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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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十三話『覆面代行者に迫る!』


資料室。


 佐田、茅野、本田は三人でパソコンを開いて待機する。


 佐田は、「俺は何をすればいいんだ」と本田に訊ねた。


 本田は「笹井のいう事を聞いておけ」と適当に答える。


「なんだよ本田、素っ気ないじゃないか」と佐田は言うが、本田はパソコンの画面をじっと眺めるばかり。


「どうしたんだよ」と画面をのぞき込む佐田。


 佐田は本田のメールを見て、「……どこに送ってるんだ」と首を傾げる。「笹井だよ」と答える本田。


「今日俺たちは偽投資サイトを使う。さっき手配を済ませたばかりのサイトだ」


 本田の言葉に、茅野は「さっき手配って、私たちが来るまで五分も無かったじゃない」と本田に近づきながら言うが、


「五分もあれば出来る。これが人間が生み出したAIの素晴らしさだ」と本田は自信ありげだ。


「投資なんて全くわからない……」と頭を抱える佐田。


「私もそんなの情報しか持ってない……どれが正しいかなんて」と俯く茅野。


 本田は、「大丈夫だ。投資なら俺が────」と言いかけるが、「俺が?なんだよ」とジト目で見られる。


「い、いや、俺の父さんが昔ちょっと株式投資してたから」


 本田は苦笑いを浮かべた。茅野は、苦笑いする本田を意味深に見つめる。「お前の父さんどんな人なんだ?」と佐田は首を傾げた。


 茅野は、「多分相当頭がいい人なんじゃないかな」と言うが、本田は「あはは……」と困惑する。


(俺の父さんが凄い熱血で頭脳なんてかけ離れた存在だとは言えないな……)と心の中で呟いた本田は、「う、うん……それなりに頭がいい人だよ」とだけ茅野に答えておく。


「あっちもはじまったみたいだな」


 と机や椅子が移動する音を聞きながら本田が言っては、佐田は偽サイトを見つめ、「用語が何も理解できない」と溜息を吐く。


「茅野、お前は佐田に付きっきりで佐田が困ったら隣で用語を教えてやれ」と茅野に言う。


「私だって投資なんかそんなに詳しくな────」


 茅野が反論するが、本田は少し笑みを見せた後、「いや、茅野。お前ならやれる」と伝える。


「佐田はデータ分析、茅野は佐田に教えつつチャット対応。俺は全体を見てお前たち二人に届くメッセージで指示を出す」


 本田が言っては、「失敗しても知らないぞ」と佐田は本田に言った。


 本田は、「茅野がいる限り大丈夫だ」と適当な雰囲気で茅野に言った。「もぉ、投げやり‼」と頬を膨らませる茅野。



 茅野、佐田とは少し離れた場所でカタカタとキーボードを打つ本田。


「うっわすげえ‼」佐田が声をあげる。


「どうしたの?」


 隣にいた茅野が佐田のパソコンの画面を覗く。


「見ろよこれ、年齢とか地域とか、全部数字で出てるんだぞ。恐ろしいったらありゃしないな」


 と驚く佐田に、本田は、「個人情報ってのは少し入力すれば全て割れてしまうんだ。さらに言えば入力すらせず登録先の企業の杜撰な管理で個人情報がこういった悪用しようとする存在に漏れてしまうことが多々ある。こちらとしてはもう防ぎようが無いが……。強力なパスワードをかけたり、二段階認証をしたりと言うのが防止策だな……」と説明する。


