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レジェンドオブシルヴェリア――Ⅳ伝説記~そして農夫の息子は伝説となった  作者: 永礼経


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終章 そして伝説はつづく(1)

1

 突っ伏した黒騎士の身体が黒いもやに包まれる。

 その黒い靄はどんどんとあふれ出し、やがて天空を覆わんばかりに拡散していった。


 この戦場にいる者たちすべてを覆い包み、あたりが混沌の闇に沈みかけた時だった。


 天空より地上の黒騎士の身体に向け一筋の光が降り注ぐと、その光がどんどんと広がって、やがてその靄をすべて打ち払った。


 そしてその中心、黒騎士の身体のはるか上空から一つの『宝珠』が舞い降りてくる。



 その宝珠はやがて黒騎士の身体に舞い降りると、ふわりとその直上で静止した。



「あれは、『世界の柱』――」


 この地に数いる人類の中で、一人の少女がそう呟いた。



 その瞬間、

 『世界の柱』はまた、上空高くへと舞い上がり、やがて視界から消え去った。


 そして、辺りには静寂が舞い降りた。


「やったの?」

「やった……のか?」

 小柄な少女二人がつぶやいた。


「――いや、このおっさんは、死んじゃいないよ……」

 少年が応じた。そして、そのあとに短く続けた。

「――でも、戦闘は終わりだね。さすがにもう何もできないみたいだ」


「ケイティ、さっきのあれは――」

と、リーダーの青年が少女に問う。

「たぶん、エリシアさま――でしょう」

と、少女が答えた。


「――アル、私たちの勝ちです。先ほどの光で、この場にいる魔族たちは消滅してしまいました。残っているのは、負傷した黒騎士と、その亡骸なきがらだけです――」

と、続けて少女、ケイティが言った。


「――そうか……、取り敢えずは「終わった」んだね」

と、アルが応える。


 

 階下から上がって来た男が聞き馴染みのある声で、問いかけてきた。ルシアスだ。

「アル! なんだったんださっきの光は? 魔族どもは全て消え去ったみたいだが――」


「おそらくは、()()()()()()です。状況はまだよくわかりませんが、どうやらこの戦場は「終わった」ようです」

と、アルが答えた。


 ここにいるすべての者が今の状況をよく把握できていない。

 それはアルもケイティもその周りの仲間たちもそうだろう。


 上空から二つの翼の羽ばたき音が聞こえてきた。

 塔の上に集結したものたちが上空を見上げると、その羽ばたき音が二頭の竜から発せられたものだと気づく。


 アリアーデとゼーデに違いない。


 やがて二頭の竜は塔の直上にまで進んで、ふわりと舞い降りると同時に男女の姿に変化した。


「終わった――のね?」

と、アリアーデが聞いた。

「周囲にあった魔族の気配が完全に消えている。それに――」

と、ゼーデが言った。


「ええ。『次元門ゲート』も完全に消失してしまいました――。どうやら終わりのようです」

と、アルが答えた。


「そうか、じゃあ、やることは一つだ。アル、勝鬨かちどきだ――」

と、ゼーデが言った。



 いまだエリシアからは何も反応がない。

 さっきの現象、『世界の柱』の飛来がエリシアの仕業であるなら、すぐに交信することは難しい状況にあるのかもしれないが、今それを確かめるすべは何もない。


 だが、この戦場にはすでに敵は存在していない。

 

 そうだ、「終わった」のだ。僕たちは、勝ったのだ――。


「アル!」

「ギルマス!」

と、レイノルドとジークが叫ぶ。


「アル――!」

「あんちゃん!」

「アルバートさん!」

と、チュリとクアンとユーフェリアも視線を投げかけてくる。


「よくやった――」

「うむ」

「さあ――アル」

と、ルシアスとゼーデとアリアーデも促した。


「アル、勝鬨を――」

と、最後にケイティが優しく言った。


「――ああ、そうだ、そうだね。勝ったんだね――」

とアルが呟く。


 周囲の者たちの目に、勝利を確信した確かな光が宿る。



「僕たちの勝ちだァ――! 皆の者ォ! 勝鬨を上げよ!! おおおお―――!」


 そう言うとアルは利き手に持ったショートソードを高く掲げた。


 それを合図に塔を中心に唱和の波が広がっていった。

 やがてそれは大地を揺るがすほどの大音声となり、一つの戦闘の終焉を告げたのだった。



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