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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編 七月

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107/111

FILE107『生け贄と支配者』

パソコンでネットショップを動かす運営組の増田・布田・鈴木。


開発組の佐田・飛鳥、星野が黙々とキーボードを打って個人情報を表ソフトに打ち込んで行く。




これが後に名簿となる。



どんどん少額で引き落としされていくユーザーのカード残高。




カタカタカタカタ…。キーボードを打つ技術が上達している佐田。



御前崎の図書店で購入したのか、【PCの極意、サルでもわかるAIとサイト生成 超簡単版】と書かれた書籍が置いてあった。



星野は、「現実的じゃない。稼げない。そもそもパソコンなんて得意じゃない、」とブツブツ文句ばかりを繰り返すように呟く。



ダークサイドだ。もうマイナスオーラを感じる。



だが飛鳥が、星野の肩を優しくポン、と触った。



「まだ時間はある。探そう。打開策を」飛鳥の声に、他の生徒たちも「大丈夫だ星野」「探せば…探せばまだ」と励まし合いながら、教室でパソコンを触り続ける。



七月五日…七月十日…ゆっくり、ゆっくりと、呪いに体力を削られていくように時間が過ぎていった──────。



終業式、前日。一組の生徒たちの顔は、死んでいた。出海奈はタブレットを持ちながら、「…今月の収益を発表する」と声を出した。



祈るようなポーズをする盛田。


机を顔に伏せ啜り泣く飛鳥と、その背中を摩る星野。



全員、頑張った。個人ですら、夜に生徒寮に集まって全員で詐欺をやってみたりもした。


模索しながら。「大丈夫や、一千万は―――」と鈴木を宥めようとしている布田。




だが、出海奈は伝える。それは処刑宣告だった。



しかももう。終業式前日。Ⅹの件での学園裁判も終業式の放課後、目標不到達の処刑の投票も迫っている。


笹井は隣の本田を見る。両手で頭を抱え精神的に完全に参っていた。



珍しい。ここまで本田が露骨な反応を見せるのは、笹井のイメージには無かった。



「ちょっとあな…」笹井が本田に声をかけるが、「くッ…」と涙を堪えているような雰囲気だったので、伸ばしかけた手を止める。




「二百五十万」出海奈の収益の通告に、「いやッ…」と志田が片手で口を押え目に涙を溜めた。




「私が…私の借金のせい…」


涙。完全に志田が泣いた。五月とは違うニュアンス。



「よって。目標未達につき処刑投票を行う。スマートフォンに投票ページのリンクを転送する」




出海奈の声に、布田が「辞めようや‼良くない‼処刑なんてアカン、誰一人欠けちゃならんクラスメイトや―――――――‼」と必死に首を横に振りながら出海奈がいる教卓の前に走り、出海奈を一発殴ろうとするが、鈴木に、「馬鹿野郎‼」と取り押さえられる。



パニック。号泣。硬直。生徒たちの反応は様々。



目を見開き俯く盛田と、絶対に処刑対象にならない為何処か余裕を見せる茅野。




茅野は立ち上がる。




「先生‼理事長、会長と交渉できませんか‼未達の処刑を無くす、そのためなら他にどんな手段も受けると‼」




バッと片手を広げる仕草を取りながら説得するが、出海奈は、きっぱりとした態度を貫く。




「認められない」 



その答えが静寂を纏いながら生徒たちの脳裏を刺す。




「ッ…」志田が立ち上がり反論しようとしたが力なく座り込んで泣き叫んだ。



「いや゛ァァ゛ァ゛ァァ゛ァァァァ゛ァァ゛ァ‼」



生々しい絶叫。志田のギャル特有のおしゃれなネイルチップの輝きも冷たく感じられる。




飛鳥が「俺は選びません‼」と机の音を鳴らしながら立ち上がり叫ぶ。



「全員で選ばなければいいんだよ‼なあ、辞め――――」とクラスメイトたちに訴えるが、出海奈はそこも塞ぐ。




「その場合。ランダムに投票が入る 無効票は認められない」




《 うああ゛ああ゛あああ゛あああ゛あ‼》



どこもかしこも逃げ道を塞がれた生徒たちの号泣が、怒号がサイレンのように響く。




朝日が「助けてよクラス委員、クラス委員なんでしょ⁉この後どうやって対策すればいいか教えなさいよ‼」と笹井と本田がいる席を指差しながら救いを求めた。



《助けて‼助けて‼助けて‼》


過去のトラウマの子供たちの声が、また本田の脳裏で駆け巡り出す。



「ッ…、ッ…」だが、本田の学生証アプリが入ったスマホにも、投票用紙は届いてしまう。



前髪で顔を隠しながら、震えた手でスマホを取る本田。全員で投票だ。笹井も、茅野も、盛田も皆、暗い目でスマホを持っていた。




教室の号哭も収まり、それでもルールを確認する本田。




【全員で投票】




【無効票はランダム】



【過半数一人が処刑される】



【同率。決選投票】


【処刑者の死亡時刻は本日十九時。処刑者の部屋での待機を禁止とする】




本田の目は重たかった。Ⅹとして、選ばなければならない事もわかっていた。



このタイミングで、《ブーッ、ブーッ、ブーッ》と全員宛てに《Ⅹ》からメッセージが来る。



一斉にメッセージを見る生徒たち。出海奈が、「Ⅹか」と顔を上げる。


本田が別端末から昨夜予約を入れたメッセージだ。


投票時間は知っていた。



稼げないことも悟っていた。



せめて全員に手を汚させない為の、選ばせない為のメールだ。



投票先の指示が書いてあった。鈴木がフッと笑う。「せめてもの情けか」出海奈が、「内容はなんだ」と問いかけるが、生徒たちは黙り、投票のサイトに入っていく。




盛田がメールを静かに目で追う。




Ⅹからのメールの注釈には《 投票先は私が独断で決めます 生徒の皆さんは従って投票を入れてください 処刑先該当者の方のみ、投票先の指示を偽造したものを送っています 投票先については担任には結果発表まで黙っていてください あなたたちは手を汚す必要はありません 》とメッセージが添えられていた。




一組全生徒の顔写真が、高速でモニターにスクロール表示される。



腕を組み、結果を確認する出海奈。



全員からの投票で、処刑先が決まった。



【増田シュン】



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