「恐ろしいな……」と佐田は呟く。


「この人、五十八歳、投資経験なし、退職金あり、しかも最近資産運用のサイトまで見てる。行ける‼」確信する佐田に、茅野は「へえ」と意味深に佐田の画面を覗き込む。


「この人のデータ、茅野に回す‼」と佐田はノリノリでデータを茅野に渡した。


 茅野はそれをもとにチャットを送る。「人との会話ってどうやってすればいいのかよくわからないよ」と悩む茅野に、「お前も人の子だろ」と佐田が迷わずツッコミを入れる。



茅野は少し手を震わせながら、「そ……そうだね」と返事した。


 本田は茅野のぎこちない返答を見て、一瞬だけ目を細めた。




 本田は閃いたのか、一度偽投資サイトを離れる。


 その後、少し考えるような表情を浮かべた後、学園のスマホを取り出すが、


「……」と少しの操作をした後、学園スマホを手から離し、ポケットから数年前のデザインが施されたもう一台のスマホを取り出す。


 茅野は画面に集中して気が付いていないようだ。本田は立ち上がり、「少し離れる」と佐田と茅野に伝える。


「えぇ⁉」と驚きの声をあげる佐田。


「本田くん、どうしちゃったんだろ」と呟く茅野。


 本田は学生服のポケットに手を入れながら、


「はい……はい……え?芸能人の話ですか?昔のアイドル……」


 盛田が詐欺相手と通話をしている真横を通る。


 男子トイレの標識がある壁に寄りかかった本田は、「……」とスマホで何かを作っている様子だ。



 一方、教室にいる生徒たちの作業を見ていた笹井は、「ん?」とスマホを開く。


 本田からの通知だ。


【頼みがある。笹井、これを読め】


 笹井は本田からのメールに、眉を顰め冷ややかな、しかしどこか含みのある表情を見せる。


(頼みってなによ……)と心の中で呟きつつ、本田から送られてきた文書を開く。それを見た笹井は、(クラスがまとまってきたのに悪者のような事を……)と溜息を吐く。


「最低……」と呟く笹井に、「笹井さんどーしたの?」と志田が訊ねる。笹井は、「こっちの話よ」と素っ気なく志田に答えた。


「ちょっといいかしら。いま茅野さん、本田くん、佐田くんの三人には違う作業をやって貰っているけど、明日からこの三人もこっちの部屋で作業に打ち込んでもらうわ。もう、こっちの知りたいことは把握できたから」


 と生徒たちに言う。「知りたいことってなんだよ」と言う増田に、「言えないわね。いま言ってもあなたたち、余計なことするでしょう?」と笹井は答える。


 増田は、「禁則事項ってか」とつまらなさそうに言うが、笹井に「そういうことね」と頷かれてしまう。


(にしても本田くんったら本当に……)と呆れさえも混じる笹井。



 資料室へ戻ってきた本田に、佐田は、「すげぇぞ‼」と目を輝かせる。


「茅野のチャット対応、まるでロボットみたいな手際の良さだ‼すっげえ金が溜まる溜まる‼明日十万近く振り込まれるってのにこんな貰っちまっていいのかよー‼」


 大興奮する佐田の横で、人並み外れたキーボード裁きを見せる茅野。


「さすがだな、茅野」と本田が褒めては、「ふふ、ありがとう♡」と茅野は笑みを浮かべた。


 本田はパソコンを触りながら、(……いじめは反発を生む……)と呟いた後、パソコンで裏サイトにアクセスする。

(……排除は敵を作る)本田は少々楽し気な笑みを浮かべる。(だが信頼は人を壊す)


英数字が並ぶ裏サイトの【REALLY?】と記されたボタンをクリックする本田。


 すると複数のウィンドウが同時に立ち上がり、そこには光道教と記された謎の宗教団体のホームページと、光道教の残党を名乗る者のSNSアカウントが表示され、そのSNSアカウントのメッセージなどのやり取りがまるごと表示されていた。


(裏切り者に一番重い罰は、裏切れなくすることだ)


 本田は心の中で勝利を確信する。




 茅野は、「三百万……」と驚きのあまり口を塞ぐ。


「もう三百万……稼いじゃった」と言う茅野に、佐田は、「よっしゃあ‼」とハイタッチをする。


 茅野は佐田にハイタッチされ一瞬戸惑ったあと、「私も役に立てたかな?」と笑った。


「素晴らしいよ」と二人を褒める本田。


「佐田はわからないならわからないなりに物事を聞く。という人を頼る能力に長けているし、茅野は人といい関係を築く才能がある。立派な一組の即戦力だ」本田の言葉に、茅野と佐田は顔を見合わせる。


「就職♡エリート企業に就職♡」


 と調子に乗る佐田。本田は、「はぁ……」と調子に乗る佐田を見て頭を抱える。


「なんか本田ってお父さんみたいだな。大好きだぜ本田ー♡」と喜ぶ佐田に、本田は少し青ざめたような表情をしつつ、「気持ちが悪い」冷たい視線を向けと言い放つ。


 佐田は、「本田ァー……」と少し落ち込んだような仕草をするが、茅野に、「大丈夫大丈夫」と背中を摩られる。


キーンコーン。カーンコーン。学校のチャイムが鳴っては、本田たちは教室へと戻って行くのだった。


(人は秘密を守るためにパスワードを設定する……だが本当に価値があるのはパスワードの向こう側じゃない……SNS……求人サイト……企業の情報漏洩……古いブログ……会員登録情報……人間は思った以上に自分の個人情報をばら撒いている……それらを一つ一つ繋いでいけば……身元なんて簡単に割れる)


 本田は教室の席に座り、革の縦型手帳を机の下で眺める。


 そこには、私服の仏頂面の本田と、満面の笑みでダブルピースをするホスト風の銀髪の男が映っていた。


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