十六話『選別の孤島で』
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四月の授業最終日の朝。教室に出海奈が入ってくる。
教卓の前に立った出海奈は、「今月の利益はクラス総額で────円 前後。ひと月でよくやったほうだ。今日で四月の授業は終わりだ。新入生歓迎会を経たお前らはようやく全員が【カジノ】を平等に利用する事が出来る。」と生徒たちに説明する。
「いままでできなかったのかよ!」と言う後ろの男子生徒に、出海奈は、「たった一人の【特例生徒】を除いてな。」と答える。
「特例生徒?」と星野が首を傾げる。
「この学園には【特例制度】と言う制度が存在する。これは以前から生徒会で引き継がれるこの学園特有のシステムだ。一クラスに一人、生徒会長が選べなかった場合は二人まで特例制度が認められる。選ばれた者は本人に通告されることはない。だが職員、理事長、生徒会役員、その生徒の監視役は誰が特例生徒かを知っている」出海奈の説明に、「特例制度と特例生徒ってややこしいんだよ!」と鈴木がツッコミを入れる。
茅野は、「あのー、特例生徒になるとなんか特典あるんですかー?」と少し棒読みで出海奈に問いかけつつ手をあげる。
出海奈は、チラッと茅野のいる場所を見た後、「実は特例生徒はこの期間もカジノをつかえた。だがそれを本人に通告されることは基本無い。それ以外も特例生徒は山分け報酬が数万ほど加算されたり、生徒会からの信頼や期待を得た生徒は学園内での監視が薄くなったり、意見が通りやすくなったり、さらに言えばルール違反をしても多少は見逃されたりと他の生徒よりも優遇される。既にこのクラスの特例生徒の選別も済んでいる。だが、本人は知る事が不可能ゆえにその権限を利用できない」と答えた。
「本人が使えないなら価値が無いじゃない」と言う志田に、出海奈は、「大いにある」と腕を組みながら言う。
「未来の生徒会候補者の選別。クラスの暴走阻止。生徒の動向監視などだ」と説明した。
本田は「…」と何かを思い返しながら真っ白なホワイトボードを見つめる。
「生徒会になれば更なる優遇だ。生徒会だけの高級建築に住める上に授業に出ずとも欠席扱い。生徒会はいわば詐欺のプロ。そのまま犯罪組織で幹部。…なんてヤツも過去には存在した。…話は変わるが、お前たちは新入生歓迎終了後あらゆるものが解禁になる。まずは授業外で使う屋内プールと温泉施設。これは放課後ならいつでも行っていい。プールがある棟と同じ場所にトレーニングジムもある。自由に使え」
出海奈の予想外の言葉に、男子たちは、『うっひょおおおおお!』と声を揃え歓喜する。
「それから部活、委員会。新入生歓迎会で説明があるはずだ。好きな部活を楽しめ。部活や委員会は強制参加がうちのルールだが部活や委員会に参加する度に部活によって八千円から一万円の報酬が入る。どこに入るかは自由に選べるが生徒会は簡単には入れないことを頭に入れておけ。ちなみに、【帰宅部】と入部届に書いておけば加算は無くなるが、部活に所属していることには書類上できる。部活・委員会の申告期限は一学期中だ。次にA棟B棟Ⅽ棟Ⅾ棟、全ての棟を自在に移動できる。主に一年のために作られたA棟は質素で学食ぐらいしかないが、B棟以降は学園の教室で服屋が出店していたりと商店のようになっているフロアがある。まぁ…この無人島だった島ではこれと言って品揃えがあるわけでもないがいちいち本土に行くよりは楽だろうな。ノリ的には文化祭の出し物みたいな感じでいろいろ売られている。これはとある団体に参加している人たちの活動の一環でやっていることだ。店員さんたちには感謝の気持ちを忘れるな」
出海奈の説明に、「ショッピングに、プールに、部活に、委員会…!」と目を輝かせる星野。
笹井が、「卒業した生徒もいる上に、外部の団体も入り込んでるのに、この学園は政府や警察に目を付けられることがないんですか」と心配そうに出海奈に聞く。
