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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編 七月

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108/111

FILE108『欠けてはならない君と愛の花』

【増田シュン】表示がされた途端、一同の視線が増田に集まる。




「これでわかった事がある」処刑が決まった当人は、表情一つ崩さない。「Ⅹは確実に、俺が処刑先で良いと言う言葉を聞いていた。そして」増田は志田をチラッと見た。




「志田せつな。汝を失うのを嫌がっている」増田の語りに、布田が、「なんでやねん。なんでそんな余裕こいていられるん」と手を伸ばして立ち止まり震える。




「ふふッ、はははッ…」悲しげな増田の高笑いが聞こえた。途切れるような語尾の落ち着き方。 抑揚。



「仲間になれたからな」



出海奈も、増田に視線を向けた。



「俺の家は剣術道場だ。どの環境でも強くなければ【個】は認められないのが我が増田家の血筋の習わしだった。」 



「剣術 勉学。そのどちらも譲ってはならぬと言うのが先代・増田智治の教えで、我が血族が引き継いできた考え方だ。だが俺は、剣術・勉学。そのどちらも増田家の中では一番劣っていた」



増田が死を受け入れた顔でそう言っては、「はぁ⁉お前のそれで劣ってんのかよ‼」と鈴木が立ち上がりながら怒鳴って反応する。



「ずっと劣等感感じてたとかここでほざくならそれは俺が否定してやる‼」



鈴木の仲間を想う魂の叫びに、布田の言葉も交わった。




「せや‼それが死んでいい理由にはならん‼」布田も増田の首の襟を掴み、「立てや増田ァ…」と涙を堪えるように言った。本田は頬杖をつきながら窓を眺めるが、所詮、盛大に泣きたいのを誤魔化しているのと、同じだ。



笹井は諦めの表情で俯く。増田やクラスに言葉をかける…でも、無かった。増田は続ける。




「遺言。聞いてくれ」増田が切り出した後、「Ⅹと繋がっている人間。または俺たちが話したやつがⅩ本体じゃない場合のⅩ本体は必ず俺の話を聞いていた。で、なければこの短期間で俺を処刑先にはできない。そしてⅩは志田。汝を処刑する気はない。なぜなら志田、汝自身が言った自分が処刑されれ負債も無くなる。はⅩにとってもかなり合理的だからだ」と自身の考察を語る。




教室中が増田の遺言を真剣に聞いている。



佐田なんてタブレットにメモすら残している。



機転が効くようになっている。


志田が「なんで私を残すのよ‼」と座り込んで蹲ったままに声を荒らげる。



「なんで⁉」志田の絶叫に、目を逸らすクラスメイトたち。



茅野が、「投票は終わりました。この場はお開きにしましょう」と静かに出海奈に言う。出海奈は、「明日は終業式だ。次はこのまま学園裁判にかける人間をお前らで選ぶ必要がある」とこの空気の中で冷酷に伝え、教室を後にした。



暗い。暗い。暗い。



真っ先に本田がスクールバッグを取って教室を後にしようとするが、榎本に止められる。



「ちょっと」榎本は本田を見つめる。


「…なんでそうやって一丁前に泣いてるの。一人でこの後男泣きでもするつもり」


本田は立ち止まって、「え」と呟く。笹井が、「本田くんちょっと借りるわよ」と榎本に伝え、廊下の奥で本田と二人きりになる。


「…どうやったら増田を守れると思う」本田の生気の無い声が、廊下にポツリ、と小さく落ちた。




「…ここからの打開なんて無理」笹井がはっきりと答える。




「…やだな…明日もまた人が死ぬんだぞ、なんで笹井は平然としていられるんだよ」



弱弱しい本田の姿。



「ねえ」「引っ込むべきはあなたじゃないの」



「私は責任者。こうなってしまった以上、増田くんは小なる犠牲と処理するわ。彼を救うなんて友情物語じみたものをあなたが描いているならもうあなたはクラスの役立たずよ。二学期にはⅩの以前の要望通りに茅野さんを《Ⅹ》に」と言いかけるが、本田にドンッ、と突き飛ばされる。



「キャッ…」後ろに倒れ、尻もちを突く笹井。



本田はそんな笹井を見下ろす。怒っている顔…?いや、口角は緩んでいる…。




「……はは…」無機質な笑み、「役立たずだって…?この俺が」冷たい声色。


「ロクに選別もできない男だって思われていたのか俺は」


心底呆れたような視線。



笹井はその視線を見上げながら目を逸らす。


本田は自分の中で、また一段階、何かが壊れたような音がした。



「…ほ…んだくん?」



見上げられる。だが、彼女を置いて静かに教室に入った本田は、自分の席に座る。 


膝の上で、グッと拳を握った。



クラスメイトたちが増田に駆け寄っている。



増田を抱きしめている。泣いている。



だがその中に本田は入れない。



星野と志田さえ、増田の前でぎゃあぎゃあ泣いていると言うのに。



この空気でまた選ばなければならない。



学園裁判もある。



誰かを。また誰かを またⅩとして また切り捨てなければならない。



笹井は増田に駆け寄っていく生徒たちの輪に入り込み、「ごめんなさい…」と小さく呟いた。




「私がもっと何かを出来ていれば」



「十九時までまだ時間はあるでしょ」



普段は明らかに関わりを避けている朝日が、笹井を責めたりはしなかった。




朝日は笹井の手に、自分の手を重ねる。


「ねえ、笹井さん、十九時…一緒に」と言いかけるが、朝日の背後から本田が肩を掴み、「ダメだ」「Ⅹに任せろ」と暗い表情で制止した。



「危険すぎる。俺たちが何か行動をするのは」



本田の言葉に、朝日は「このままクラスメイトを見殺しに」と言い返そうとするが、あまりにも本田の目がガチなものだった為、「…笹井さん」と笹井の顔色を伺う。



「そうね。下手に学園や上層部を刺激するべきじゃないわ」と判断した。



「Ⅹに協力を仰ぐって言うの?でもあいつ島外にいる部外者でしょ」と志田が不安げな顔で言う。



「でも駒は確実にこの学園内に存在する。利用しましょう。だから――――」 




「十九時。私たちは分散して全員部屋に誰かがいる状況にするわよ」笹井の提案に、「増田の部屋に外から鍵かけようや‼」と布田が言っては、「それは名案だな‼」と佐田も頷く。



鈴木の部屋に、増田、布田が集まる事になった。


本田は佐田と飛鳥の二人をその時間部屋に招くと笹井に伝える。



盛田、志田、星野、笹井が同じ部屋。



朝日、福川、茅野、榎本が同じ部屋になった。



布田は制服の両ポケットに手を入れながら、教室を見渡す。 



「増田は――――俺たちで守ったる‼」




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