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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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十七話『クラス委員は茅野』


 四月末日。ゴールデンウイークに伴い、授業は行われない祝日だ。


 ある程度の欠席も見込まれたが、クラス全員が一組の教室に集まった。


「欠席者はいないわね」笹井が教室を見渡し、「じゃあ、会議をはじめてもいいかしら」と生徒たちに言う。


 星野が、「もちろんいいよ♡」と笹井をみて答えた。


 笹井は、「他のみんなも問題なさそうね。じゃあ一年一組、クラス会議をはじめるわ。まず。情報を整理しましょう。私たちは四月、名簿を集めることから始まって、はじめて人生で詐欺はんざいをして少しづつ資金を集めてきたけど、既に一人の死者を出している……入学翌日だったかしら」と状況を整理する。


「しかも出海奈先生が言うにはどうやら四月はチュートリアル。私たちはこれから新入生歓迎会を受けてようやく正式に一年生として認められる。そして新入生歓迎会を受けたら、カジノの解禁や他の棟などへの移動が許される。屋内プールや温泉、トレーニングジムも自由に使える。それに部活や委員会も……」


 笹井の言葉に、増田が、「クラス委員を二人決めておけって話だったな」とコの形に並べられた机の端の席で、腕を組みながら言った。


「そう、そのことなんだけど」と笹井が言うと、「はいはいはいはい!」と布田が手を挙げる。「俺や!俺とかどうや!」笑顔の布田を見て、笹井は「はぁ」と溜息を吐く。


「茅野さんと私でクラス委員を担うことにするわ」


 笹井からの報告に、茅野が、「わ、私⁉」と動揺する。


「そんなの私の想定には‼」と茅野は急な指名に焦る。


 布田は、「俺はアカンのか……」と落ち込んだ。


「私は今までこのクラスの詐欺を進行してきた。もう一人、ってなったときに別室ですごく活躍してくれた佐田くんか茅野さんって決めてたの。でも男女で組むより同性のほうが今後動きやすいと思って残念だけど今回佐田くんは見送ったわ。それと、茅野さんに断る権利はない。既に申請は済んでるの」


 笹井の言葉に、クラス中に衝撃が走る。


 志田は、「決まってんならなんで呼んだの?そ、それに茅野さんだと少し心配じゃない??目立った活躍、って、しっ、した?」と少しいつもより威厳が無さそうな様子で立ち上がる。


「それ以上に大事な話があるからよ」笹井が志田に冷たい視線を向けながら言った。「生存戦略について」笹井の言葉に、教室がどよめく。


「死者が出るって発言が真実どうかは誰も確認していない」


 笹井が言っては、「……」と生徒たちは考え込む。


「で、でも本当に私撃たれたのよ」と言う志田に、笹井は

「じゃあ死体は見たの」と訊ねる。


 志田は、「え」と固まる。


「こんなにポンポン人が死ぬような学校なら死体があってもおかしくないはずでしょ」


 笹井の言葉に、志田は、「なんか、そんな感じもしてきちゃう」と俯きながら答える。


 本田は、研究所に行く道にあった乾いた血痕を思い出しつつ、(いくらなんでも時間が立ち過ぎだ、証拠にはならない)と心の中で呟く。



 笹井は、「このクラスには監視カメラが仕掛けられている。でも録音はされてない。だから情報を教えて」と一組の生徒たちに言った。


 増田が、「万が一だってあるだろ」と言うが、笹井は、「いいえ」とその万が一さえ否定する。


「本当にこの教室が録音されているのなら出海奈先生は教室を解放するなんて言わないわ。全員で話し合いたいことがあれば使ってよし。なんて言わないはずよ」と笹井は答える。


「ねぇ?佐田くん、布田くん、鈴木くん、増田くん。深夜に本田くんと研究所の前まで行ったんでしょ。情報共有してくれないかしら」


 笹井に言われては、鈴木が、「お、おれいってな」と声を裏返す。


「ウソつくな」と本田が鈴木にジト目を向けた。


「なんだ本田、仲間を売るのか⁉」


 分かりやすく混乱する鈴木に、本田は「……」と興味なさげな表情を浮かべる。


 笹井は、「何を見たの」と一番喋りそうな佐田に視線を向ける。


 佐田は、「……シャッターしまった商店街とその先を進んで乾いた血痕と防空壕のような穴を本田が見つけた、さらに研究所に近くなると道が整備されていて、歩道にヒビが入った試験管やらが捨てられていた」と笹井に言う。


