわ」と指摘する。


本田は「基本、一人の生徒に対し監視が二人つく。俺はなぜ二人なのかという点を考えた。結果、グループが違うんじゃないかと。片方が理事長の指示を聞き監視や情報探りをする。もう片方は研究所に所属する研究員で素質などのデータを分析しているんじゃないか、って。そう考えれば移動の時だけ監視が二人付き、監視役が部屋の監視は義務じゃないと言ったのにも頷ける。本当に学園側が欲しいのはデータのほうで、部屋の監視なんてハナッからいらないんだ。データ係だって学校に行くまでや放課後の遊びなどについていけば、大体わかることだし。それと監視役が他の生徒の監視役と特例生徒について話し合うとも思えないし、自分が監視している生徒が特例生徒だったらその生徒にとって不利益になるような事はわざわざしないはず、本当の事は監視役二人と生徒会長しかしらないだろうし、漏らしたとて自分たちにとっても特段いいことは無い。でも、なぜ監視役が俺が本当の特例生徒だと知ってたのか謎だな」と少しさわやかに微笑みながらさくらを見る。


「安心してください。本田くんが本当の特例生徒と最初に教えたのはあなたに付く監視役二人だけ。それに金を渡してあなたを誠心誠意お守りする事も誓約させています。それと本田くん―――――。先輩には敬語を使いましょうね?」さくらからの指摘に、「あ…」と本田は目を丸くする。


監視役二人が木陰から本田を覗く。


「うふ♡」さくらは本田に耳打ちする「あなた本当は…」


とさくらが本田に言っては、本田は「⁉」と背筋を震わせるような珍しい反応を示した。


「無理も無いですわね、ほ・ん・だ・み・な・と・く・ん?」と少し煽るような口調で言った。「では、失礼します」と一礼するさくら。


本田は暫く硬直する。(やってしまった…。)本田は一つ見落としをしていた。これでさくらに弱みを握られやすくなるという、初歩的な見落としを。



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