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第16話 冬道契約入札の宿帳台
王都街道局の大広間には、冬道契約入札のための長机が並んでいた。
私は久しぶりの迎賓館の匂いを胸いっぱい吸い込まず、そのまま証拠箱を宿帳台へ置く。台の前には局長、副局長ハルトマン、オスカー、リディア、そして契約先の商会主たちがいる。
「離任中の記録官が何の用だ」
ハルトマンが苛立った声を上げた。
「冬道契約に必要な、本来の宿帳を持ってきました」
私は写しではなく現物を広げた。迎賓館の欠けた宿帳の頁番号、ノイパスで見つかった頁片、裏路線帳の便名、南斜道の轍記録、再開市後の正規宿帳。ばらばらに見えるものを、私は日付順に並べていく。
「迎賓館で消えた救恤便は、ここで夜便七番へ振り替えられています。そしてこの便は、閉鎖された南斜道を使い、ノイパスで荷を入れ替えて王都へ戻っている」
ざわめきが広間に走った。
「証拠は?」
「宿帳です」
私は静かに答える。
「そして、あなた方が読まなかった細部です」
食糧券の通し番号、飼葉の受領印、車輪泥の産地、封蝋の混色。数字と記号を重ねるほど、誤魔化しの余地は消えていく。
最後に、私はリディアの見舞い状を机へ置いた。
「この封蝋も、同じ銀松印です」
オスカーの顔から色が引き、リディアの笑顔が初めて揺らいだ。
宿帳台の上で、王都がようやく静かになった。




