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レジェンドオブシルヴェリア――Ⅳ伝説記~そして農夫の息子は伝説となった  作者: 永礼経


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第9章 それぞれの果実(4)

4

「あ~、楽しかったぁ! 私こんなに声出したのは久しぶりかもしれない!」

と、ケイティが目をキラキラと輝かせて言った。


「ごめんね、変なことに巻き込んじゃって。でも、あの小さいのがカラクリだなんて、あんなもの作ってどうするつもりなんだ、あの人たちは?」

とアルは顔をしかめる。


 二人は工房をあとに、ギルド宿舎への帰路についていた。

 もうすっかり日は暮れて家々には明かりが灯り始めている。


「あ~、アルは彼らの本当の目的がわからなかったのね?」

「え? どういうこと?」


「私はあの小さなカラクリに無限の可能性を感じたわよ?」


 ケイティの話はこうだ。

 砂漠の国アーレシアのムンバサウロはカラクリで出来たモンスターだった。もちろん、今の工房の力ではあんなものは作り出せないことは百も承知だ。

 しかし、あのムンバサウロも基本的な動力源は魔力で、魔素変換機を利用していることについては今日のあの小さな『馬車かご』と同じなのだ。


 つまり、ここで重要なのは、「独立した動力を使って自走している」という事実である。

 これまでの人類の技術であるならば、『自走する馬車かご』などというものは作り出せていない。馬や牛に引かせている馬車とはそこが大きく違うのだ。


 それにあの大きさ、いや、()()()だ。


 あれだけ小さなものに、魔素変換機とそのエネルギーを動力、もっと詳しく言えば、車輪を回す力に変えているその仕組みが内包されているということだ。

 おそらくその部品の一つ一つの大きさはかなり小さいものであるだろう。

 さすれば、そのような小さい部品を精巧に作成するための技術が必要になる。


「――つまり、工房の職人さんたちの技術や、想像力、そして何よりも探求心がすごく高いことを示しているってことになるわよね?」

と、ケイティが締めくくった。


 たしかにケイティの言うとおりだ。

 アルは、あの人たちがあまりにも無邪気に笑っているのを見て、まるで道楽でやっているかのような錯覚に見舞われて、本質を見失っていたのかもしれない。


「――やっぱり、君はすごいや。今日はついて来てくれてありがとう。おかげで見落とさずに済んだようだ」

と、アルが返すと、

「アルは、すこし肩に力が入りすぎているように見えるよ? 最近のアルは少し頑張りすぎているのかもね? 今日の工房の人たち、みんな楽しそうだった。ダジムさんもメイファさんも工房のみんなも全員笑ってた。あ! そうか、そうだったんだ! さすが、ダジムさんとメイファさんだ――」

と、ケイティが何かに気が付いたように声を上げた。


「え? なに? まだ何かあるの?」

と、アルがケイティの顔を覗き込む。


「――お二人とも、本当にお優しい方なんだなって。私、アルがうらやましいな。本当にいい家族だなって今改めて思ったよ?」

「どういうことさ?」

「今日のアル、笑ってたよ?」

「え?」


「たぶん、本当の目的は()()()だったのかもしれないね?」

「つまり、僕を楽しませようと――?」


 アルも思い返してみた。

 確かに僕は笑っていた。


 初めはなんて馬鹿げたものを作ってるんだと怒りすら覚えたが、みんなの勢いに呑まれていつしか一緒になって「熱く」なっていた。

 隣にいるケイティもさっき、久しぶりに大きな声を出したと言って笑っていた。

 

 言われるまで気づかなかったが、おそらく自分も同じだろう。


――お前、今、楽しいか?


 レイノルドにもそう言われた。

 

 どうやら僕の周りの仲間たちは僕以上に僕のことを知っているのかもしれない。


「ケイティ……。このあと、なんだけど、一緒に夕食でも……どう、かな?」

「え?」

「あ、いや、用事があるなら無理にとは――」


「行きます!」

「え? いいの?」

「だって、アルから誘ってくれるなんて本当にどれほどぶりかしら? 今日行っておかないと次はいつになるか分かったもんじゃないですから」

「そんなに?」

「そんなに、です」


 ケイティの眼差しが刺さるように僕の瞳を見つめる。その視線が少しきつく、痛みすら覚える。

 僕は慌てて取り繕うように視線を逸らしながら言葉を継いだ。


「そんなに誘ってなかったのかぁ。そうか、そうだよなぁ。確かにここのところ少し気を引き締めないととばかり考えていたように思う」

「――で? どこに連れてってくれるんですか、()()()()()()


「――それでは最近見つけた()()()()()お気に入りのお店にご案内いたしましょう。()()()()()()()

「まあ、アルったら、かしこまっちゃって」


 と言って、ケイティはさらさらと笑った。

 その横顔を見て、僕は今日のことを思い返していた。

 父母ふたりには今度ちゃんとお礼を言っておこう。そして、今度は笑顔で実家に帰ろう。


 たぶんそれが何よりの土産になるだろうから。


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