 星野が、「試験管?」と首を傾げる。


 盛田も、「なんでそんなものが……」と俯きながら呟く。


 本田は、「恐らく────」と少し深刻な声色で、「何らかの実験があの研究所でされているんだ」と続ける。



 本田の言葉に、鈴木は、「実験って……それに死んだってされたあいつが……⁉」と目を見開きながら叫ぶ。


「ああ。あの時、大きな打撃音を聞いただろ。ひょっとして……」


 と本田が言いかけるが、「いや……現実的にそれはあり得ない、あまりにもフィクションが過ぎる」と考え直してしまった。


 布田は、「ひょっとしてなんや」と続きを聞こうとするが、本田は少し考えるような険しい表情を見せる。


 これには布田も、「……」と落ち着いた。


 茅野は、「本当に私がクラス委員でいいの……?」と小さく手を挙げ、少し躊躇いを見せる。


 迷う茅野に、星野が、「茅野ちゃんなら大丈夫だよ‼」と微笑む。志田も、「頼りにしてるよ、茅野さん」と歓迎モードだ。


 男子たちも、「笹井一人じゃ強引だからなー」「笹井の制御役だって必要だし‼」と少し過剰なほど茅野のクラス委員を歓迎する。「私のことも少しぐらい歓迎してほしいんだけど」と言う笹井。


 笹井は、全会一致の教室と、布田や志田の反応に違和感を覚え、「……」と本田を見つめた。


 盛田は机の引き出しに隠したスマホの電源を付けて、数日前に届いた謎のメールを見つめる。


 差出人は非通知。『クラス運営に関するアンケート』とメールのタイトルに表示されていた……。



 会議終了後。教室。


 笹井が、帰ろうとする本田を、「ちょっと」と呼び止める。


「どういうこと」と問いかける笹井に、「主語を付けろ」と本田は答える。


「なんでこんな全会一致なの」と笹井は本田の表情を探る。


「なんでって、よかったじゃないかスムーズに行って」


 と本田はめんどくさそうに言ってスクールバッグを持って教室から出ようとする。


 笹井はその本田の首根っこを掴み、「何したか教えるまで帰さないから」と本田を引きとめる。


 本田は、「はぁ」


 と溜息を吐いた後、「クラス全員、笹井以外に数日前にアンケートメールを送った。一組の運営役として誰が適任か、追加される委員に誰が相応しいか。茅野が選ばれる確率が最も高い言い回しと選択肢で状況を作った」と笹井に答える。


笹井は、「志田さん、買収して反対っぽい演技させたでしょ。布田くんに関しては私と同じようにメール送らなかったんじゃない?」と本田に言うが、本田はツーン。と全然違う場所に視線を向ける。


「あなた、知ってたの?クラス委員の事も」と本田を疑う笹井。


 本田は、「嗚呼」と答える。


「どうやって」と本田を問い詰める笹井に、本田は「資料室で過去の学園の生徒名簿を見た、そこにはクラス委員って文字が書いてあった」と説明する。


 笹井は、「そんだけ?」と目を丸くした。


「だって資料なんて言ったら時代とかも違うでしょうしそんな」


と笹井が言うが、本田は「……」と細かい事は聞き流した。


「それと残念なお知らせだ」と本田が言う。


「なに」その言葉に笹井が立ち止まる。


「この学園の卒業生は皆、研究所や製薬会社に就職している。数十年前の一人の例外を除いて」


 本田の言葉の後、笹井は瞳を震わせる。


 本田は、「その顔、意味がわかったみたいだな」と笹井に伝え、「じゃあ帰るから」と笹井に引き止められる前に教室を立ち去った。



「ウソ……まさか……まさか全員……」笹井は力が抜けたように座り込む。


 笹井は後悔せざるを得なかった。この学園に来るには相当な覚悟が必要だったと。


「お父さん──────‼」


 笹井は両手で顔を覆いながら枯れるように叫んだ。夕暮れ時の光が啜り泣く笹井の背中を慰めるように温めた。



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