「外部の人間は【遠州学園】と【進学校】と言う単語だけで本当に行われていることまでを理解していない。これも、詐欺。だな」と出海奈は笑った。
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出海奈の時間の使い方に違和感を持った盛田は、「出海奈先生、今日って授業ないんですか」と質問する。
出海奈は、「このクラスに限っては四月はもうやることが無い。他のクラスは今頃死ぬ気で足りない分を稼ごうとしているだろうな」と盛田の質問に答えた。
鈴木は、「死に物狂い…?」と首を傾げる。
布田が、「ほ、ほななんや、なんか稼がへんとペナルティかなんかあるんか」と少し青ざめたような表情を浮かべる。
出海奈は、口角を上げた。
本田は、「ん?」とその表情の変化をキャッチする。
出海奈は、「今までの授業を含めたここまでがゲームで言うチュートリアルだ。これからは目標数を稼げない度にペナルティが与えられる」と生徒たちにはじめて説明する。
佐田は、「ぺ、ペナルティ…」と開いた目を震わせた。
本田は、面倒くさそうに窓の桜が散った木を眺める。
「目標額を稼げない度にこのクラスから死者が出る」
出海奈は、まるで天気予報でも読み上げるかのような抑揚の無い声で告げた。
『⁉』
出海奈の説明の後、教室中が静まり返る。
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「いやああああああ!」
真っ先に志田が逃げ出そうとするが、その身体の横スレスレを拳銃の薬莢が通過する。
志田は突然の銃撃音に驚き、腰が抜けたように女の子座りをする。
本田は、(やっぱりあの銃は偽物だ…)と心の中で呟く。
出海奈は、「なぜ外部に漏れなかったか。その明確な答えは、【皆、葬られていく】からだ。それに、葬られていった事を知ってしまった卒業生は自分だって殺されたくないのだから簡単には言えないだろう?」と生徒たちに説明する。
「一人すでに葬られているのに平然と授業に臨めるお前たちには何ら影響が無いことだとは思っていたが、それが自分の身に迫るとなればそうやって逃げ出そうとするんだな」
と出海奈は呆れた。「さて、次葬られるのは誰になるんだろうな。」出海奈の言葉に、鈴木が、「あーもうだめだー俺たちは死ぬんだ‼」と顔を机に伏せ両手で頭を抱えながら声を荒らげる。
「いい人生やった…こんな学校に入ったばっかりに‼俺たちは全員‼」と布田も涙を目に溜める。
佐田は、「死んだら生まれ変われる、生まれ変わってまたみんなで同じクラスに」と悲観する二人を宥める。
「もう無理よ‼こんなの、いつ死んでもおかしくないのよ‼」
と言いながら両手で顔を覆い泣きながら叫ぶ志田。
星野も、「お願い、お願い、辞めて‼死にたくない‼」と頭を抱え首を横に振り現実逃避する。
阿鼻叫喚する教室。
笹井も死に怯えるような表情で俯く。本田はボーっと前の出海奈を観察した。
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暫く教室中が絶望に包まれていると、盛田が立ち上がる。
「悲観しても駄目…じゃない?」とクラスを見渡しながら言う。「死ぬって、目標数を稼げなかった場合、でしょ?」と盛田が同級生たちを励ます。
笹井も立ち上がった。「そうね。盛田さんの言う通りだと私も思うわ」笹井は続ける。
「とりあえず一度冷静になりましょう。新入生歓迎会に出席するのが今の私たちの最優先」
笹井の言葉の後、ようやく教室が静かになる。
出海奈は、「祝日。教室を解放する。全員で話し合いたいことがあれば使ってよし。今日は職員会議の都合でこのような場になって申し訳なかった。よって四月の授業はこれにて終了とする。また五月からはマニュアルの新しい範囲を学ぶ。後、祝日に会議をするなら【クラス委員】を別途二人。選定して口頭でいいから報告しといてくれ。」と生徒たちに呼びかけた。
本田はじっと茅野を見つめた。




