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レジェンドオブシルヴェリア――Ⅳ伝説記~そして農夫の息子は伝説となった  作者: 永礼経


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第2章 ケラール丘陵(3)

3

  丘の上から向こうを見渡すと、そこには「草原」が広がっていたのだ。


 アーレシアの砂漠を探索するのは何度目かになるが、こんなに草木が茂っているのは初めて見た。


 確かに、緑の多いシルヴェリアとは比べるべくもない「砂漠」であることに変わりはないのだが、その地面に張り付くような緑がところどころに見受けられ、蛇行しながら少し先まで続いている。

 そしてその緑の中に、桃色が混じっているのも確認できた。


「花だよ! あれ!」

クアンが叫ぶ。


 まさしく「花」に違いない。しかし、砂漠に花なんて、咲くのだろうか?

 とにかく初めて見る砂漠に敷かれた緑の絨毯の景色にただ目を見張った。

 

 アルはこんなこともあるのかという風に思ったが、まあ、砂漠とはいえ雨が全く降らないわけではないだろうし、実際オアシスもところどころに見受けられる。

 言われてみれば、おかしくはないのかもしれないが、さすがに驚きを隠せない。


「ん? この香り……」


 ふわりと風が揺らいだ瞬間にアルの鼻腔をくすぐった柔らかく甘い香りにすこし違和感を覚える。

 その香りの根源は前方に広がる草原のようだとすぐに気が付いた。


「ゲンシン、ちょっと頼みがあるんだけど。あの花を少し摘んできてほしいんだ」

「花をか? 嬢ちゃんにプレゼントでもするつもりか?」

アルの依頼にゲンシンはニコリともせずに返す。


「何言ってるんだよ? そんな訳ないだろう? ちょっとあの花の匂いが気になったんだ。なんだか嫌な予感がする。少し近づくのはやめておこうと思うんだ。すまない」

「なるほど。アレが原因かもしれねぇってんだな。分かった、二つ三つ摘んできてやるよ」


 そういうとゲンシンは丘を駆け下ってその草原へと向かって行った。


 アルは丘の上から周囲を見渡すと、他に気になるものがないかと探してみるが、他には特に気を引くものは無い。やはり、あの草原、いや、そこに咲く花が気になる。


 丘の麓にいたときよりも魔素の高揚感がやや増している。アルもケイティもアリアーデの厳しい訓練を受けて来たり、これまでの戦闘経験などから、魔素のコントロールに関してはかなり習熟してきているが、これは、経験の浅い魔感士や魔法士たちにしてみればなかなかにきつい状態かもしれない。


(おそらくあの子もこの感覚に違和感を覚えたのだろう――)


 しばらくしてゲンシンがその手に二つ三つの花を持って帰ってきた。


「ほらよ、これでいいか?」


「うん……。やっぱりこの花が原因のようだね。この数だけでもそれとわかるぐらいに魔素が乱される感覚がする。取り敢えずこの花を少し持って帰るとしよう。師匠やゼーデさんに意見を聞きたい」


「OK、じゃあ、これに入れておいてやるよ」


 そう言ってゲンシンは腰のポーチから小瓶を取り出した。


「そもそもはポーション用の小瓶だが、まあ、裸でもっているよりは影響が少ないかもしれない」

そう言いながらその瓶の中に花弁を三つ入れて栓をする。

「どうだ?」

ゲンシンがアルに問う。

 

 アルはさっきほどの違和感を覚えなくなっていた。


「お? へぇ、これはなかなかに便利だね。違和感が無くなったよ。へぇ、ガラスにはこういう効果もあるんだね」

「まあな。ポーションを入れておいてある程度保管できるんだから、密閉性と遮断性はかなり高いと言えるだろうな」


「なるほど、それもそうか」

「アルよぉ、お前も少しは技術と言うものに目を向けろ。ただの戦闘馬鹿ではあいつらには勝てんぞ?」


 言われてみれば確かにそうだ。

 2年ほど前までは農夫だったこともあり、農作業についての知識は無くはないのだが、それも父に言われるがままにこなして頂けという感がある。しっかりとした知識として習得しているとは言い難いかもしれない。


 精霊族の「カラクリ」という技術に至っては、どういう原理でそうなるのか未だによくわかっていないのだ。


「確かに、そうだね。僕もいい加減、魔法や戦技と同時に、世界各地の技術や風土などにも目を向けないとだめだよね」

「知っていると知らないとでは大きな違いがあるからな」

アルの反省にゲンシンが諭すように返した。


 結局一同の探索はここまでとなった。

 おそらく、あの魔感士の具合が悪くなったのはこの花の影響だろう。案内の冒険者に聞いてみるが、確かにこのアーレシアの砂漠でところどころ花が咲いている場所があるという。それらがすべてその花なのかどうかは再度調査が必要だろうが、ほかにも咲いている場所があっても何ら不思議ではない。

 その花の近くによればすぐに魔素が昂るという効果にさらされる可能性もあるが、魔感士や魔法士たちもそれなりに魔素を制御する術を持っている。よほど無警戒でもない限り、命を落とすなどということはないかもしれない。

 しかし、かなり消耗することを余儀なくされるため、冒険から帰還して気が抜ける頃にどっと疲れが押し寄せて、急変する可能性があることは否めなさそうだ。


 いずれにしても、この花が体調不良の原因とみて間違いなさそうであるなら、この花の生息地の調査と魔感士・魔法士たちへの注意喚起を促した方がいいだろう。



 一行は今日はここで一晩過ごすことにして、明朝アレシアンへ引き返すことにした。



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