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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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十四話『Lie or True 葬られた✕✕』


 生徒寮に帰り、ラフな服装に着替えベッドの上で本田が休んでいると、監視役の男が、「カジノに行ったらどうだ」と本田に提案する。


本田は「なんでその提案をいま俺にしたんですか」と監視役の男に訊ねた。「お前は夕方、ずっとこうやって何もせずただベッドの上にいるだけだからな。堕落しているようだ」と男は答えた。「堕落…」と呟く本田。


「カジノでも行けばスリルを味わえるものを」と余計なお世話のような事を言う男に、本田は「俺はスリルなんて求めていないんで」とその提案を一蹴する。



「生徒寮の監視は私の仕事の範疇じゃない、移動の時はまた呼んでくれ。スタッフステーションにいる」と本田に告げ監視役は本田の部屋の玄関から立ち去って行った。


(カジノねぇ…)本田は心の中で呟く。本田は脳裏で銀髪のイケメン、ホスト風の男が以前カジノのような場所で『うわあああああああああ‼』と頭を抱え発狂しているような映像を思い浮かべる。



(リスクに比べてリターンがない。馬鹿がやることだ)と当時のその男の様子を脳内再生して呆れる。本田は数年前のデザインが施された方の私物のスマホで、非通知の電話番号が記された連絡先をタップする。



『こちら椛島。た…いや、聞こえてる可能性があるのか。本田。進展はあったか』と椛島が本田に訊ねる。



本田は「妙に学園内に光道教の資料や二千二十年代の資料が沢山残されている」と椛島に情報を提供する。


椛島は、『学園内で変わったことは』と本田に訊ねる。



「…生徒の中に学園側の代行者がいる。俺の目的に不要な要素だ、脅威にもなりかねない」と本田は答えた。



椛島は『その者は例の宗教の件を知っているのか』と本田に続けて質問をするが、本田は「いや、多分知らない。またはネットにある分の嘘か本当かわからないような情報しか有していない」と椛島に言った。



『少し不自然な言い回しだな』と椛島は本田に言う。


本田は「そうとしか言えないんだ」と少し深刻そうな表情 を浮かべた。



『本田湊、くれぐれも命を落とすような真似はするなよ』椛島が心配するが、本田は「そのことだが、おそらくあれはフェイク。移動の際に付いてくる監視役が持っているライフルもダミーだ。実弾なら音が残る、イヤーマフ無しで耐えられた時点でおかしいとは思っていた。それに、脱走した女子生徒が死んだ。と出海奈…俺の担任が言った時もその夜中に銃声なんて一切聞こえなかった。つまりこの学園で人が死ぬ事は無い、それに研究所の跡地を手前まで調べたんだけど、二千二十年代の試験管が道端に捨てられてた。そうかと思えば今でも研究所に人がいるんじゃないかってくらいその付近だけやたら道が整備されている。そして島はカジノにコンビニ、マンション型の生徒寮と学園側は栄えているのに、少し森のほうへ抜ければ昔のシャッターが閉まったままの商店街や、何かがあって誰かが逃げ込もうとしたのか防空壕みたいな穴もあった。学園の生活エリアを抜け出した途端に、長い間放置されたような廃れた町のような姿に変わっていくんだ」と説明する。




『防空壕のような穴…』と椛島は考えるような声色で言う。


本田は、「椛島さん、Z2のパンデミックについて知ってること、なにかありますか」と椛島に訊ねる。



椛島は『詳しくは言えないが、光道教のあるじ、つまりお前も知っている夜叉鏡の亡者の本当の目的は、【救済】と【再生】だ。世界はそれを【悪】と呼ぶがな』


椛島の言葉に本田は眉を顰める。



「救済…?」本田は少し怒りを覚えたように声色を変える。少し震え声でもあった。


(歴史に名を残した大悪党が救いを語るのか?)と珍しく感情を見せる本田に、椛島は『本田』と彼の名を呼ぶ。


「椛島さん…あなたは夜叉鏡の亡者の理想に賛同しますか」本田の問いに、椛島は『一概に悪だとは言い切れないだろうな』と答える。



その答えに、本田は少し衝撃が走った。



「あなたって人は…」と本田が言うが、椛島は、『あの男のやり方すべてを肯定するとは言えないがあの男もあの男なりの野望があったとしたなら、あのようなやり方で終わってしまったのはやるせないな』と答えた。



「少し夜叉鏡の亡者と親しいような口ぶりですね」と言う本田に、椛島は『ふん、その時代を生きた人間は誰でも少しくらいは知っているさ、生憎、私は地方でとある任務を任されていたから都心やその辺りより被害は無かったけれど』と椛島は本田に言った。



本田は「…」と考え込む。「被害…?被害って言い方、変じゃないですか?感染症…医療崩壊とかそう言う…」と椛島に言うが、椛島は『本田、お前。まさかZ2をそれよりも昔のコロナのようなものだと思ってないか』と本田に訊ねる。



「あれも相当ひどかったと聞きますが」と椛島に問いかける本田に、椛島は『あれはマシなほうさ。都心なんか壊滅的だったと思う。なぜなら暴徒…』と言いかけるが、『ははッ、これ以上は無しだな』と愉快に笑って電話を一方的に切ってしまった。



本田は、「…」とツー、ツー、ツーとスマホから聞こえる音を聞きながら画面を閉じる。「暴徒…」と呟いて。



暴徒とスマホで検索してみるが、【Z2パンデミックに感染した患者の総称】と書かれているだけで詳しい情報に辿り着くのは不可能だった。



それどころか、Z2パンデミックに関わる記事が殆どネット上に存在しない。(情報規制…)と呟く本田。



(そういえば国家情報局…設立って時期…被ってたような)と本田は頭を悩ませる。



(まさか夜叉鏡の亡者…政権まで)と疑うが、(いや…処刑時でさえ二十三の人間には不可能だ)と本田は考え直す。



(普通に考えてただの二十三の若者、それも発足したての無名だった宗教団体が最初から政権さえ取り込むなんて)と本田はベッドに転がりながらバラエティー番組で見た映像を何度も何度も思い浮かべた。


本田は「救済の女神とされた聖母…。世界の歴史に名を刻んだ大悪党、夜叉鏡の亡者…。」


ベッドに転がりながら掌を天井へ伸ばす本田。


「ここまで切実にタイムスリップしたいと思ったのははじめてだ…」と本田は呟いた。



そして夜。本田の部屋の扉が開く。そこには笹井がいた。


「いまから茅野さん佐田くんと食事に本土まで行くのだけれどどう?茅野さんは先に向かってるみたい」と笹井に誘われた本田は、「嗚呼…」と立ち上がり笹井に呼ばれるがままついていくのだった。



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